新人看護師でもできる!「患者のつらさ」を和らげるかかわり
緩和医療専門医
皆さん、こんにちは。
この記事を読まれている方の中には、新人で入職されたばかりの看護師さんもいらっしゃると思います。少しは職場に慣れたでしょうか?患者さんとうまくかかわれず、苦しい気持ちになっていたりしていませんか?
病気によるさまざまな苦痛で、つらい思いをされている患者さんとかかわるとき、経験不足が故にそういった患者さんへのかかわり方がわからず、かかわること自体が怖くなったり、逃げ出したくなったりするような思いをされたのではないでしょうか。
この記事では、そんな患者さんとのかかわりについて、新人やベテラン関係なく、看護師なら誰でもできることを紹介します。
「つらい思いをされてる患者さん」とのかかわり
私は緩和ケアの専門医です。がんなどの病気が進行している患者さんとかかわる機会が多くあり、そのつらさを和らげるのが主な役割です。
そんな緩和ケア医である私ですが、医師になったときから、そしておそらく今でも、つらい思いをされている患者さんとかかわること自体に、自分自身つらさを感じています。時には「患者さんの病室に行きたくないなー」という気持ちと闘っています。
誰だって、つらい思いをしている人とかかわるのはストレスを感じるものなのです。
つらい思いをされている患者さんとかかわるのがつらい理由の一つに、「何もしてあげられることがない」ということが挙げられると思います。
もちろん、痛みや息苦しさなど、適切な緩和ケアの治療によって和らげるチャンスがあるものは多くあります。それについては、しっかりと知識や技術を学ぶべきです。
ただ、それでもどうにもならないつらさもあります。
例えば、死が近づいて来ることによる恐怖や病気の進行で避けられない体力低下、身体を思うように動かせない倦怠感などです。
このようなつらさには、緩和ケアの専門医である私ですら明確な改善方法はありません。病気の進行とともに、付き合っていくしかないつらさです。
「患者さんにとってつらさを理解してくれる人」に
では、いよいよ新人でもできる、つらさを和らげる方法のご紹介です。
皆さんに知ってほしい、つらさを和らげる大原則。
それは「自分のつらさを理解してくれる人の存在は支えになる」ということです。
皆さんはどうでしょうか?たとえば仕事の愚痴、日々の疲れ、人間関係のストレス。こういった感情を誰か、たとえば家族や友達、同僚たちに吐き出すことで、なんとなく発散させていませんか?これ、吐き出すだけで、別に解決策を求めてはいませんよね?
しかし、逆に患者さんのつらさを受け止めたとき、看護師としてその解決策を探そうとしていませんか?
解決が難しいつらさに対して、解決策を患者さんと一緒に考えるかかわりはもちろん大切です。その気持ちは伝わります。でも、解決できないつらさもあります。その「解決できないつらさ」により、患者さんとのかかわりが苦手になってしまってはいませんか?
つらい思いをされている患者さんとかかわるとき、解決策を伝えようとするだけではなく、第2の目標として、患者さんにとって「つらさを理解してくれる人」になるということがあることを、ぜひ知ってください。
新人でもできる、「つらさを共感する」技法
「つらさを理解してくれている人」になることは、新人、ベテラン関係ありません。例えば、患者さんが倦怠感を訴えているときに「身体がだるいのはつらいですね」と声をかけ、身体をさするだけでも、患者さんは「自分の気持ちを理解してくれている」と感じるかもしれません。
新人看護師であっても、こういった「つらさを共感する」姿勢を持つことで、患者さんとうまくかかわれるチャンスが広がるのです。
「つらいですね」だけでは、そこから会話が広がらないのではないか?と思われるかもしれませんが、心配無用です。「つらいですね」と共感を示すかかわりに対し、患者さんからは「そうなんです」という言葉が返ってくることが多いでしょう。例えば以下のような。
患者「身体がだるくて、つらいです」
看護師「身体がだるいのは、つらいですよね」
患者「そうなんです…身体がだるいと、昼間も起きていられなくて」
看護師「身体がだるくて、昼間も起きていられないんですね」
患者「そうなんです…起きていられないから、家族が面会に来てもあまり話せない」
看護師「起きていられないから、面会の時もあまり話ができないんですね」
患者「はい…せっかく孫が来てくれても、これじゃあね」
看護師「お孫さんが来てくれたんですね」
患者「うん、また来てくれるといいな…」
看護師「また来てくれるといいですね」
この会話、実は反復による傾聴の技法です。
患者さんから「そうなんです」と返してもらうことがキモになります。
その返しがあることは、「この看護師さんは、私のつらさを分かってくれている」と患者さんから思ってもらっているという証になります。
そして、そこからさらに、つらさについて詳しくお話ししてもらう導線になるわけです。
こういったつらさを理解するかかわりをすることで、新人看護師さんでも患者さんにとって「つらさを理解してくれている人」になれるチャンスがあること、感じ取っていただけましたでしょうか?
つらい思いをされている患者さんの病室に行くのは誰だってつらいです。
でも、あなたにできることはあるのです。
この著者の前の記事
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長廣橋 猛
2005年東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、09年緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。14年2月から現職。また、病院勤務と並行して、医療法人社団博腎会野中医院にて訪問診療を行う二刀流の緩和ケア医。日本緩和医療学会では理事として、緩和ケアの広報、普及啓発、専門医教育などの活動を行っている。「がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」(KADOKAWA)」など著書複数。
編集:林 美紀(看護roo!編集部)
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