医療事故調査制度、1年で388件が報告―センターへの調査依頼は16件、うち13件は遺族からの依頼

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2015年10月にスタートした医療事故調査制度は、制度開始から1年間で累計388件が医療事故として医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告されたほか、院内調査結果をまとめた報告書が161件提出されたことが分かった。

センターへの相談件数は累計1820件。センターへの医療事故調査の依頼は累計16件で、このうち13件は遺族からの依頼、残り3件が医療機関からだった。

センターとして指定されている日本医療安全調査機構が10月11日に公表した。

(満武 里奈=日経メディカル)

 

 

日本医療安全調査機構常任理事の木村壯介氏は本誌取材に対し、「報告は徐々に増えている印象。真摯に対応していただいている医療機関も多いが、調査の考え方、手法が十分に理解されていないことが伝わってくる。標準となるマニュアルが必要であり、(2016年6月の省令改正で設置が求められた)中央協議会で、早急に対応すべき」とコメントしている(木村氏のコメントは別掲記事を参照)。

 

2016年3月までに医療事故調査・支援センターに医療事故として報告された388件のうち362件は病院、26件は診療所からだった。

 

診療科別では外科が69件と最も多く、内科が56件、整形外科と消化器科がそれぞれ34件、循環器内科が25件、産婦人科が22件、心臓血管外科が21件、小児科が17件、神経外科が16件、精神科が15件と続いた。

 

地域別の報告件数では、関東信越が累計157件と最も多く、近畿が58件、九州が57件、東海北陸が50件、中国四国が28件、東北が20件、北海道が18件だった。

 

センターへの相談内容(のべ2098件)を見ると、最も多かったのが報告対象の医療事故なのかという判断に関するもの(753件)だった。そのほかは院内調査に関するもの(518件)、報告の手続きに関する相談(514件)だった。

 

医療事故調査・支援センターは、病医院から予期せぬ死亡事例が発生した際の報告を受けるほか、各病医院からの求めに応じて助言を行う機能も持つ。

そのほか、院内事故調査結果を各病医院から受け取り、複数の事例を集めた上で分析を行ったり、病医院や遺族から調査を依頼された場合は、調査を実施する(関連記事)。

 

2016年6月には、厚生労働省が医療法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省令第117号)を公布。「医療事故調査等支援団体」同士が情報共有や意見交換する場として「協議会」を設置するほか、制度の対象となる事例を適切に報告できるよう、死亡や死産を確実に把握する体制を構築するよう病院の管理者に求めた(関連記事)。

 

日本医療安全調査機構常任理事の木村壯介氏のコメント

医療事故調査制度が施行され、1年が経過しました。この間に医療機関から受けた医療事故発生の報告件数は388件で、徐々にですが増えているという印象です。

 

この数に対し、予定よりかなり少ないという意見が出ています。しかしながら、「年間1300~2000件」という医療事故件数は、日本医療機能評価機構が行っている医療事故収集事業での数字を基にしており、特定機能病院などを対象に得られた医療事故発生件数を全国の病床数に割り戻して算出したものです。そのため、今回の医療事故調査制度で対象とするような医療事故の実態は、今までデータがないということになります。この医療事故調査制度が広く理解され、正しく報告が行われて初めて実態が判明するものと考えます。

 

報告をしてきた医療機関は、真摯に対応していただいているところも多いのですが、調査の考え方、手法が充分理解されていないことが伝わってきます。標準となるマニュアルが必要だと考えており、今年6月の省令改正で設置が指示された「中央協議会」で、早急に対応すべきだと思われます。

 

院内事故調査を行う際に、当該領域の専門医を「外部委員」として医療機関に紹介する上では、(同じく省令改正で設置が指示された)「地方協議会」などの形で、県単位で協議会として1つにまとまることが重要であると考えています。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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