血液培養検査(細菌検査)|検体検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、血液培養検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- 血液培養検査とはどんな検査か
- 血液培養検査の目的
- 血液培養検査の実際
- ・細菌検査
- ・採血の手順
- 血液培養検査前後の看護の手順
- 血液培養検査において注意すべきこと
- ・採血前
- ・採血時
- ・採血後
- 血液培養検査に関するQ&A
血液培養検査とはどんな検査か
血液は本来無菌であり、血液中から菌が検出される場合は重篤な細菌感染症が疑われる。
血液から細菌などの微生物が分離される疾患には「敗血症」と「菌血症」があり、敗血症は重篤な全身症状を呈している(全身性炎症反応症候群:SIRS)のに対して、菌血症は全身症状を呈さないものである。
血液培養検査の目的
血液培養を行うことにより、本来無菌である血液中に菌が存在することを証明する。また、検出された菌の薬剤感受性検査を行うことより、正しい抗菌薬を選択することができる。
血液培養検査の実際
細菌検査
①患者血液が入った培養ボトルを血液培養自動機器に装填し、35℃で振盪培養する。
②自動機器が培養陽性のシグナルを示したら、培養ボトルから血液検体を抜き取りサブカルチャーする。
〈サブカルチャーの内容〉
・塗抹検査:グラム染色を行い、菌が認められた場合はすみやかに担当医に連絡する。菌の形態からある程度の菌種を推定できる場合はあわせて報告する。
・培養検査:最初の継代培養は血液寒天培地(好気培養用)、チョコレート寒天培地(炭酸ガス培養用)を基本とし、状況に応じて培地を追加する。
・同定・感受性検査:血液培養から菌が検出された場合は、早急な同定・薬剤感受性検査を実施することが望まれる。大腸菌などの腸内細菌科グラム陰桿菌やブドウ球菌は継代培養後約6~7時間で目視確認可能な大きさまでコロニー(菌の集落)が発育するため、可能であれば陽性当日に同定・感受性検査を実施し、翌日には結果報告する。
採血の手順
1)採血部位の消毒
- ①採血部位を70%アルコール綿で十分に清拭する。
- ②10%ポビドンヨード(イソジン)綿球で刺入部位を中心として円を外側に描くようにして周辺部位まで清拭し、自然乾燥させる(2分以上放置)。尚、ポビドンヨードに過敏な場合はクロルヘキシジンで消毒する(2回行う)。
2)採血器および培養ボトルの準備
- ①培養ボトルの上部キャップをはずし、ゴム栓部分をアルコール綿または10%ポビドンヨードで消毒する。
- ②20mLのディスポーザブルシリンジと21ゲージの注射針を用意する。
3)採血
- ①清拭乾燥した部位から注射針を刺入し、10~20mL 採取する(小児は1~3mL)。
- ②採血後、皮膚から注射針を抜き取り、穿刺部位にアルコール綿を当て止血する。
- ③嫌気用と好気用培養ボトル(嫌気⇒好気の順:嫌気ボトルにエアーを入れない)に血液を等量(基準8~10mL)ずつ注入する。小児用ボトル1本の場合は血液を1~3mL 注入する。
- ④血液が入った培養ボトルを静かに混和させる。
※シリンジ採血後、血液培養ボトルに分注するための安全器材が販売されている。
4)患者の皮膚の処置
- ①採血が終了したら、穿刺部位のヨードチンキをアルコール綿で拭き取る。
- ②採血部位の異常の有無を観察する。
5)2 セット採取
- ①採血液培養は通常2セット採取が推奨されており、基本的には反対側の腕から再採血を行う。
- ②手順は上記1)~ 4)を参照すること。
※ 平成26年度診療報酬が改訂され、2セット血液培養が算定可能となった。
血液培養検査前後の看護の手順
1)患者への説明
- 血液中に細菌が存在するかどうかを確認し、発熱の原因を探す検査である。
2)準備するもの
- ①70%アルコール綿(イソプロパノールまたはエタノール)
- ②1〜2%ヨードチンキ、あるいは、10%ポビドンヨード液
- ③ディスポーザブルシリンジ、注射針
- ④培養用ボトル
3)検査後の管理
- 血液検査と同様に採血後の止血、採血部位の管理を行う。
血液培養検査において注意すべきこと
採血前
- 患者が過去にヨードやアルコールに対して過敏反応を示したことがないか確認する。
- 培養ボトルの使用期限を確認する。
- 採血手技者はスクラブ剤を用いて流水手洗い後、アルコール系擦式消毒剤で消毒し、滅菌手袋を着用する(滅菌手袋がない場合は通常の手袋でも可)。
採血時
- 雑菌混入を防ぐため、無菌操作を行う。
- 清拭後、触れたり触診したりしない。
- 採血終了後に注射針を抜去する際、抜去直前ではなく抜去後に穿刺部位をアルコール綿で圧迫止血を行うようにする。
- 静脈留置カテーテル、動脈留置カテーテルからの血液採取は行わない。
- 複数の検体を採取する場合、それぞれの培養ごとに穿刺部位を替える。
採血後
- 培養ボトルには必ず患者名、採取日時を記入する。
- 検体採取後は速やかに検査室に提出する。やむを得ず保管する場合は35℃または室温で保存する。
血液培養検査に関するQ&A
Q.血液培養の血液はいつ採取するのがよいですか?
A.発熱のごく初期で抗菌薬の投与を開始する前に採取するのが最良ですが、すでに抗菌薬投与中の患者の場合は次回投与の直前に採取します。1回の採取で陽性となる確率は低く、24時間以内に2〜3回行うと菌検出率が高まります。
略語
- BTB:bromthymolblue(ブロムチモール青)
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版