心室頻拍|心室起源の幅広QRS波<2>|不整脈の心電図(11)
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心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、心室頻拍について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
[前回の内容]
〈目次〉
心室頻拍
図1の心電図はいかがでしょうか。
幅が広いQRS波が繰り返し出現しています。RR間隔は8コマですから心拍数は200回/分ほどで、頻拍ですね。幅が広いQRS波は心室起源であり、心室起源の頻拍で心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)です。
この不整脈が致死性不整脈といわれる理由は、①心拍数が速くなりすぎて、心臓の収縮・拡張がついていけないために血液が送り出せなくなります。すると、血圧が下がり、脳にも血液が供給されなくなり、失神(意識消失)してしまいます。
また、②心臓の筋肉にも酸素が供給されなくなるので、さらに心臓が疲れるという悪循環に陥ります。
②、①とも関係しますが、心室細動という、さらに恐ろしい不整脈に移行しやすいのです。
心室頻拍の対応
もしこの波形を見たら、とにかく患者さんの状態を観察し、バイタルサインをチェックです。
意識がない場合は、いわゆる無脈性VTで心肺停止状態ですから、応援・救急カート・除細動器の三種の神器を要請して、ABCD(A.気道確保、B.呼吸の確認・人工呼吸、C.循環のサインの確認・心臓マッサージ、D.除細動)の順に心肺蘇生です。速やかにDを行うために素早くABCしましょう。
もし、意識がしっかりしていれば、落ち着いて以下の処置を行います。
- ①応援・救急カート・除細動器の三種の神器を要請
- ②バイタルサインのチェック:心室頻拍でも心拍数や心機能によっては血圧が保たれていて、場合によっては症状がない場合もあります。
- ③ベッドサイドモニター:ベッドサイドの処置になりますので必須です。
- ④点滴ラインの確保:薬剤投与の必須ルート。太い留置針で、末梢静脈が基本。
- ⑤酸素の投与:呼吸器疾患がなければ、経鼻カニューレで4L回/分。
- ⑥意識があっても心臓が不安定な患者さんはバイタルチェック後、O2・ライン・モニターが必須です(後述する徐脈や頻拍も同様です)。声に出して憶えましょう。
- 「オーツー・ライン・モニター、オーツー・ライン・モニター、オーツー・ライン・モニター……」
- ⑦可能なら標準12誘導心電図を記録。
- ⑧気道確保の準備
このあたりで医師が登場するはずですので、指示をもらいましょう。
基本的には除細動をすると思います。医師がすぐに処置ができるよう、手際よく準備しておきます。もし処置中に意識をなくした場合は、その時点でABCDです。とくに除細動が最優先なので、ABCは素早く行い、Dの除細動を急ぎましょう。
まとめ
- 同じ形を繰り返す幅広QRS波の頻拍は心室頻拍と考えて緊急に対応する
[次回]
- 不整脈の読み方|不整脈の心電図(1)
- 洞性P波から読み解く不整脈|不整脈の心電図(2)
- 異所性P波から読み解く心電図|不整脈の心電図(3)
- P波がみつからない心電図|不整脈の心電図(4)
- PQ間隔が長い、P波の後にQRS波がない心電図|不整脈の心電図(5)
- PQ間隔が短い心電図|不整脈の心電図(6)
- P波とQRS波が別々のリズムの心電図|不整脈の心電図(7)
- 幅広QRS波の心電図|不整脈の心電図(8)
- 上室起源の幅広QRS波|不整脈の心電図(9)
- 心室性期外収縮|心室起源の幅広QRS波<1>|不整脈の心電図(10)
- 心室細動~心室頻拍よりもっと危ない不整脈|不整脈の心電図(13)
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版