便秘の看護計画の書き方とポイント【例文付き】|これでカンペキ!看護計画(2)
#看護計画の書き方 #褥瘡の看護計画 #統合失調症患者の看護計画 #転倒リスク状態の看護計画
この記事では、患者Bさんの看護計画書を例に、個別性のある看護の実施につながる「便秘」の看護計画書を作成する方法を解説します。
看護計画書の見本
立案日:〇月△日 評価日:〇月〇日
看護診断 |
|
患者目標 (outcome) |
●排便時に強い怒責が見られない |
具体的な 看護計画 |
【観察計画(O-P)】 |
評価 |
Bさんは、便秘の状態にあったが、評価日の時点では、排便に強い怒責を要することなく、1~2日に1回は普通便が朝食後に見られている。 |
執筆:長坂育代(淑徳大学看護栄養学部看護学科・同大学院看護学研究科看護学専攻 准教授)
監修:茂野香おる(淑徳大学看護栄養学部看護学科・同大学院看護学研究科看護学専攻 教授)
便秘の看護診断
看護診断 |
|
『便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症』によると、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています2)。
患者Bさんに対し、看護で解決すべき問題として、「#便秘」の看護診断を挙げました。
ここからは、患者Bさんに対し、「便秘」の看護診断を確定するまでの看護師の思考過程を見ていきましょう。
1 排便に関連する情報を収集する
Bさんのトイレ介助時、Bさんの「便が出そうな感じはあるんだけど、出ないんだよね」という発言から、Bさんは排便や腸の動きに関して何らかの問題があるのではないかと考えます。
Bさんの排便の状況を把握するために、「前にお通じがあったのはいつですか?」と尋ねると、Bさんは「入院してからほとんど便は出ていない。入院前に自宅にいたときは、毎朝出ていたのに。お腹が張った感じはあって、おなら(ガス)が時々出る」と話します。「水分は500mLのペットボトルの水を1日1本くらい」摂取していると話しました。
そこで、Bさんの腹部の聴診や触診を行い、腸蠕動音は弱いが聴取できること、左下腹部に便塊のようなものを触知できることを確認しました。そして、ナースステーションに戻り、診療録から、Bさんに心不全の既往があること、看護記録から、前回の排便が5日前であり、硬便で少量であったこと、最近の食事摂取の状況、緩下剤などの内服状況を確認しました。
収集したS情報とO情報をまとめると、次のとおりです。
2 集めた情報から「現状の問題」を分析する
Bさんの排便に関する情報(S情報、O情報)をもとに健康な状態からの逸脱がないかを探り、現状の問題を次のように分析しました。
Bさんは、84歳の男性で心不全の既往がある。
腰椎圧迫骨折で入院し2週間床上安静であったが、昨日よりコルセット着用にてトイレ歩行が可能となっている。
Bさんは入院する前は毎朝排便があったとのことだが、入院後は便がほとんど出なくなり、5日前に少量の硬便が見られた以降は、4日間排便が見られず、腸蠕動音も減弱した状態にある。
また、便意はあるものの、いきんでも出ないことから排便困難感がある。
このことから、Bさんは便秘の状態にある。
3 現状の問題の「関連因子(原因)」や「なりゆき」を分析する
Bさんの現状の問題として「便秘」の状態にあると捉え、集めた情報をもとにその原因となる「関連因子」を次のように分析しました。
腰椎圧迫骨折により2週間の床上安静であったことから、活動量低下や慣れない入院生活のストレスによる腸蠕動運動の低下や直腸内圧不足による排便反射の減弱が考えられる。
また、心不全に対して利尿剤を服用していることや、1日の水分摂取量は500mL程度(食事を除く)で1日に必要な水分摂取量1000mLを大幅に下回っていることも硬便に影響していると考える。
そして「なりゆき」として、次のように分析しました。
このまま便が大腸内に停滞し排便回数が少ない状態が続くと、さらに硬便となり、排便に強い怒責(いきむこと)を要する。
強い怒責により血圧が上昇すると心臓や血管に負荷がかかり、心不全の急性増悪のリスクが高まる。
4 看護診断「#便秘」を決定する
Bさんは、「4日間排便がない」「硬便」「排便困難感」という症状・徴候から、便秘の状態にあり、関連因子として、「2週間の床上安静による活動量の低下」「水分摂取量不足」「慣れない入院生活によるストレス」が挙げられます。
