皮膚・排泄ケア認定看護師になるには?取得の流れやメリットも解説
皮膚・排泄ケア認定看護師は、褥瘡や創傷、ストーマ、失禁など、皮膚トラブルにおいて、高い知識とスキルを持ってケアを提供する看護師です。
この記事では、皮膚・排泄ケア認定看護師になるための方法や試験の内容、メリットなどを解説します。
目次
皮膚・排泄ケア認定看護師とは?
皮膚・排泄ケア認定看護師は、創傷やストーマ、失禁ケアの看護において専門性の高い知識とスキルを持った看護師です。
別名、WOCナース(ウォックナース)とも呼ばれ、皮膚トラブルや創傷の予防と改善、ストーマを装着する患者さんのサポート、失禁による皮膚かぶれのケアなどを行います。
2020年からは「A課程」と呼ばれる皮膚・排泄ケア認定看護師の資格に、特定行為研修などを組み込んだ「B課程」という新たなカリキュラムが設定されました。詳しくはこちらもご覧ください。
皮膚・排泄ケア認定看護師は2,733人(2023年12月時点)と、認定看護師の中で19分野中、4番目に資格取得者が多い看護分野です。
皮膚・排泄ケア認定看護師の役割
認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。
日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。
皮膚・排泄ケア認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。
皮膚・排泄ケア認定看護師の役割①「実践」
「実践」は、褥瘡や下肢潰瘍などの創傷、ストーマおよび失禁などの排泄に関わる障害を持つ患者さんに対し、予防や改善ケアを行うことです。
高度な知識とスキルを生かした質の高い看護が求められます。
また、排泄管理についての知識を生かし、患者さんの自己管理やセルフケアの支援などを行うことも実践の一つです。
皮膚・排泄ケア認定看護師の役割②「指導」
「指導」では、創傷の発生要因や不足しているケア要因の考え方をほかの看護師にレクチャーし、実践を通して具体的なケアの仕方を教育します。
また院内で、排泄障害についての勉強会や研修を企画し、皮膚トラブルの要因について理解を深めたり、予防方法の講義を行って、皮膚・排泄ケアに関する知識の底上げを図ったりします。
皮膚・排泄ケア認定看護師の役割③「相談」
「相談」では、医師や栄養士、理学療法士などの多職種と栄養サポートチームを結成し、患者さんに必要なケア計画を考えます。
またほかの職種の相談窓口となり、ケアの仕方について看護の視点からアドバイスを行うことも役割の一つです。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるには?
皮膚・排泄ケア認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるまでの流れ
認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。
皮膚・排泄ケア分野の実務経験については、次の実績や勤務状況であることが望ましいとされています。
- 皮膚・排泄ケア領域での看護実績
- 皮膚・排泄ケア領域での看護を5例以上担当
- そのうち創傷、ストーマ、排泄管理の事例を各1例以上担当
- 現在、皮膚・排泄ケア領域での看護に携わっている
皮膚・排泄ケア認定看護師になるための学校や勉強内容
皮膚・排泄ケア認定看護師の学習ができる学校は、2024年4月時点で全国に4カ所あります。
- 東京:日本看護協会看護研修学校
- 静岡:静岡県立静岡がんセンター
- 京都:京都橘大学看護教育研修センター
- 石川:石川県立看護大学
今後の募集については日本看護協会の分野別教育機関一覧を確認しましょう。
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取得するには、1年以内に800時間程度の教育課程を修了する必要があります。
教育課程は「共通科目」「専門科目」「演習・実習」に分かれています。
皮膚・排泄ケア認定看護師のカリキュラムでは、ストーマや排泄障害の管理方法、創傷のアセスメントの仕方、患者さんとご家族へのケアの方法など、皮膚・排泄ケアに関する診断・治療・予防について学びます。
詳しくは日本看護協会の認定看護師教育基準カリキュラムを確認しましょう。
皮膚・排泄ケア認定看護師の試験内容と難易度
認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。
- 試験時間:100分
- 会場:都道府県ごとの所定の会場
- 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
- 問題数:計40問(150点満点)
- 合格率:日本看護協会からの発表はなし
難易度は低くはないようです。
日本看護協会から合格率の公式発表はありませんが、800時間程度のカリキュラム受講が必要なのに加え、「国家試験以上に勉強した」という先輩看護師の声もありました(看護roo!編集部の取材による)。
そのため、資格取得は決して簡単ではないと言えるでしょう。
認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるためにかかる時間と費用
