梅毒患者が1.5倍 針刺し事故に再度注意を

【ナース知っ得ニュース 2015/12/2】

 

梅毒患者1.5倍 女性は2倍に増加

国立感染症研究所は11月4日、性感染症「梅毒」の患者が増えていると発表しました。今年は10月28日の時点で症例数が2037例にのぼり、昨年同時期の1.5倍になりました。そのうち性別は男性が1463例、女性が574例でした。昨年同時期に比べると男性は1.4倍、女性にいたっては2.0倍に増え、女性の感染増加が目立つ結果となりました。

 

 

針刺し事故に注意を

医療機関にかかる患者増が予想される中、看護師にとって注意しなければならないのは針刺し事故です。

針刺し事故とは患者に刺した注射針が施術した看護師に刺さってしまう事故のことで、一部では看護師の2人に1人が経験しているともいわれています。

梅毒の針刺し事故による感染例は今のところ確認されていません。しかし、肝炎など他の感染症では報告があるため油断は禁物です。

 

リキャップ時に頻発、万が一のときはよく洗浄を

針刺し事故は、使用済み中空針を廃棄する際のリキャップ時に頻発しています。よって、予防には「使用済み中空針はリキャップしない」「翼状針はリキャップ不要の安全装置付きのものを使用」「手袋を使用する」の3点が有効です。

 

看護師の中には感覚が鈍るからと手袋を使わない人もいますが、院内感染を防ぐためにも感染症が疑われる患者には使いましょう。とはいえ、どんなに予防しても不慮の事故が起こることはあります。その場合はすぐに刺した部位の周囲をつまんで血液を絞り出し、生理食塩水や石鹸、流水でよく洗い流しましょう。冷静な対応が明暗を分けます。上司への報告も忘れずにして、再発防止に努めることが重要です。

 

梅毒感染例の女性の年齢分布は15~35歳が最多(437例、女性全体の76%)でした。中でも20~24歳が177例(同2.7倍)と全体に占める割合の最も高い年齢群でした。特に若い女性に患者が増えているといえます。

 

妊娠中に胎児感染する「先天梅毒」

若い女性の感染でより注意したいのが、先天梅毒です。先天梅毒とは、妊娠中に母体から胎児に感染する梅毒です。死産になってしまうケースや、生まれてくる子に障害が残る可能性があります。今年もすでに10例(昨年同時期は9例)が報告されていることから、妊娠前の性感染症検査は重要であるといえます。

 

梅毒は性交渉で感染、悪化すると日常生活困難

では、梅毒とは一体どういう病気なのでしょうか。

梅毒は性交渉による性感染症の代表的なひとつで、梅毒トレポネーマという細菌に感染して起こります。1回の性交渉でうつる確率は15~30%といわれ、非常に感染力の強い細菌です。1929年に特効薬である抗生物質ペニシリンが発見されてからはさほど恐れられる病気ではなくなりました。しかし、初期はアレルギー風疹の症状にも似ており、感染に気付かずに悪化すると日常生活を送ることも困難な状況に陥る場合があります。

 

梅毒は進行度によって主に4期に分けることができます。

 

【1期】感染後約3週間~

痛みのないしこり、潰瘍ができる。無症状のこともある。

【2期】感染後約3か月~

発熱、倦怠感。バラ疹と呼ばれる発疹が全身に出る。

【3期】感染後3年~

ゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生する。

【4期】感染後10年~

臓器に腫瘍、大動脈炎、脊髄癆などを起こし最悪の場合死亡する。現代ではほぼない。

 

感染経路としては、男性は異性間性的接触が615例(昨年同時期比1.7倍)、同性間性的接触が487例(同1.0倍)という報告でした。女性の異性間性的接触は405例(同2.1倍)でした。国立感染症研究所によると、2010~2013年は男性同性間性的接触による感染報告の増加傾向がありましたが、今年は男女の異性間性的接触による増加傾向があるといえるそうです。

 

不特定多数の人との性的接触は危険、コンドーム使用を

国立感染症研究所は「不特定多数の人との性的接触はリスク因子」と見解を述べています。また、「コンドームを適切に使用しないことがリスクを高めること」「オーラルセックスやアナルセックスでも感染すること」「梅毒は終生免疫を得られず再感染すること」を肝に銘じるよう啓発しています。

 

また、感染が疑われる症状がみられた場合には、「早期に医師の診断・治療を受けることが重要である。梅毒と診断した場合には、感染症法に基づく届出を行う必要がある。必要に応じた性行為パートナーに対する啓発、検査等を行うことが重要である」と呼びかけています。

 

梅毒検査は各自治体の保健所でできるほか、最近では「出向くのは気が引ける」という人向けに検査キットがネット販売されています。しかし、一番多いのは症状が現れて医療機関を受診した際に受けるケースと一般的にいわれています。「梅毒は昔の病気」と油断せず、今後も梅毒の受診・検査は増えるとみて、各方面から医療従事者の適切な対処が叫ばれています。

 

(参考)

梅毒、若い女性に急増…20~24歳、昨年の2.7倍(Yomi Dr.)

「梅毒に関するQ&A」(厚生労働省)

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