消化管ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、消化管ホルモンについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
消化管ホルモンの種類
消化管ホルモンには、ガストリン gastrin、セクレチンおよびコレシストキニン-パンクレオザイミン cholecystokinin-pancreozymin (CCK-PZ)の三大消化管ホルモンのほかにVIP vasoactiveintestinal polypeptide、GIP gastric inhibitory polypeptideおよびモチリン motilin がある。消化管ホルモンは、すべてペプチドホルモンである。
gastrはギリシャ語で胃の意味、 in は促進させる物質を表す語尾なので gastrin は胃酸分泌促進ということを示している。ギリシャ語で chol は胆汁、 cyst は細胞、 kin は運動を意味するので、 cholecystokinin は、胆嚢の運動(収縮)を促進させる物質ということになる。ギリシャ語で、 pancreo は膵臓、 zym は酵素を意味するので、 pancreozymin は膵酵素の分泌を促進させる物質ということになる。CCKとPZは、当初異なるホルモンと考えられていたが、33個のアミノ酸の配列が全く同じで同一物質であることが分かった(1966年)。 motilin の mot は、フランス語が語源であるが運動を意味する。
脳腸ホルモン
CCK-PZ、VIP、モチリンなどの消化管ホルモン、あるいは膵臓ホルモンの1つソマトスタチンは、脳内でも産生されている。そこでこれらのホルモンを脳腸ホルモン brain-gut hormone とよぶ。同じホルモンでも消化管と脳内では全く異なった働きをする。
例えば、CCK-PZは消化管では胆嚢収縮、膵酵素分泌を促進させるが、33個のアミノ酸からなるCCK-PZのC末端側8個のアミノ酸(CCK-8)は、脳内では海馬 hippocampus に多く存在し、記憶に関係することが知られている。なお、C末端側の5個のアミノ酸はガストリンとも同じ配列である。CCK-8に2個のアミノ酸が付加したセルレイン caerulein (カエルの一種 Hyla cerulea の皮膚から分泌される)は、CCK-8よりも強力な記憶賦活効果がある。(伊藤眞次:脳のホルモン.朝倉書店、1989)
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版