また、なりゆきから、Bさんにとって「排便時の強い怒責」は、血圧を上昇させ、血管や心臓に負荷をかけることから、心不全の既往があるBさんにとって便秘は生命に直結しかねない健康上の問題と言えます。
Bさんの便秘の状態は看護が解決すべき(看護によって解決可能な)問題であり、かつBさんにとって重要な健康上の問題であったため、Bさんに対して「#便秘」の看護診断をしました。
便秘の状態にあるすべての患者さんに「#便秘」という看護診断を挙げて看護介入(援助)をしていくわけではありません。
たとえば、便秘の原因が疾患によるもので、解決には手術などの医学的な処置が必要な場合、それは看護が解決すべき(看護によって解決可能な)問題ではないということになります。
その場合は、看護診断(看護が独自に介入する問題)として「#便秘」を挙げるのではなく、例えば「#腸閉塞の合併症リスク状態」など、医師との共同問題として、便秘の状態に対応していくことになるでしょう。
また、便秘の状態ではあっても、看護診断に「#便秘」を挙げて介入する必要がない場合があります。
たとえば、今後は食事や水分摂取量の増加が見込まれるといったその人のなりゆきから、看護介入がなくても便秘という問題が解決すると考えられるときや、これまでの排便習慣から便秘という状態がその人にとって重大な健康上の問題にはならないと考えられるときなどです。
また、「#食欲不振」のような、その人に挙げられた他の看護診断によって、便秘に対して介入ができる場合も、同じ介入を行う複数の看護診断を挙げる必要はないということになります(関連記事「食欲不振の看護計画」)。
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便秘の患者目標
Bさんに対し、次のように患者目標を挙げました。患者目標ですので、患者さんを主語にして表現しています(関連記事「患者目標の書き方」)。
患者目標 (outcome) |
●排便時に強い怒責が見られない |
この患者目標はどのように設定されたのでしょうか。
看護診断には、「実在型の看護診断」「リスク型の看護診断」「ヘルスプロモーション型の看護診断」の3つの種類があります(関連記事「看護診断の種類」)。「#便秘」の看護診断は、症状・徴候を根拠として既に起きている便秘という状態を健康上の問題として挙げたものですから「実在型の看護診断」になります。
この看護診断における看護介入は、患者さんが便秘の状態から便秘ではない状態になることを目指して行われます。
ですから、患者目標には、その患者さんの便秘という問題が解決した状態を含めることが必須となります。
1 その患者さんに合った患者目標を考える
患者目標は、その患者さんへの看護介入の計画、実施、評価のよりどころとなるものですから、その患者さんにとって現実的ではない(実現不可能な)ものやその患者さんにとっては関係のないものを患者目標に挙げても意味がないですよね。
患者目標を設定する際には、その患者さんの看護診断を決定する際に根拠とした「症状・徴候」「関連因子」「なりゆき」を意識しましょう。
同じ便秘の状態にあっても、その状態を示す症状・徴候、関連因子、なりゆきは、人によって異なります。
患者目標を、その人の便秘の状態の症状・徴候、関連因子、なりゆきを根拠に挙げることで、その人に合った患者目標を設定できます。
2 Bさんの例で考えてみる
Bさんに「#便秘」の患者目標を設定するうえで整理した関連図は、次のとおりです。
Bさんの看護診断を挙げる根拠となった症状・徴候はBさんに生じている便秘の状態そのものであり、関連因子は便秘の状態を引き起こしている原因を示しているわけですから、看護を実施することで患者さんがどのような状態になってほしいかを考えると、それがおのずと患者目標になります。
また、なりゆきに示された「排便時の強い怒責」が起きないことも患者目標になります。
1)症状・徴候に対する患者目標
入院前に毎朝排便があったことや慣れない入院生活が続いていくことを踏まえると、2日に1回は排便があるという患者目標が現実的であると考え、これらを患者目標に挙げました。
2)関連因子に対する患者目標
便秘を引き起こす原因がなくなることを患者目標に挙げることで、それに対する看護介入を計画したり、実施後の評価がしやすくなります。
3)なりゆきに対する患者目標
