消化管ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、消化管ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
1. 三大消化管ホルモンは、ガストリン、セクレチンおよびCCK-PZである。2. ガストリンは、胃酸分泌を促進させる。
3. セクレチンは、膵液分泌を促進させ、胃酸分泌を抑制する。
4. CCK-PZは、胆嚢収縮の亢進、膵酵素分泌の促進を起こし、胃酸分泌を抑制する。
消化管ホルモンの種類
消化管ホルモンには、ガストリン(gastrin)、セクレチンおよびコレシストキニン - パンクレオザイミン (cholecystokinin - pancreozymin、CCK-PZ)の三大消化管ホルモンのほかにVIP(vasoactive intestinal polypeptide)、GIP(gastric inhibitory polypeptide)およびモチリン(motilin)がある(表1、図1)。消化管ホルモンは、すべてペプチドホルモンである。
表1消化管ホルモン
図1三大消化管ホルモンの相互作用
gastr はギリシャ語で胃の意味、inは促進させる物質を表す語尾なのでgastrinは胃酸分泌促進ということを示している。
ギリシャ語でcholは胆汁、cystは細胞、kinは運動を意味するので、cholecystokininは、胆嚢の運動(収縮)を促進させる物質ということになる。
ギリシャ語で、pancreoは膵臓、zymは酵素を意味するので、pancreozyminは膵酵素の分泌を促進させる物質ということになる。CCKとPZは、当初異なるホルモンと考えられていたが、33個のアミノ酸の配列が全く同じで同一物質であることが分かった(1966年)。motilinのmotは、フランス語が語源であるが運動を意味する。
脳腸ホルモン
CCK-PZ、VIP、モチリンなどの消化管ホルモン、あるいは膵臓ホルモンの1つソマトスタチンは、脳内でも産生されている。そこでこれらのホルモンを脳腸ホルモン(brain-guthormone)とよぶ。同じホルモンでも消化管と脳内では全く異なった働きをする。
例えば、CCK-PZは消化管では胆嚢収縮、膵酵素分泌を促進させるが、33個のアミノ酸からなるCCK-PZのC末端側8個のアミノ酸(CCK-8)は、脳内では海馬(hippocampus)に多く存在し、記憶に関係することが知られている。なお、C末端側の5個のアミノ酸はガストリンとも同じ配列である。CCK-8に2個のアミノ酸が付加したセルレイン(caerulein、カエルの一種 Hylacerulea の皮膚から分泌される)は、CCK-8よりも強力な記憶賦活効果がある。(伊藤眞次:脳のホルモン.朝倉書店、1989)
※編集部注※
当記事は、2017年3月10日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版