役割・年収やメリット・デメリット ICUとは?向いている看護師は?
重篤な患者さんを24時間体制でケアするICU(集中治療室)。緊張感のあるイメージがありますが、実際にはどんな働き方なのでしょうか?
ICU看護師の役割や向いている人、年収などについて解説します。
目次
ICUとは?看護師の役割・仕事内容
ICU(集中治療室)とは「Intensive Care Unit」の略称で、救急外来での初期治療や大きな手術の直後など、重篤な患者さんを24時間体制で治療・ケアする病棟です。
ICUに入院する患者さんの疾患・病態は病院によっても特徴がありますが、共通するのは重症度が高く、急変のリスクがあるという点。
そのため、ちょっとした変化にもいち早く気付いて対応できるよう、オープンフロアになっていることが多く、看護師の配置基準は日勤・夜勤どちらも「2対1」と手厚くなっています。
ICU患者に多い疾患・手術例(成人)
- 消化器がん
- 肺がん
- 心血管疾患
- ウイルス性肺炎
- 急性心筋梗塞
- 心停止
- 心臓弁手術
- 大動脈瘤(解離含む)待機手術
- 冠動脈バイパス
- 開頭脳腫瘍手術
…など
※参考:日本集中治療医学会・ICU機能評価委員会「JIPAD Annual Report 2021」
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気になる病院が見つかったら、その病院のICUではどんな患者さんを多く受け入れているのか、診療科や救急件数、手術件数などから確認すると良いでしょう。
ICU看護師の主な役割は全身管理
ICU看護師の主な役割は、患者さんの全身の状態管理です。ICUの患者さんは重症度が高いため、ちょっとした状態の変化が命に関わるケースも。
そのため、バイタルサインや心電図モニター、尿量などを注意深く観察・アセスメントし、医師への報告や適切な処置を行うことが求められます。
ICUで働く看護師の役割・業務内容
- 心電図モニター、検査データの確認
- 人工呼吸器などの医療機器の操作
- 気管チューブなどの挿管・抜管介助
- 体位変換・清潔ケア・口腔ケア
- リハビリ介助
- 患者家族への寄り添い・サポート
…など
また、ADLの低い患者さんが多いため、サーカディアンリズムを意識したケアをしたり、理学療法士などと連携しながらリハビリの介助を行ったりするのも、ICU看護師の特徴です。
家族のケアも大切な役割のひとつ
患者家族に寄り添いサポートするのも、ICU看護師の大切な役割。
ICUには急変や突然の事故などで緊急入院している患者さんも多く、ご家族は大きく動揺し、不安を抱えています。容態が安定するまでは面会が制限されているケースもあるでしょう。
ICU看護師はそんなご家族の声に耳を傾け、気持ちの整理や代理意思決定のサポートをすることも求められます。
いわゆる「ユニット系」と呼ばれる集中治療室にはさまざまな種類がありますが、主な違いは「どんな患者さん・疾患を扱うか」です。
疾患や部位を問わずに受け入れるICUやHCU(High Care Unit:高度治療室)がある一方、CCU(Coronary Care Unit:冠動脈疾患集中治療室)やSCU(Stroke Care Unit:脳卒中集中治療室)など、心筋梗塞や脳卒中の患者さんを専門にケアするところも。
そのほか、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)やMFICU(Maternal-Fetal Intensive Care Unit:母体・胎児集中治療室)など、新生児や母体に特化した集中医療を行うところもあります。
ICUで働く看護師の1日のスケジュール
ICU看護師(日勤)のスケジュール例を紹介します。
【8:00】始業・申し送り・情報収集
ICUにはさまざまな疾患・症状の患者さんが入院するため、効率よく情報収集を行うのがポイント。
【9:00】バイタルチェック、点滴・投薬
バイタルサインやモニターを確認し、点滴や投薬などの処置を行います。
【10:00】清潔ケア、リハビリの介助
サーカディアンリズムを意識し、午前中に清潔ケアやリハビリ介助などを行います。
リハビリは理学療法士などと協働して行います。
【11:30】受け入れ・転棟の準備
午後の受け入れに備え、ベッドの準備や情報収集を行います。逆に、一般病棟に移る患者さんの転棟準備をすることも。
【12:30】休憩
【13:30】受け入れ、転棟
術後患者の受け入れ、ルート整理や医療機器の設定などを行います。
容態が安定した患者さんがいる場合、転棟対応や申し送りをすることも。
【14:30】午後のケア、家族面会の対応
家族面会の予定がある場合、必要に応じて患者家族に声がけをすることも。
【16:00】申し送り・記録
夜勤スタッフへの申し送りや終礼を行い、記録をします。
【17:00】終業
ICUは日勤・夜勤どちらも「2:1」配置のため引き継ぎがしやすく、急変や緊急入院がなければ、比較的残業は発生しづらいところが多いようです。
ICUで働く看護師の年収・給料はいくら?
