血圧測定法|循環

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

血圧

 

今回は、血圧測定法について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. 血圧は部位によって異なり、最も高いのは左心室の出口である。一般に、血圧は上腕動脈部位で測定される。
  • 2. 血圧は運動、食事、入浴、寒冷曝露、その他さまざまな要因で変動する。
  • 3. 下大静脈と上大静脈とが右心房に入る部位で測定した圧を中心静脈圧、この付近を中心静脈とよんでいる。

 

〈目次〉

 

血圧測定

血圧は部位によって異なる。血圧が最も高いのは左心室の出口で、そこから離れるに従って徐々に低下する。一般に血圧というと上腕動脈圧を指す(通常、上腕動脈圧部位で血圧測定を行う)。

 

血圧計と連結しているマンシェットを上腕に巻き、送気球でマンシェットに空気を送る(図1)。

 

図1血圧測定法(聴診法)

血圧測定法(聴診法)

血圧計につながっているマンシェットを上腕に巻き、送気球で空気を送り(実際の血圧より高い圧まで送る)血管を圧迫する。その後、徐々に空気を抜き圧を下げる。マンシェットの圧が血圧より低くなった瞬間に血液が流れる拍動音(コロトコフ音)が聴こえる。コロトコフ音が聴こえる瞬間の圧を収縮期血圧という。さらに空気を抜くとコロトコフ音が聴こえなくなる。聴こえなくなる瞬間を拡張期血圧という。

 

実際の血圧より高めになるまで空気を送り込んだ後、上腕動脈上に当てた聴診器血液の流れる音を注意深く聴きながら圧を徐々に下げる。するとマンシェットの圧が血圧より低くなった瞬間に血液は流れ始め、その拍動音(コロトコフ音)が聴こえる。この瞬間の圧が収縮期血圧である。

 

さらに空気を抜いていき、拍動音が聴こえなくなる瞬間の圧が拡張期血圧である。マンシェットは心臓と同じ高さにする必要がある。

 

血圧は年齢とともに高くなる傾向がある。これは血管が年齢とともに老化し、弾力性を失うためである。その他、血圧は運動、食事、入浴、寒冷曝露など、さまざまな要因で変動する。運動した場合には収縮期血圧は上昇するが、拡張期血圧は上昇しない。

 

静脈圧

静脈圧は動脈圧よりかなり低く、静脈血は逆流しやすいので、静脈には逆流防止のための弁がある(ただし、すべての静脈に弁があるわけではない。例えば、の静脈には弁が存在しない)。同様の理由でリンパ管にも弁がある。

 

静脈圧は体位によって変動する。立位では身長分の重力に逆らう必要があるが、臥位ではそれほどでもない。この圧の調節は自律神経によって行われる(「自律神経系」参照)。運動すると骨格筋によって静脈が締めつけられ、静脈内の血液が押し出されるので、血液は心臓に戻っていく(筋ポンプ)。

 

中心静脈

下大静脈と上大静脈とが右心房に入る部位にカテーテルを置いて測定した圧を中心静脈圧(central venous pressure:CVP)という。解剖学的には中心静脈という静脈は存在しないが、臨床ではこの付近の静脈を中心静脈とよんでいる。

 

心不全ではポンプ機能が低下するので、送り出せなかった分の血液がその上流の静脈にうっ滞し、脈圧も上昇する。左心不全では肺静脈圧が上昇する。右心不全では中心静脈圧が上昇し、頸静脈が太く浮き出て見える。

 

静脈還流

全身の毛細血管、細静脈を経た血液は2本の大静脈(下大静脈と上大静脈)に集められ、右心房に戻ってくる。これを静脈還流(venous return)という。

 

NursingEye

高血圧治療ガイドライン2019年版(日本高血圧学会)

 

表1高血圧の分類(成人における血圧値の分類)

高血圧の分類(成人における血圧値の分類)

 

※編集部注※

当記事は、2016年8月12日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

内皮細胞の働き

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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