看護師は「母性」の職業なのか

こんにちは、依里楓です。水商売を卒業して、看護師になって1年が経ちました。

 

2年目になってなんとなく、私看護師の仕事が結構好きかもしれないと思うようになってきた最近、学生の時に大学の教授が話していた、あるエピソードを思い出しました。

 

教授のところに看護学生が、「患者さんのオムツ交換とか排泄ケアが苦手で、こんなに基本的なことができないんじゃ看護師になれない」と相談に来たそうです。教授は学生に「患者さんを自分の子どもだと思ってケアしなさい。母親は子どものオムツ交換をするものでしょう」とアドバイスし、そのアドバイスを受けた学生はオムツ交換をしながら「私はこの方の母親なんだ」という意識を持つことで無事に排泄ケアへの苦手意識を克服した、というエピソード。

 

その話を聞いた時は、「いやいや患者は顧客なんだからその意識はおかしくないか」と違和感を持っていたのですが、実際看護師になってみると教授の言うことも一理あるな、と感じるようになりました。

 

元キャバ嬢ナースのとある視点

Vol.8 看護師は「母性」の職業なのか

 

看護は母性と同様か?元キャバ嬢ナースのとある視点

 

患者に感じた愛おしさ

学生の時から「看護師は偉い!素晴らしい職業なんだ!」という態度を全面に出している看護師や大学の先生方が苦手で、私自身は看護師をそんなに高尚なものと思わないように、専門職として淡々としていようと考えていました。だからこそ、看護師はサービスを提供する人間、患者は顧客、という意識が人一倍強かったように思います。

そして看護師になって、相手との身体的な距離が非常に近いことや、患者にとって入浴・排泄など他人に見せたくない場面に立ち会う、生活の一部となる存在だと実感することが増え、考えていた以上に自分の気持ちが患者に引っ張られることも知りました。

 

病気への不安で夜中に泣いている患者の背中を延々とさすっている時や歩行介助をしている最中に患者が私の腕にぎゅっとつかまってきた時の、「今この方を守っているのは私なんだ」という感覚、あるいは点滴を自己抜去して出血が止まらなくなった方が血まみれでナースコールしてきて「止まらない…」と泣きそうな表情で訴える時に、「もう!」と思いながらもどことなく苦笑いしてしまうような愛おしさというものは、キャバクラ嬢時代には感じたことのないもので、自分が仕事の中でこんな感情を持つということに驚き、戸惑う気持ちもありました。

 

そんな中、養子縁組で授かった子どもを育てている友人が「目の前に自分がいないと生命の維持すらできない相手がいたら当然守らなきゃってなるし、そうしてるうちに母性みたいなのも芽生えるし。血縁関係とか関係ない」という話をしていて、私が持った感情もそれに近いものなのかな、と感じる部分がありました。私自身は子育てをしたことが無いからなんとなくの想像でしかないのだけれど。

 

看護師につきまとう“母”というイメージ

武井(2001)は、看護における愛情という感情規則は、家庭の中の母親もしくは妻の役割に適用される感情規則と似通っており、歴史的に見ても、看護という行為の原点が家族における配慮や世話にある以上、看護師に家族内でケアを引き受けてきた女性のイメージが当てはめられるのは、やむをえないことなのかもしれないと述べています(家事を主体的に行う「イクメン」も男性看護師も昔と比べたら増えているのだから、「女性」というイメージはこれから崩れていくものであろうし、崩れて欲しいなと個人的には思います)。

 

また、母親でさえ子どもにいつも愛情と優しさを感じているわけではないことや、まして妻が夫に感じる感情はそんな単純なものではないということはすぐわかるのに、どういうわけか、看護師の場合だけはポジティブな感情以外はもってはいけないように思われていることを指摘している点も興味深く。

 

私が患者に対して持った感情は、一般に持たれる「看護師=母親」のイメージがいつの間にか内面化されたものであったのかもしれないし、ただでさえ多忙な業務の中で不測の事態として患者に振り回されることに苛立たないようにするための感覚の切り替えだったのかもしれません。感情の揺れをまだうまく受け止められないけれど、前向きにしなやかに、患者さんとも自分自身とも向き合っていければと感じています。

 

(参考文献)
武井麻子(2001).感情と看護 人とのかかわりを職業とすることの意味.医学書院.

 

【著者】依里楓

東京から2時間くらいの場所にある総合病院の内科系病棟で働く看護師。水商売をしていました。

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