介護老人保健施設(老健)は、入居者さんの在宅復帰を支援する施設です。老健で働く看護師の役割や仕事内容、働き方、給料、やりがいについて解説します。

【介護老人保健施設の看護師】仕事内容は?働き方・スケジュールは?給料は?メリット・デメリット

目次

介護老人保健施設(老健)の看護師の仕事内容・役割

介護老人保健施設(老健)での働き方

介護老人保健施設(老健)の看護師の給料

介護老人保健施設(老健)で働くメリット・デメリット

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介護老人保健施設(老健)の看護師の仕事内容・役割

介護老人保健施設(老健)で働く看護師の仕事内容・役割は、主に「入居者さんの健康管理」です。

医療的ケアADL(日常生活動作)の維持・改善に向けたサポートも、老健の看護師の大切な役割となります。

介護老人保健施設(老健)とは

老健は、医療(病院)と在宅(ご自宅・特別養護老人ホーム・有料老人ホームなど)の中間施設という位置づけです。

在宅復帰を目標とし、医療ケアやリハビリテーションに重点が置かれているのが大きな特徴。

医師の常駐が義務付けられ、リハビリスタッフも多く配置されるなど、介護施設の中でも「医療」に近い性格を持ちます。

キャリアアドバイザー

老健は医療法人や社会福祉法人による運営が多いです。病院に併設されている老健もあります。

老健の入居者さんはどんな人?

老健の入居者は「65歳以上で要介護1以上」の方が対象です。

実際に入居されているのは、要介護3以上の方が7割ほどとなっています。

医療と在宅の中間施設という機能から、

  • 病院から退院した後、自宅等に帰るのを目指してリハビリをする方
  • 病院に入院するほどではないものの医療的な管理やケアが必要になり、再び自宅等での自立した生活を目指す方

といった入居者さんが主に想定されています。

老健の入居期間は約1年

在宅復帰が目標である老健の入居期間は、原則として3~6カ月とされています。

3カ月ごとに、在宅復帰が可能かどうかの評価が行われます。

ただし、6カ月を超えたらすぐに退所しなくてはならないわけではありません。

厚生労働省の2013年のデータによると、老健の入居期間は平均で311日でした(特養は1405日)。

「終のすみか」となる特養や有料老人ホームに比べると短期間で入居者が入れ替わるのも老健の特徴です。

老健の看護師の業務は?

老健で働く看護師の具体的な業務内容は、主に次のようなものです。

介護老人保健施設(老健)の看護師
主な業務内容

  • 入居者さんの健康管理業務
    (体調確認、バイタルサインのチェックなど)
  • 医師の指示に基づく医療行為
    (経管栄養、喀痰吸引、点滴、褥瘡の処置、インスリン注射など)
  • 服薬管理・介助
  • 診察の補助
  • 入居・退居前のカンファレンス
  • 看護記録
  • 施設全体の感染対策
  • リハビリテーションの補助
  • 他職種との連携、調整

食事や排泄の介助、清潔ケアなどは介護職スタッフがメインで担当しますが、看護師がサポートに入ることも多くあります。

嚥下機能の低下が心配な入居者さんなどは、リハビリスタッフとの連携も大切です。

多職種がいる老健、看護師は調整役も

医師・リハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)のイラスト

老健の特徴として、医師、リハビリスタッフ(PT:理学療法士、OT:作業療法士、ST:言語聴覚士)が配置されていることが挙げられます。

多職種による医療・リハビリ・介護のサービス提供がスムーズに行われるように、看護師は調整役の業務も行います。

医療機能や看取り機能、より充実の流れ

高齢者に多い肺炎や尿路感染症などは、できるだけ老健の施設内で治療しようという流れが進んでいます。

また、老健でもターミナルケア・看取りを積極的に行っていく施設が増えてきています。

先輩からひとこと

老健の医療機能や看取り機能が充実するのにともなって、老健で働く看護師の存在も大きくなっています。

在宅復帰に違いあり!老健5つのタイプ

近年は、在宅復帰を支援する機能を特に強めた「超強化型」「強化型」「加算型」などと呼ばれるタイプの老健が増えています。

【介護老人保健施設のタイプ】超強化型>強化型>加算型>基本型>その他型の順で在宅復帰を支援する機能が高い。在宅復帰を支援する機能が高い施設ほど、在宅に復帰する入居者さんが多い・ベッドの回転がはやい・要介護4~5の入居者さんが多い・喀痰吸引、経管栄養の実施が多いなどの特徴がある。

「在宅復帰を支援する機能が高い」と認められた老健では、より短い入居期間でご自宅等に帰る要介護度の高い入居者さんの割合が多い喀痰吸引や経管栄養の実施が多いなどの実績が求められます。

また、リハビリの回数が多いこと、「施設や地域の公民館での健康教室」といった地域活動を行っていることなども必要です。

キャリアアドバイザー

入居者さんの状態やケア内容、入退居に伴う業務が多い・少ないなどにかかわるので、転職を検討する際は「どのタイプの老健か」「今後、強化型や加算型への移行を考えているか」も確認しておくと良いでしょう。

特養や有料老人ホーム、病院との違いは?