大腸での糞便の停滞時間の長さや水分摂取量の不足は硬便の要因となり、排便時の強い怒責を引き起こします。排便時の強い怒責による血圧上昇は、心臓への負荷となることから、心不全の既往があるBさんにとっては最も避けたい部分です。
患者目標が定まると、患者目標が看護計画の内容を決めていく根拠となり、評価のよりどころになります。
症状・徴候、関連因子、なりゆきのすべてを患者目標に挙げなければならないということではありません。
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便秘の具体的な看護計画
ここからは、患者さんが患者目標に到達するための看護計画の作成方法を具体的に説明していきます。
「患者目標」に到達するように、「症状・徴候」「関連因子」「なりゆき」に対して看護としてどのように関わることができるかを考えていくこと、その際に、その人の年齢や疾患、既往歴などの影響を考慮することが、個別性のある看護計画を作成するうえで有用です。
1 観察計画(Observational Plan;O-P)
Bさんに挙げた観察計画は、以下のとおりです。
具体的な看護計画 |
【観察計画(O-P)】 |
排便回数の減少、硬便などの便性状の変化、排便時の強い怒責や残便感などの排便関連症状の有無を経時的に観察し、直接ケア計画や教育計画を実施する際の根拠や評価に活用します。
2 直接ケア計画(Treatment Plan;T-P)
Bさんに挙げた直接ケア計画は、以下のとおりです。
具体的な看護計画 |
【直接ケア計画(T-P)】 |
看護師は、Bさんの便秘の状態は、床上安静に伴う活動量の低下による腸蠕動運動の減弱や慣れない入院生活に伴うストレスによる副交感神経の過緊張などで、便が大腸で停滞し水分が吸収されたために、排便困難感や硬便が生じていると考えました。また、排ガスがあり、嘔吐や腹痛も見られていないことから腸閉塞などの器質性の便秘(消化管に穿孔や閉塞、炎症がある状態)ではないと判断しました。
そのため、機能性の便秘(腸の形状には問題がなく、腸の機能に問題がある状態)に対する看護介入として、腸蠕動運動の促進とリラックス効果を期待して、直接ケア計画に、腹部・腰背部の温罨法を挙げました。
また、Bさんは、トイレまでの歩行には看護師の見守りを要しますが、Bさんがトイレの座面に座るところまでは見守りや必要に応じて介助を行い、安全を確保したうえで看護師は一旦退出し、排泄が終わったらナースコールで呼んでもらうなど、Bさんが落ち着いて排便できる環境をつくることを計画に挙げました。
3 教育計画(Education Plan;E-P)
Bさんに挙げた教育計画は、以下のとおりです。
具体的な看護計画 |
【教育計画(E-P)】 |
排便時の強い怒責は、血圧を上昇させ、心臓に負荷が生じることから、心不全の既往があるBさんにとって避けたい行動です。
強い怒責をせずに排便をするためには、大腸に便が長時間とどまることで便に含まれる水分が吸収されたり、体内の水分量が少なかったりするために便が硬くなってしまうことを防ぐ必要があります。
そこで、Bさん自身が便秘という問題への対処行動がとれるよう、教育計画として上記を挙げました。
まず、入院前は毎朝排便があったBさんが、入院前の排便習慣を取り戻すため、便意を我慢するなどして排便のタイミングを逃すことがないように促します。具体的には、排便のしくみや便秘に伴う強い怒責がもたらす心不全への影響について説明し、便意が生じたら我慢せずに看護師を呼ぶように伝えることなどがあります。
次に、Bさん自身が大腸内に長時間便がとどまることを防ぐ行動がとれるように、腸蠕動を促す腹部マッサージの方法を伝えたり、Bさんの水分摂取に対する認識を確認したうえで、水分摂取の必要性を説明し、必要な量の水分摂取ができるように促したりすることが挙げられます。
加えて、Bさんが排便時に、不必要に強い怒責をしないよう、排便がしやすい姿勢を説明し、コルセットを装着した状態でも排便しやすい体勢がとれるようにすることを挙げました。
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便秘の評価
評価 |
Bさんは、便秘の状態にあったが、評価日の時点では、排便に強い怒責を要することなく、1~2日に1回は普通便が朝食後に見られている。 |
看護計画書の作成時に設定した評価日に、患者目標に沿って、下記のような点を評価していきます。
