運動、食事、入浴、精神感動などにより、 脈拍数が違うのはなぜ?
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『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は運動などによる脈拍数の変化に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
〈目次〉
心臓の拍動は
左心室が収縮すると、圧力の波が動脈壁を伝わり、脈拍となって動脈で触知されます。通常、脈拍数と心拍数は同じです。
この心筋の収縮による拍動は、交感神経および副交感神経からなる自律神経の刺激によって規制されています。交感神経の興奮は、心筋および心臓の拍動リズムを調節する刺激伝導系に作用します。
その結果、心臓の拍動数を増加させ、心筋の収縮力が増大し1回の心拍出量も増加します。一方、副交感神経の興奮は心拍数を抑制する方向に働きます。
脈拍数が増加するのは
交感神経の興奮は、運動、精神的興奮などで増加され、心臓の拍動数、つまり脈拍数も増加しますが、食事、入浴などでも同様に脈拍数の増加をきたします。ただし、入浴では湯の温度が高ければそれだけ、脈拍数の増加がみられます。
脈拍は通常、周期的に一定のリズムで規則的に打っています。不規則に打つ脈拍はすべて不整脈とよびます。
そのほか、体温の上昇時や甲状腺機能亢進時、貧血、心筋炎などでも脈拍数の増加がみられます。これは頻脈とよばれる状態(成人で脈拍数100回/分以上)で、これらは刺激伝導系のなかでも洞結節の興奮性亢進によるものが多く、洞性頻脈とよばれています。
脈拍数が減少するのは
逆に脈拍数の減少をきたす場合があり、これを徐脈(成人で脈拍数60回/分以下)とよんでいます。これは、たとえば運動選手で訓練を積むと、1回の心拍出量が増加するために、心臓の拍動数が減少します。その結果、1分間の送血量を正常量に維持するために、脈拍の減少がみられます。
いわゆるスポーツ心とよばれる状態であり、心臓の肥大を認めます。ほかに脳圧亢進、黄疸、ジギタリスや降圧剤の一部などの服用時、甲状腺機能低下症でも徐脈がみられます。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版