局所酸素飽和度測定
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は「局所酸素飽和度測定」について解説します。
佐藤優衣
市立青梅総合医療センター 看護主任
田代勇気
市立青梅総合医療センター 臨床工学技士
局所酸素飽和度測定の目的
局所酸素飽和度(regional oxygen saturation:rSO2)とは、微小血管(細動脈・細静脈・毛細血管)の酸素飽和度であり、「局所混合血酸素飽和度」もしくは「組織酸素飽和度」ともよばれるものである。
rSO2をモニタリングすることで局所(センサー直下)の灌流状態や代謝といった“酸素の需給バランス”の変化をとらえる。
また、体温に依存して変化する傾向にある。
目次に戻る
局所酸素飽和度測定の対象
ECMO駆動中の患者、大血管手術後の患者、脳外科CEA・CAS後の患者に装着される。
成人では、前額部・下肢・背部が主な貼付部位である(図1)。
図1rSO2センサーの貼付部位
ImpellaとECMO装着時は定常流で拍動がないため、右手指でSpO2が測定できない場合は、耳たぶや前額部にセンサーを貼っても測定できないことがある。
重症心筋梗塞による心停止後などもSpO2が測定できない場合はrSO2が有用となる。
また、rSO2のセンサーを下肢に貼ることで、下肢への血流・酸素供給をトレンドで評価でき下肢虚血の早期発見ができる。
目次に戻る
局所酸素飽和度測定の原理
生体を透過し易い近赤外線を用いて、光が通過した距離と光の減弱した程度から、その間にあるヘモグロビンの濃度が求まる。
この原理を利用しプローベから近赤外線を投射し、頭蓋骨と脳組織を通過(深度3~4cm、これは出光部と入光部間距離による)した光を解析することにより、脳組織の酸素飽和度を求める装置である。
主に、静脈血を反映しているといわれ、さまざまな組織を通過することと散乱の影響で、数値は低くなり、個人差が大きい。
正常値は50~70%程度といわれている。左右差が大きくなると灌流障害を生じている可能性が高く、脳梗塞などの発生が疑われる。
留意点
rSO2の正常値は50~70%であるが、値はその患者によって異なるため、装着患者のベースライン値の変動をみる必要がある。
目次に戻る
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版