ICU看護師の年収は410万~550万円ほどになります。
ICUは日勤・夜勤で同じ配置基準のため、病院によっては月ごとの夜勤回数が一般病棟よりも多く、その分夜勤手当が多くなるケースも。
反面、残業が発生しにくいところも多く、その場合はトータルで見ると一般病棟と大きな差は出ないでしょう。
看護師の給与額は地域や病院の運営元、規模によるところが大きく、都市部の病院や規模の大きな病院ほど高くなるのが一般的です。
ICUで働く看護師のメリット・デメリット
看護師がICUで働く上でのメリット・デメリットをまとめました。
ICU看護師のメリット
1幅広い疾患・病態の知識がつく
ICUにはさまざまな患者さんが入院するため、全身の解剖生理に詳しくなれます。
循環器や消化器、脳外科など、一つの病棟では経験しきれない症例を日々学ぶことができるのは、ICU看護師の大きな魅力です。
2アセスメント能力が身につく
ICUでは患者さんの異常を早期に発見することが求められるため、経験を積むうちにアセスメント能力が高まります。
また、意識のない患者さんや、挿管によってうまく話せない患者さんも多いため、各種データのほか、表情や感触などの非言語コミュニケーションによる観察力も身につきます。
3急変対応が学べる
ICUにいる患者さんは重症度が高いため、それだけ急変のリスクも高くなります。
実際に急変対応をする機会もあるため、心肺蘇生をはじめとする緊急時の処置スキルを身につけることもできます。
ICU看護師のデメリット
1勉強量が多い
ICUにはさまざまな患者さんが入院するため、それだけ必要な知識・スキルも多くなり、日々の勉強が大変だと感じる看護師さんもいます。
いざ患者さんをケアするタイミングで慌てぬよう、効率的に情報収集を行い、知らないことは早めに聞いたり調べたりする必要があるでしょう。
2プレッシャーを感じることも
ICUでは患者さんに異変がないか常に注意深く観察し、いざというときには臨機応変に対応する判断力や冷静さも求められます。また、ときには急変を起こして容態が悪化し、亡くなってしまう患者さんもいるでしょう。
そのため、一般病棟以上に「命に関わっている」というプレッシャーが大きく、それを負担に感じてしまう看護師さんもいます。
3患者さんと長期的に関わりづらい
ICUはあくまで集中治療を行う場なので、症状が改善した患者さんは一般病棟に転棟します。
また、意識のない方や意思疎通が難しい方も多いため、患者さんとのコミュニケーション頻度も高いとは言えません。
そのため、退院まで長期的に関わりたい、一人一人にじっくり向き合いたいという方にとっては、物足りなさを感じることもあるでしょう。
ICUに向いているのはどんな看護師?