・Bさんの便秘という状態がどのような状態になったのか(問題は解決したのか)
・便秘の看護診断を挙げて実施した看護介入は妥当で、患者目標に到達するうえで有用であったのか
・患者目標に到達していない場合はその要因として何が考えられるか
など
1 複数の患者目標を評価する場合
看護師は、Bさんに対する便秘の看護診断における患者目標を次のように挙げていました。
●関連因子に対する患者目標:水分を1日1000mL以上継続して摂取する
●症状・徴候に対する患者目標:排便が2日に1回はある
●なりゆきに対する患者目標:排便時に強い怒責が見られない
このように患者目標を複数挙げたときに、評価の段階で目標に到達していない項目があった場合は、どのように評価すればよいでしょうか。
実在型の看護診断においては、関連因子に関して設定した患者目標に到達したとしても、症状・徴候に関して設定した患者目標に到達しなければ、問題は解決しません。
なぜなら、関連因子に関して設定した「水分を1日1000mL以上継続して摂取する」状態になったとしても、強い怒責を伴う排便や便が排泄されない状態が続くのであれば、「便秘」という問題は解決しないからです。
一方で、水分摂取量が目標に到達していなくても、症状・徴候に関して設定した患者目標に到達していれば、つまり、強い怒責をせずに普通便が2日に1回は排泄されているという状態であれば、「便秘」という問題は解決したと判断できます。
Bさんの場合、すべての患者目標に到達しており、今後も定期的な排便が見込まれることから、Bさんの便秘の問題は解決したと評価しました。
このように、評価では、看護介入の効果や状態変化(今後の見込み)を踏まえて、看護診断「#便秘」については問題解決とみなすか、引き続き看護計画を続行するか、看護計画を変更するかなどを検討していきます。
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便秘の看護計画書を作成するポイント3つ
個別性のある便秘の看護計画書を作成することとは、排便に関する情報を収集し、その人に何が起きているのか(症状・徴候)や、それはなぜなのか(関連因子)を判断し、このままだとどうなるのか(なりゆき)を考えたうえで、その人に対して看護としてできること(看護計画)を見出していくことであると言えます。
ここでは、個別性のある便秘の看護計画書を作成するためのポイント3つを、看護計画書作成のプロセスに沿って解説します。
1 排便に関する情報収集のポイント
患者さんの排便の状態を把握するために必要な情報には、以下のような項目が挙げられます。
これらの情報が何を意味するのか、何のために収集するのかを理解していることが、必要な情報収集を行うための前提になります。
例えば、排便の回数・量・性状、排便困難感、腹部膨満感、残便感などの情報は、その人の「排便の状態」を把握するための情報ですね。
そして、排ガスの停止や悪心・嘔吐の出現、腹痛などは「腸閉塞などの腸の病変が起きていないか」を把握するためです。
また、水分摂取量、食事摂取量、運動、不眠、基礎疾患、治療、薬剤などは、「排便に影響する要因」に関する情報です。
情報の意味を理解するためには、排便のしくみ(便秘の定義、糞便が体外に排出されるまでの機序やその影響要因)の知識が必須となります。
1)排便のしくみ
便秘とは、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、 直腸肛門 の閉塞感、排便困難感を認める状態」2)ですが、そもそも糞便はどうやって体外に排出されるのでしょう。
糞便は、大腸の蠕動運動によって直腸まで輸送され、便意が生じ、腹圧がかけられることによって(排便反射と排便動作)、体外に押し出されます。この過程のどこかが阻害されると、糞便が十分に体外に排出できない状態となります。
糞便が十分に体外に排出できない状態(大腸に糞便が溜まった状態)にあるかは、排便回数(前回の排便)、性状(形状)、便意(残便感)、触診による糞便(硬便)の有無などによって、推測することが可能です。
腸の蠕動運動は聴診によって腸蠕動音を聴取することで、その人に糞便を押し出す力があるかは排便動作を観察することで、腸閉塞が起きていないかは既往歴、手術歴、排ガス、嘔吐などの情報がそれを知る手がかりになります。
快適に排泄できているかどうかはすっきりした感じがしないといった患者さんの言葉から捉えることができるでしょう。
