新薬「ゾフルーザ」はこれまでの薬とどう違う?|変わる、インフルエンザ治療薬(2)

2018年3月14日、新しい抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ®」が薬価収載されました。

 

インフルエンザシーズン中に使用が可能となるよう緊急収載された薬で、1回の服用で治療が完了するのが最大の特徴です。

 

これまでの薬とどう違うのか、押さえておきたいポイントを紹介します。

 

 

これまでの薬とはメカニズムが違う

ゾフルーザ®は、現在、一般的によく使われるタミフル®やリレンザ®などとは薬が効くメカニズムが異なります。

 

抗インフルエンザ治療薬の作用機序の違い/タミフル®・リレンザ®など_細胞内で増殖したインフルエンザウイルスの遊離(拡散)を防ぐ/ゾフルーザ®_細胞内でインフルエンザウイルスが増殖するのを抑える

岡部所長への取材を基に看護roo!編集部で作成

 

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが身体の細胞内に入り込み、増殖し、増殖したインフルエンザウイルスが細胞内いっぱいになると細胞外へ飛び出し(遊離)、ほかの細胞を攻撃し、やがて身体中に感染が広がっていく感染症です。

 

タミフル®やリレンザ®などは「細胞外へ飛び出す遊離を抑える薬」であるのに対し、ゾフルーザ®はその手前の段階の「細胞内での増殖を阻止する薬」であることから、より早い段階で効果が現れることが期待されています。

 

ただ、インフルエンザに詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長によると、熱がより早く下がるものの、「ほかの薬との差は数時間程度」といいます。

 

また、その効果や特徴については現状まだわかっていないことが多く、今後、使用されていく中で見つかるエビデンスが待たれるとしました。

 

 

1回の服用でOKの落とし穴

1日2回、5日間にわたって服用しなければならないタミフル®やリレンザ®と違って、一回のみの服用で済む点はゾフルーザ®の利点です。

 

この点について岡部所長は、「確かに、薬の飲み忘れや通院の回数を減らせるという利便性の意味ではメリットがあります。しかし、逆に、何か問題が起こった場合に服用を中止することができないというデメリットもあります」と指摘します。

 

たとえば、2018年8月21日に抗インフルエンザウイルス薬の添付文書が改訂され、改めて注目されている異常行動が発現した場合について、岡部所長は次のように話します。

 

「タミフル®やリレンザ®であれば服用を中止できます。そうすると、薬に原因があるかどうかにかかわらず、なんとなく安心できますよね。しかし、ゾフルーザ®の場合、一回服用してしまえば元には戻せません。一週間程度、効果が続きます」

 

そして、岡部所長は、薬の耐性などを考えると選択肢が増えるのはよいこととしながらも、症状に応じて量を増やしたり減らしたりするのが本来の薬の使い方であり、利便性だけでなく安全性も考えて患者に応じて薬を選択していく必要があると強調しました。

 

* * *

 

インフルエンザ治療薬の選択肢が増える今シーズン。

 

患者さんやその家族から何か聞かれたときに説明できるよう、違いを理解しておきましょう。

 

インフルエンザの異常行動について解説した薬を飲んでも飲まなくても「異常行動」に要注意もぜひご一読ください。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

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(参考)

抗インフルエンザウイルス薬の「使用上の注意」の改訂について(厚生労働省)

タミフルと異常行動等の関連に係る報告書(厚生労働省 薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会)

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