ICUに向いている看護師の特徴は、下記の通りです。
- 高度急性期の知識・スキルを深めたい
- 勉強があまり苦にならない
- プレッシャーに強い
- アセスメント能力がある
- テキパキと動くのが得意
- コミュニケーション能力が高い
- メリハリをつけて働きたい
…など
ICUでは日々多くの重症患者さんをケアするため、高度急性期の知識・スキルを学びたい方や、疾患・病態の勉強があまり苦にならないという方に向いているでしょう。
命に関わるケースもあるため、プレッシャーに強く、判断力やアセスメント能力のある方は重宝されるでしょう。急変時でも冷静かつスピーディな対応ができることも、重要な素質です。
加えて、患者さんはもちろん、動揺している患者家族にも寄り添いサポートできるコミュニケーション能力も大切になります。
また、病院によっては一般病棟よりも残業が発生しづらいケースもあるため、メリハリをつけて働きやすい環境でしょう。
ICUに転職ってどう?志望動機の書き方は?
ICUに転職することはできるのか、希望する場合の志望動機はどう伝えればいいのか、ICUへの転職にまつわるポイントを解説します。
ICUへの転職って実際どう?難易度は?
ICUへの転職には、下記のような特徴があります。
1ICUの求人は少なめ
ICUなどのユニット系は定員の割に一定の人気があるため、配属が約束されている求人はレアです。
あったとしても中小規模の病院で、患者さんや扱う疾患に偏りがあることも。どういった患者さんが多く入院しているのか、事前に調べておくのがオススメです。
ICUを希望する場合は、どうしてICUを希望するのか、またこれまでの経験がICUでどう活かせるのかなど、理由や適性について履歴書や面接でアピールしましょう。
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2急性期の経験が重視される
ICUでは重症度の高い患者さんをケアするため、急性期での臨床経験(特に外科系)が3年以上あると、採用・配属してもらいやすいでしょう。
「ひと通りの業務ができ、ICUでもやっていけそう」と判断されやすいからです。
急性期の経験がない、経験年数が短いという場合は、まずは異動・転職をして急性期病棟で経験を積んだのち、ICUにチャレンジするのも一つの手です。
3今の職場で異動するのもあり
今の職場でICUへの異動希望を出すのもオススメ。転職しても希望の部署に配属されるとは限らないため、「ICU希望で転職したのに、配属先は違う部署だった」という事態を避けられます。
ICUでは一定のスキル・経験が求められることから、適性が判断しやすい院内のスタッフに異動してもらおうと考える病院は少なくありません。
今の病院自体がイヤな場合は転職もアリですが、まずは異動で解決できないか、上司に相談してみるのもいいかもしれません。
ICUに転職するときの志望動機
病院側はICUに限らず活躍できる人材を求めているため、ピンポイントでICUを希望する場合は、その理由を志望動機の中でしっかり伝える必要があります。
例えば下記のような理由であれば、納得感があるでしょう。
ICUを希望する際のアピール例
- ◯◯科でひと通りの看護を学んだため、今後はより幅広い経験を積みたい
- 将来的に複数の領域をフォローできる看護師になりたい
- 高度急性期の知識・スキルを極めたい
- 今よりもスピード感を持って学びたい、成長したい
…など
また、ICUを希望するようになったきっかけについて、これまでの経験や学生時代からの思いなど、具体的なエピソードもあわせて伝えられると◎です。
例文(消化器内科→ICU)
三次救急で多くの重症患者さんを受け入れている貴院で、より幅広い疾患に関する知識や技術を身に着けていきたいと思い、ICUを希望しております。
現職では消化器内科病棟で3年間経験を積みましたが、より重症度の高い患者さんを受け持つことで、看護師としてのスキルや技術を高めたいと思うようになりました。
また、貴院のICUであれば、消化器系に限らずさまざまな疾患を抱えた患者さんが入院されるため、よりスピード感をもって成長できる環境だと考え、魅力に感じております。
ICUは未経験ですが、これまでの経験を活かしながら新たな領域についても積極的に学んでいきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(298字)
看護師の転職では経験や実務スキルが重視されるため、資格を持っていることで特別有利になるケースはあまり多くはないでしょう。
ただ、ICUは重症度の高い患者さんが多く、急変も発生しやすいため、BLS(一次救命処置)やACLS(二次救命処置)といったクリティカルケアに関する研修を受講したり、応募先で多く扱う疾患に関する資格を取得したりしておいても損はないでしょう。
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