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるまでにかかる時間
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格取得までには、2年程度かかります。
表資格取得までのスケジュール例
時期 | できごと |
---|---|
4月 | 入学 |
4月~7月 | eラーニングでの授業開始 |
8月~10月 | 集合研修開始 |
10月 | 実習開始 |
翌1月~2月 | 課題学習、補講 |
3月 | 修了試験、修了式 |
10月 | 認定審査 |
12月 | 認定審査の合格発表、認定看護師認定証交付・登録 |
また、教育機関に通っている間の約1年間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。
病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるまでにかかる費用
皮膚・排泄ケア認定看護師になるためにかかる費用は、通う学校によって多少異なりますが、総額で120万円程度かかります。
表認定看護師の資格取得にかかる費用の例
項目 | 金額 |
---|---|
入学試験の受験料 | 5万円 |
入学金 | 5万円 |
受講料 | 100万円 |
認定審査の受験料 | 5万円 |
認定料 | 5万円 |
さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。
費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。
また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。
皮膚・排泄ケア認定看護師の仕事内容
皮膚・排泄ケア認定看護師の仕事は、皮膚の健康や快適な排泄のための看護を通じて、患者さんのQOLを維持することです。
具体的には創傷や褥瘡の状態を適切にアセスメントして必要なケアの選択や、予防方法の検討を行います。
また、ほかの看護師にアセスメントの仕方を指導したり、患者さんにセルフケアの仕方を指導することは、認定看護師になると増えるようです。
皮膚・排泄ケア認定看護師は、高度な知識を持って患者さんの観察を行い、症状に応じた適切な判断を行うスキルが求められます。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるメリット
皮膚・排泄ケア認定看護師の資格取得には、次のようなメリットがあります。
1スキルアップにつながる
認定看護師を取得することで、皮膚・排泄ケアの高度な知識と熟練の技術を身に付け、スキルアップをすることができます。
褥瘡や創傷の状態を適切に判断し、必要なケアをより適切なタイミングで提供できるようになるでしょう。
ストーマの使用や症状の悪化具合で発生する患者さんのストレスも確かな知識を持って検討でき、QOLの維持や改善に力を発揮できるようになります。
2キャリアアップにつながる
認定看護師の資格取得により看護知識が増え、対応できる疾患の種類が増えたり、看護ケアのスキルが高まったりと、看護師としてのキャリアアップも期待できます。
皮膚・排泄ケア分野でのキャリアを重ね、マネジメントや指導方法などを学ぶ機会も増えることにより、現場以外にも活躍の場を広げられるでしょう。
皮膚・排泄ケアに役立つそのほかの資格
皮膚・排泄ケア分野でのスキルを高めたい、より良いケアができるようになりたい看護師さんには、次のような資格もおすすめです。
臨床スキンケア看護師
皮膚トラブルに関する専門知識と高いケア技術が身に付く看護師資格です。
皮膚トラブルを抱える患者さんに対して、質の高い予防的ケアとアドバイスを行います。
資格取得に必要な条件
- 講習会の受講
- 皮膚・排泄ケア認定看護師による臨床研修の受講
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会正会員であること
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会に1回以上参加していること
褥瘡認定師
褥瘡の予防やケアについて必要な知識とスキルを持つ看護師に与えられる資格です。
褥瘡に関する専門的な知識を生かして予防や治療、ほかの看護師や患者さんへの指導などを行います。
資格取得に必要な条件
- 日本褥瘡学会の正会員であること
- 一定の年数以上、褥瘡予防・医療に従事していること
- 日本褥瘡学会主催の教育セミナーの受講
まとめ
皮膚・排泄ケア認定看護師は、褥瘡やストーマなど、皮膚に関する看護ケアに携わる看護師です。
皮膚や排泄の健康が保たれていることは、患者さんの身体症状を緩和するだけでなく、患者さんの尊厳を保ち、生活の質(QOL)を高めることにもつながります。
皮膚トラブルの要因を的確に判断し、患者さんに適したケアを行って予防・改善できるようになって、患者さんを支えたいと考える看護師さんにおすすめの資格です。
執筆:看護roo!編集部
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