運動、入浴、食事などで血圧が上昇するのはなぜ?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は血圧変動に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

運動、入浴、食事などで血圧が上昇するのはなぜ?

 

循環血液量が増加したり(運動、食事)、血管の収縮(入浴)によって血圧が上昇するからです。

 

〈目次〉

 

運動が血圧に影響するのは

運動をすることで筋肉の活動が活発になるため、多くの血液を必要とします。そのため循環血液量が増え、最大血圧は上昇し、末梢の血管が拡張して最小血圧は低下します。これは激しい運動した場合で、軽い筋肉運動は血圧にはあまり影響を与えませんが、日ごろの運動量や循環系の異常の有無によって、著しい個人差がみられます。

 

食事が血圧に影響するのは

同様に、食事をすると代謝亢進(消化・吸収)により心拍出量が増します。また、循環血液量も増加するため最大血圧は上昇し、腸管の血管が拡張して最小血圧は低下します。したがって、血圧は食事の量や内容によっても影響されます。食後1時間程度でもとに戻ります。

 

入浴が血圧に影響するのは

入浴時のお湯の温度がやや高いと(逆に冷たいシャワーでも同じですが)その温度の刺激によって、反射的に皮膚の血管が収縮します。そのため、血圧は一時的に上昇しますが、入浴によって血液の循環がよくなると、血管が拡張してきて血圧は下がってきます。

 

そのほかで血圧に影響するものは

上記の3つのほかに血圧の生理的な変動因子は、飲酒、喫煙、排便、膀胱充満などもあげられます。これらの影響をできるだけ受けないようにするために、食後1時間以上、運動および入浴後30分以上経過してから血圧を測定することが望ましいと思います。

 

血圧変動の要因

血圧は常に変動しており、以下の要因に影響されます。

 

  • 年齢:高齢になるほど血圧が上がります。動脈硬化が要因となります。
  • 性別:男性の血圧は、女性よりも5~10mmHg高いです。
  • 気温:寒冷時では血管が収縮して血圧が上がります。温暖時では血管が拡張して血圧が下がります。
  • 塩分:個人差はありますが、過剰な摂取は血圧上昇につながり、動脈硬化を促進します。
  • 精神状態:緊張や感情の高ぶりなどによって血圧は上がります。
  • ストレスストレスの自律神経に対する影響で血圧が変動します。
  • 喫煙:喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させます。
  • 飲酒:アルコールは適度であれば、血管を拡張させ血圧が下がります。
  • 日内変動:血圧は1日のなかで日内変動があり、起床前~起床後に血圧が上がり、夕方から夜にかけて血圧が下がります。さらに睡眠中の血圧が最も低くなります。これらは自律神経の影響によると思われます。

 

血圧から予測される症状

血圧が上昇していると予測される症状

頭痛動悸、激痛、嘔吐があるなどの自覚症状を伴う場合は、血圧値が上昇している可能性があります。つまり、患者の訴えや症状から血圧の変化を予測することができます。疾患によっては、高血圧になるとさらなる合併症のリスクが高くなる場合もあるため、アセスメントをしていきましょう(表1参照)。

 

表1成人における血圧値の分類

成人における血圧値の分類

 

また、降圧剤の投与をした場合は、血圧が下がりすぎないかなどを継続的に測定し、評価していく必要があります。血圧値の異常の有無は、1回の測定で判断しないで再検しましょう。そして諸症状に合わせてタイムリーに血圧を測り、状態を判断していくことが大切です。

 

血圧が低下していると予測される症状

顔面蒼白や冷感、皮膚湿潤、気分不快、悪心などの自覚・他覚症状を伴う場合は、血圧が低下している可能性があります。そのままにしておくと、ショックにつながるリスクが高いため、すぐに安全な体位(臥位)を確保し頭部への血流確保のため下肢を挙上します。そして速やかに医師に報告しましょう。血圧低下となっている原因への対応が早急に必要となります。昇圧剤を使用する際には、血圧が上昇しすぎない適正値になるような薬物コントロールをし、継続的な血圧値のモニタリングと評価が必要となります。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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