看護師にとって医師って何?医師にとって看護師って何?

こんにちは、依里楓です。水商売を卒業して、看護師になって1年が経ちました。

 

就職したての時、看護師の先輩に緊張しすぎてまともに会話もできなかったのはもちろんですが、ナースステーションのカルテの前にででんと座っている医師ってもはや得体のしれない別の生き物のような気がしていました。

 

世間では医師と看護師の恋愛・結婚が多いとは噂には聞いたことがあっても、最初の半年なんて医師に「〇〇さんが発熱してます。血培取りますか?」と言うまでの間に「お忙しいところすみません…あの…えっと…けちゅばい…」と3回くらい噛んでいたし、1年が過ぎた今も割と噛みます。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.7 看護師にとって医師って何?医師にとって看護師って何?

看護師にとって医師って何?医師にとって看護師って何?

 

看護師にとって医師は「命令する人」、医師にとって看護師は「パートナー」

ある論文で読んだのですが、「看護師―医師関係」について看護師の約3割が自分と医師の関係を「同僚関係」とし、6割以上が「医師に従属している」と考えている一方、医師の6割以上が自分と看護師の関係を「同僚関係」とし、3割が「看護師は医師に従属している」と考えていることが明らかになっています。多くの看護師にとって医師は「命令する人」で、多くの医師にとって看護師は「仕事のパートナー」なの、なんだか不思議です。

 

理屈としては、医師がいなければ看護師は動けないのと同じく看護師がいなければ医師だって仕事にならないのは分かっているのですが、たしかに気を使う面は看護師の方が多いのかもしれない、という気はします。病棟によっても年数によっても変わってくるのでしょうけれども。

 

看護師単体の判断では業務を行えない状況で、特に薬剤の扱いや医療的な処置に関して「言われた通り」にこだわる意識は医師より看護師の方が強くあらざるを得ない中、医師をパートナーと思えない看護師が多くいるのは自然なことです。

 

私自身、医師に話しかける時には忙しい時なのかそうでないのかとても気にするし、医師の「お腹痛い?あーじゃあとりあえずアセリオで」なんていう曖昧な指示を「アセリオ1000mgで良いですか!?200ml/hで良いですか!?っていうかオーダー入れてください!」と確認すれば「細かい…」と不機嫌になられ、いや万が一何か食い違いがあったらお互い困るでしょう!?と思いながらも、何せ医師がいなければ病棟は回らないからという想いで言葉を飲み込んでしまいます。

 

看護師と医師のチームワークって何だろう

また、看護師の6割以上が受け持ち患者について医師とよく話し合っていないと考えているにも関わらず、医師の8割近くは看護職とよく話し合っていると考えているという研究結果も出ており、さらに看護師―医師間のチームワークがよく取れていると考えている看護師は約5割、医師は8割と、連携の認識にも差があるようです。

 

私は現在血液内科勤務ですが、毎日大量の点滴と輸血に走り回る中、突然現れた医師の「今から骨髄穿刺やるから介助ついて」という言葉に、こちらの大炎上中の仕事への配慮が無さすぎる!と苛立ったり、抗生剤を投与する直前になって薬剤変更すると駆け込んでこられたりと、話し合いどころか業務だけで常にいっぱいいっぱいです。

 

それでも医師の、インフォームド・コンセントで患者さんに分かりやすく、且つ的確に説明しようとする言葉遣いや、終末期の患者さんに対して「本人にしかわからない感覚を優先させて」と内服薬を柔軟に調整してくださる姿勢がとても好きだから、「忙しくなるからって余裕がなくなっている私がダメなんだ」と心のどこかで思ってしまうことも事実。

 

実際のところ、看護師―医師間のチームワークのためにはお互いが時間との戦いであることを意識するのが必須ですが、それができていない現場ほど、連携できているか否かの認識に食い違いが生まれるように感じます。

 

医師には医師のプライドを、看護師には看護師のプライドを

研究で明らかになっている結果を受け止めつつも、ごくごく個人的な印象として、医師に「先生」のプライドがあるのは勿論、看護師だってやはりプライドが高いと思うのです。理不尽だらけの中で、それでも患者さんの代弁者であろうとする看護師が単純に医師の指示を実行する「だけ」の人とはどうしても思えません。

 

以前医療関係の大学で教鞭を取る知り合いに言われた「普通の仕事は気を使う相手はクライアントだけだし、それがお給料に反映されるからいいけどさ、看護師さんは大変だよね。患者に気を使う上に医者にも気を使わなきゃいけなくて。同じ職場の人にあんなに気を使う職業ってちょっとおかしいんじゃないかな」という言葉への引っ掛かりはありますが、医学と看護学という、そもそも発祥の違う学問を持った両者が同じ現場にいることの面白みを忘れぬよう、そしてそれをきちんと患者さんの利益へ還元できるよう、2年目ナースも頑張っていきたい所存です。

 

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

ブログ:プロセスレコード

 

(参考文献)

山口由子・加納佳代子・大島弓子・草刈淳子・柳堀明子・瀬川文徳,「看護師―医師関係」及び「看護師の主体性」に関する看護師と医師の認識.神奈川県立保健福祉大学誌,11(1),105-115.

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