【老人ホームの比較表】以下。項目:介護付有料老人ホーム:特別養護老人ホーム(特養):介護老人保健施設(老健)。看護師の配置:〇※1:〇:〇(夜勤あり※2)。医師の配置:×:△(非常勤可):〇(常勤)。入居者の要介護度:要支援・要介護:要介護度3以上:要介護度1~5。運営:民間施設:公的施設:公的施設。特徴:サービス内容が多様・費用負担は高め・施設数が多い:要介護度が高い・終身入居が可能・入居費などが安い:リハビリに重点・在宅復帰が目的・医療的ケアも。

※1 老健の看護師の夜間配置は義務ではありません

※2 有料老人ホームでも夜勤のある施設が徐々に増えてきています

同じ居住系の介護施設である「特別養護老人ホーム(特養)」「有料老人ホーム」に比べて、老健のほうが医療ニーズが高く、入居期間は短くなります。

とはいえ、病院や介護療養型医療施設・介護医療院に比べれば医療ニーズは低めです。

また、看護師の「夜勤」の有無も大きな違いです。

特養、有料老人ホームはオンコール体制で夜間対応するのが多いのに対し、老健は夜勤がある働き方が一般的です。

介護老人保健施設(老健)での働き方

老健の看護師は、日勤と夜勤のある働き方になります。

1日のスケジュール(日勤)

老健で働く看護師の1日のスケジュール例(日勤の場合)です。

【8:30】出勤、朝の情報収集、申し送り

申し送りをする老健看護師のイラスト

連絡事項や記録の確認など、情報収集をして入居者さんの状態を把握します。夜勤スタッフから申し送りを受けます。

【9:00】健康状態の確認など

入居者さんのバイタルサインチェックや、朝の内服の確認を行います。この日の入浴がOKかどうかも判断します。

【10:30】診察介助、指示受け、医療処置など

バイタルサインチェック、朝の内服の確認を行うイラスト

朝の入居者さんの状態を医師に報告。医師の診察の介助、医療処置(点滴、経管栄養管理など)を行います。

合間に、排泄ケアや入浴介助など介護職スタッフのサポートに入ったり、リハビリスタッフとミーティングを行ったりすることも。

【11:30】配薬の準備

昼食に向けて配薬の準備をします。

【12:00】配薬の準備

嚥下機能が気になる入居者さんを中心に食事介助を行います。言語聴覚士と連携しながら、嚥下機能の評価やリハビリ計画に生かします。

【13:00】休憩

【14:00】午後の業務

午後のケア業務を行います。

入居者さんのADL機能評価や新規に入居される方の情報共有など、多職種カンファレンスを行うことも。

おやつの時間も、入居者さんとのコミュニケーションを通じ、ご本人の希望や心身の状況を理解する大切な機会です。

【16:00】看護記録の入力

【17:00】申し送り

夜勤スタッフに申し送りを行います。

【17:30】終業

1日の仕事が終了!

夜勤・オンコールは?

老健の看護師は「夜勤」のある働き方が一般的です。

老健で、看護師をオンコール対応としているケースは、あまりありません。

施設の規模にもよりますが、夜勤帯は看護師1人、介護職スタッフ3~4人が平均的な配置人数です。

夜勤の勤務時間は16時間前後(17:00~翌9:00など)

病棟の2交代夜勤と同じような勤務時間ですが、医療的なケアや管理、急変対応は少なく、病棟のような緊急入院も発生しないため、看護業務は比較的落ち着いています。介護職スタッフと一緒にトイレ介助などのケアにあたることが多いでしょう。

先輩からひとこと

もしも急変などがあった場合は、救急搬送を手配する・医師の指示をあおぐなどの対応を行います。

夜勤専従の看護師がいる施設も

老健では「夜勤専従」の看護師を積極的に採用しているところも多くあります。

夜勤専従は、「夜勤手当が付いて労働単価が高くなる」「日中の時間を活用できる」といったメリットがあります。

キャリアアドバイザー

「夜勤専従」がある一方、老健では「日勤のみ常勤」という求人も増えています。老健の看護師さんの働き方は多様になってきています。

老健の夜勤手当は約1万円

老健の夜勤手当は1回あたり約9,800円が平均です。

おおむね7,500~12,500円が相場となっています。

なお、日本看護協会の調査によると、病院の夜勤手当(2交代)は平均11,000円ほどです。

※日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査」「2019年病院看護実態調査

介護老人保健施設(老健)の看護師の給料

老健の看護師の平均年収・給料、ボーナス、時給について見てみましょう。

看護roo!「ナースなワタシのお給料」、求人相場、日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査」などから分析)

