「紅麹」成分が入った機能性表示食品で健康被害?! |おると先生の気になるニュース(2)

 

今回は、「紅麹(べにこうじ)」成分を配合した機能性表示食品のサプリメントを摂取した人に、腎機能障害などの健康被害を訴える報告が相次いでいるというニュースについて解説しようと思います。

 

 

記事執筆時(2024年4月4日時点)でサプリとの関連が疑われる死亡者は5人、180人以上がサプリを摂取後に入院し、一時的に透析まで必要になった方もいるとのことでした。,2)

 

機能性表示食品に関する制度が2015年に始まって以降、事業者側が健康被害を公表して自主回収をするのは初と消費者庁は発表しています(3月27日には大阪市が商品回収を命じる行政処分を出しました)。

 

今回、自主回収の対象となっている小林製薬の商品は以下の3点です。

・紅麹コレステヘルプ
・ナイシヘルプ+コレステロール
・ナットウキナーゼ さらさら粒GOLD

 

これらに使用されている紅麹原料(自社製造)の成分分析を行った結果、一部の紅麹原料に「想定していない成分」が含まれていた可能性が判明したと発表されています。

 

また、小林製薬は企業向けに紅麹の原料も販売しており、流通・販売に関係した国内企業が最大で3万社以上にのぼる可能性があるといい、供給先の会社も商品を自主回収する対応をとるなど、非常に広範囲に影響を及ぼす事態となっています。

 

今回の健康被害の原因としては、当初は一部の紅麹菌が産生する有害性のあるシトリニンが関与しているのではないかと考えられていましたが、調査の結果、シトリニンは検出されませんでした

 

現在、健康被害を引き起こした原因の可能性があると精査されているのが、「プベルル酸」という天然化合物です。しかし、人体に対する毒性や影響などについてはまだ不明なことも多いとされています(余談ですが、小林製薬は奈良先端科学技術大学院大学との共同研究において、日本で主に使われている紅麹菌“Monascus pilosusの全ゲノム”を全て解析し、腎毒性の健康被害をもたらすシトリニンは生成不能であると報告しています)3)

 

今回の件で被害が大きくなってしまった原因として、まず企業の対応の遅さがSNSでは多く指摘されています。

 

最初に健康被害が疑われる報告があったのは2024年1月15日でしたが、会社が自主回収を発表したのは3月22日と、最初の報告から発表までに2か月以上かかっています。

 

しかし、この点に関しては、毎日さまざまな健康被害疑いの相談が来る中で、ただの不定愁訴を除き、ホンモノだけを迅速に拾い上げるというのは困難を極めるのではないかという考え方もできます。

 

実は多い、サプリメントや健康食品による健康被害

また、ほかの原因として「サプリメントや健康食品に対する世間一般の認識」というものも、少なからず影響しているのではないかと考えます。

 

一般的に、サプリメントや健康食品に対する印象は「簡単・お手軽」「健康に良い」などポジティブな印象が多く、ネガティブなイメージを持っていたとしても「効果が実感できない」程度で、まさか健康被害まで出るとは思っていない方が多い傾向にあると筆者は考えます。

 

そのため、実際に自分の健康が損なわれても、「もしかしてサプリメントのせいかも……?」と紐づけるに至らなかったのではないか?という推測もできますし、実際に小林製薬がコールセンターを開設してから健康被害報告が多く寄せられていることからも、ニュースになって初めて「体調の悪さの原因がサプリメントにあるのでは?」と結びついたことが伺えます。

 

しかし、そのような印象とは裏腹に、サプリメントや健康食品による健康被害は毎年多く報告されており、筆者も過去にXで別の健康食品による健康被害に関しての注意喚起のポストをしたことがあります。

 

 

サプリメントや健康食品と医薬品との併用に注意!

また、サプリメントや健康食品などは医薬品と併用することで医薬品の効能に影響が出てしまったり、副作用が現れてしまうような場合もあります。

 

医薬品と成分との組み合わせで有名なものとして、「ワーファリン」+「ビタミンK」による減弱作用などはご存知の方も多いかと思います。ワーファリンを服用している患者がビタミンKを多く含んでいる青汁やクロレラなどを摂取すると、減弱作用が引き起こされる可能性があります。

 

看護師の皆さんは、外来・入院患者が飲んでいる医薬品をチェックする機会も多いかと思います。その時は、ぜひ患者が飲んでいるサプリメントや健康食品にまで目を向けてもらえると、事故を予防することができるかもしれませんね。

 

サプリメントは良くも悪くも健康に影響するということは常に念頭に置いておき、決して存在を軽視しないようにしましょう!

 

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執筆

おると🦴整形外科医📚

日本整形外科学会専門医/ 認定医複数/ フリーランス/ 雑誌・W E B連載複数あり、正しくわかりやすく医療や医療系ニュースの解説をしています。Xブログ

 

編集:林 美紀(看護roo!編集部)

 

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