また、情報収集の際には、例えば、便の性状の指標であり、腸管内の通過時間によって、排便の性状が異なることを示すブリストルスケールのような、排便に関する用語や既存の指標を活用することも看護師間や医師を含む多職種での情報共有や継続的なアセスメントに有用です。
2 「便秘」に関する情報分析のポイント
「便秘」に関する情報分析では、排便に関して収集した情報をもとに現状、原因、なりゆきを考えていくわけですが、一つの情報ではなく複数の情報を組み合わせることと、排便に関する知識を活用しながら推測することがポイントとなります。
例えば、4日間排便が見られない2人の患者さんがいたとします。
Cさんは普段から毎朝排便があって残便感や排便困難感を訴えていますが、Dさんは元々週に1~2回程度の排便習慣で現状は困っている様子が見られないとしましょう。
便秘の状態にあるといえるのはどちらでしょうか。
Cさんですよね。
排便回数や量は個人差がありますので、その患者さんが便秘の状態にあるといえるのかを、排便回数という一つの情報からだけでなく、排便の状況や排便習慣など複数の情報を組み合わせ、便秘の定義と照らし合わせて考えていくと良いでしょう。
1)便秘の種類
原因別にみると、便秘には大きく次の4つの種類があります。
それぞれの便秘のおもな原因や特徴は、次のとおりです。
便秘の原因はこのうちの一つとは限らず、複数の原因で便秘が生じていることもあります。
看護師は❶❷❸の機能性便秘に対しては、便秘の看護診断を挙げて看護介入を行っていくことが可能です。
しかし、❹の器質性便秘は、大腸がんや炎症性腸疾患による狭窄病変、婦人科臓器疾患や腹腔内腫瘍による圧排、開腹手術後の癒着で大腸の一部に通過障害が生じて発症する便秘3)であり、問題の解決には医学的な治療や処置を要します。そのため、看護診断ではなく、医師と共同して解決すべき問題(共同問題)を挙げて対応していくことになります。
2)なりゆきの考え方
なりゆきでは、現状と原因を踏まえ、その患者さんの年齢や疾患、治療の状況などから、その人に何が起こりうるのかを考えます。しかし、なりゆきを突き詰めすぎると、便秘によって大腸に便が詰まって腸閉塞となり死亡するというところまで考えてしまう場合があります。
ここでのなりゆきは、あくまでその患者さんに実施すべき看護介入を考えたり、その患者さんにとって便秘がどの程度重大な問題であるのかを捉えるためにあります。
ですから、なりゆきでは、便秘という状態が続いた場合、その人に次に起こりうる具体的な状況を考えてみると良いでしょう。
3 便秘の看護計画の作成ポイント
便秘の看護計画の作成において、いわゆる便秘に有用とされる看護介入をやみくもに挙げても、その人にとっての問題の解決にはなりません。
例えば、腫瘍や炎症に伴う腸閉塞によって生じた便秘に対して、腸蠕動を促す温罨法やマッサージを行ったらどうなるでしょうか。患者さんの身体のなかで起きていることを、収集した情報から的確に分析できなければ、計画した看護介入が患者さんに害をもたらすこともあります。
また、同じ「便秘」の看護診断であったとしても、症状・徴候、関連因子、なりゆきを踏まえた患者目標によって、看護計画の内容(O-P、T-P、E-P)は異なります。
ですから、便秘に有用とされる看護介入をすることが、その患者さんにとって問題の解決につながるかを判断していくことがポイントです。
たとえば、情報の分析から、その患者さんの便秘が機能性便秘で、環境の変化による一過性の便秘であり、看護介入により改善が見込めると判断したとします。
排便には、腸蠕動運動、便の硬さ、直腸から肛門へ便を押し出す力が影響しますよね。腸蠕動運動を促すには、温罨法や腹部マッサージ、運動が有用とされています。硬くなった糞便を柔らかくする、あるいは硬くならないようにするには、水分摂取や食物繊維などの食事が有用とされています。外に押し出す力は、腹圧がかけやすい体勢によって強化されます。
便秘の状態や原因を踏まえて、その患者さんにとって必要な具体的な看護計画を立案していきましょう。
***
次の第3回は「褥瘡の看護計画」です。
編集:看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo)
参考文献
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