【常勤】平均年収・給料・基本給・ボーナス

【常勤介護老人保健施設の看護師の給料】月収:27~38万円。ボーナス:60~95万円。年収:370~540万円※全国平均、地域差があります。

老健で働く看護師(常勤)の平均年収は約450万円です。

看護師全体の平均年収(約480万円)と比べて30万円ほど低い額となっています。

しかし、老健では夜勤のある働き方が多く、夜勤手当が付くため、特養や有料老人ホームなどに比べると、やや高めの傾向です。

キャリアアドバイザー

老健では「日勤のみ可」「夜勤専従の常勤」といったタイプの求人も。こうした働き方の違いで、年収にも幅があります。

【パート・バイト】平均時給

【介護老人保健施設で働くパート・アルバイト看護師の時給】1,300円~2,000円※全国平均。地域差があります。

老健で働く看護師(パート・アルバイト)の平均時給は約1500円です。

都市部では比較的高いなどの地域差もありますが、おおむね上記の額が相場となっています。

夜勤専従のパート・バイトではさらに高めに設定され、時給1700~2200円ほどが相場でしょう。

介護老人保健施設(老健)で働くメリット・デメリット

看護師が老健で働くメリット・デメリットをまとめました。

老健で看護師が働くメリット3つ

【介護老人保健施設で働く看護師のメリット】1:病院に近い働き方で安心。2:長期的に関わる看護ができる。3:在宅復帰の目標にやりがい

1病院に近い働き方で、ブランクありでも働きやすい

老健は、介護施設の中でもより「医療」に近い施設です。

看護師の働き方も、日勤・夜勤の2交代制で、ほかの介護施設より看護職員が多く配置されているなど、病棟勤務と共通する部分が多くあります。

また、医師が常駐するため、医療的な判断などで看護師にかかるプレッシャーも少なめです。

医療法人の運営が多く、施設によっては病院との人事異動があることもあります。

  • 「ブランクがあって看護師が少ない職場への復帰は不安」
  • 「介護施設に興味があるが、病棟しか経験がなく心配」
  • 「できるだけ医療に近いところで働きたい」

といった方に向いています。

2長期的なかかわりの中で高齢者看護が実践できる

老健の平均入居期間は約1年です。特養や有料老人ホームより短期間ではありますが、病院と比べると、1人1人にじっくり向き合った看護が実践できます。

  • 「高齢者の看護が好きで、より継続的に看護をしたい」
  • 「入退院の激しい病院での業務がきつい」

といった方におすすめです。

3在宅復帰の目標にやりがいを持てる

老健は「在宅復帰を目指す介護施設」であることが特徴です。「在宅で暮らす」という目標のある看護を提供することに、やりがいを感じる看護師さんも多いようです。

また、入居者さんのADLが維持された・向上したという指標が見えやすいのも、モチベーションや達成感が得られるでしょう。

医師やリハビリスタッフ、介護職スタッフなど多職種と連携し、入居者さんが住み慣れたご自宅に帰られる姿を見守れるのは、老健の看護師ならではのやりがいです。

老健で看護師が働くデメリット3つ

【介護老人保健施設で働く看護師のデメリット】1:夜勤がある。2:医療行為が少ない物足りなさ。3:多職種との調整力が必要

1夜勤がある

老健の看護師は多くの場合、夜勤のある働き方になります。

「病院の夜勤がつらく、日勤のみの介護施設に転職したい」と希望している看護師さんには、あまり合わないかもしれません。

一方で、「介護施設での看護に興味があるが、夜勤手当がなくなるのは厳しい」という方には、夜勤ありの老健がおすすめです。

キャリアアドバイザー

老健には「日勤のみ」「夜勤専従」といった求人も多くあります。自分に合った働き方を検討してみると良いでしょう。

2医療行為が少なく、物足りない…

老健は、医療と在宅の中間という位置づけですが、基本的には病院での治療の必要がない入居者さんがケア対象です。

そのため、医療処置のスキルアップを目指す方には不向きかもしれません。

また、特養や有料老人ホームとは異なり、医師が常駐するため、医師の指示を受けて行動する機会が多くなります

安心感がある一方で、「医療職の中心として動きたい」「判断力を磨きたい」と考える方は物足りなさを感じることもあるようです。

3多職種スタッフ間の調整スキルが求められる

老健には医師やリハビリスタッフ(PT、OT、ST)、看護師、介護職スタッフと、多職種が配置されています。

その中で、看護師は多職種連携の調整役を期待されることが多くなるでしょう。

入居者さんの日常生活を最もよく知る介護職スタッフから、わずかな体調の変化についても情報を共有してもらい、リハビリスタッフに機能改善のレクリエーションについて相談したり、医師と連携して介護職スタッフに感染対策の指導を行ったりなど、看護師は医療と介護の橋渡しとなります。

多職種連携のかなめという立場にやりがいがある半面、高いコミュニケーションスキルが必要となり、負担に感じる方もいるかもしれません。

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