糖尿病看護認定看護師になるには?役割やメリットも解説

看護師が取りたい資格図鑑「糖尿病看護認定看護師」の記事のMV

 

糖尿病看護認定看護師は、糖尿病患者さんの看護を行うスペシャリストであることを証明する資格です。

 

この記事では、糖尿病看護認定看護師の役割なるための方法試験の内容メリットなどを解説します。

 

 

糖尿病看護認定看護師とは?

糖尿病看護認定看護師とは、糖尿病の患者さんに対して、より専門性の高いケアを実施する認定看護師の資格の一つです。

 

患者さんがより健康的で自分らしい日常生活を送れるよう、血糖コントロールやフットケアなどを行います。

 

2020年からは、それまでの「A課程」と呼ばれる資格取得のカリキュラムに、特定行為研修などを組み込んだ、「B課程」という新たなカリキュラムが設けられました。詳しくはこちらもご覧ください。

 

 

2023年12月時点で、977名が糖尿病看護認定看護師を取得しています。

 

 

糖尿病看護認定看護師の役割

認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

糖尿病看護認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。具体的に解説します。

 

 

糖尿病看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」は、糖尿病患者さんに対して、適切な看護ケアを行うことです。

 

認定看護師の高い臨床推論力と病態判断力に基づいて、患者さんの血糖パターンマネジメントやフットケア、QOLの維持に向けた支援などを実践します。

 

また、患者さんとそのご家族に対して、病状に応じた血糖値改善のための指導の計画・実施を行います。

 

 

糖尿病看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、ほかの看護師へ最適なケアの方法を指導することです。

 

糖尿病患者さんのケアや合併症予防についての院内勉強会後輩看護師へのレクチャーを行い、知識や技能のレベルアップを図ります

 

 

糖尿病看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」は、看護師を含む多職種連携により、患者さんにとって最適な看護の方法を考えることです。

 

患者さんが糖尿病についてしっかりと理解・納得し、適切なセルフケアを自ら行うことができるよう、医師や管理栄養士、ソーシャルワーカーなどとともに、治療の調整や相談を行うこともあります。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるには?

糖尿病看護認定看護師になるには、どういったステップを踏めばいいのでしょうか? ここでは、資格取得の流れや通う学校、試験内容などを解説します。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

認定看護師になるまでの流れを表した図版。実務経験を満たす→教育機関に入学し、カリキュラムを修了→認定審査を受ける→登録を行う

参考:日本看護協会「認定看護師

 

なお、A課程とB課程で学習方法や学習時間が異なりますが、認定を受けるまでの流れは同じです。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるための学校

糖尿病看護認定看護師の学習ができる学校は、2024年4月時点で東京都にある「日本看護協会看護研修学校」1カ所のみとなっています。

 

今後の募集については日本看護協会の分野別教育機関一覧を確認しましょう。

 

なお、入学時に求められている糖尿病看護分野の実務経験については、次の実績や勤務状況であることが望ましいとされています。

 

  • 通算3年以上、糖尿病患者の多い病棟、または外来・在宅ケア領域での看護実績があること
  • インスリン療法を行っている糖尿病患者または糖尿病合併症を持つ患者の看護を、合わせて5例以上担当した実績(外来または在宅ケア領域での療養支援を1例以上含む)があること
  • 現在、糖尿病患者の多い病棟・外来・在宅ケア領域で勤務していること
  • 糖尿病および糖尿病療養支援に関する知識があり、糖尿病教室や公開講座などで患者教育を実施した実績があること

※10例以上の経験があることが望ましい。ただし、教育課程への提出事例は5例でよい
参考:日本看護協会「B課程教育機関 特定看護分野の実務研修内容の基準

 

 

糖尿病看護認定看護師になるための学習内容

教育課程での学習内容は、「共通科目」「専門科目」「演習・実習」に分かれています。

 

共通科目で学ぶのは、臨床病態生理学フィジカルアセスメント、医療安全学やチーム医療論などについてです。

 

専門科目では、「糖尿病の治療法と生活調整・療養支援」「糖尿病患者の理解(ライフステージ)」「フットケア技術」などの教科を学習します。B課程の専門科目には、特定行為研修も含まれます。

 

さらに演習・実習では、少人数に分かれて行う臨地実習などを交えて、これらの知識や技術を身に付けていきます。

 

これを学習時間に置き換えると、1年以内に830時間程度(選択科目は含まない)の教育課程を修了する必要があります。

 

 

糖尿病看護認定看護師の試験内容と難易度

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:都道府県ごとの所定の会場
  • 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年 第32回認定看護師認定審査実施概要」

 

難易度は低くありません。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要です。

 

認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるためにかかる時間と費用

糖尿病看護認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるまでにかかる時間

糖尿病看護認定看護師の資格取得までには、2年近くかかります。

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
4月 入学
4月~7月      e-ラーニングでの授業
8月~10月 集合教育
10月~12月 臨地実習
12月~1月  統合演習
翌年1月~3月 課題学習、修了試験、修了式
10月 認定審査
12月 認定審査の合格発表、認定看護師認定証交付・登録

参考:日本看護協会「2025年度 認定看護師教育課程 特定行為研修を組み込んでいる 教育課程(B課程) 募集要項

 

また、教育機関に通っている間の約1年間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。

 

病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるまでにかかる費用

認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で180万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 7万5000円
受講料 160万円
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

 

さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。

 

費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。

 

 

糖尿病看護認定看護師の仕事内容

糖尿病看護認定看護師の仕事内容について、糖尿病看護で実施する内容に大きな変化はありませんが、より重症度が高く治療が難しい患者さんを担当することが多くなるようです。

 

また、指導する役割も期待されているため、後輩看護師のOJTにおける指導役や院内研修会での講師を任される機会が増えるでしょう。

 

市民の方に対して、糖尿病予防や療養に関する講座を実施することもあります。

 

 

糖尿病看護認定看護師になるメリットとは

糖尿病看護認定看護師になると、次のようなメリットがあります。

 

糖尿病看護認定看護師になるためのメリットを解説した図版。1)血糖コントロールやフットケアについて深く学べる、2)活躍の幅が広がりキャリアアップにつながる

 

血糖コントロールやフットケアについて深く学べる

糖尿病看護認定看護師は、教育課程で、合併症予防などのための血糖コントロールやフットケアについての知識を身に付け実践的なトレーニングを積むことができるのが魅力です。

 

糖尿病では医師だけでなく、患者さんの中にも、糖尿病について熱心に勉強している方がいます。

 

そうした患者さんの疑問や、医師からの質問に、自信をもって回答できるようになるでしょう。

 

 

活躍の幅が広がりキャリアアップにつながる

糖尿病看護認定看護師資格を取ることで、さまざまな役割を経験し、糖尿病のスペシャリストとしてキャリアを積むことができます

 

例えば、院外の講演会や勉強会の企画運営に関わることがあります。部下の指導やマネジメントを任されることもあります。

 

普段の看護業務を超えた、幅広い場面で活躍の場が広がるでしょう。

 

 

まとめ

糖尿病看護認定看護師になると、糖尿病ケアにおいて重要な知識や技術を体系的に身に付けられ、糖尿病患者さんに質の高い看護を行うことができます。

 

糖尿病看護は、長期間かかる上に、患者さんの生活面も含めた幅広い視点と知識が求められるため、糖尿病看護認定看護師を取得する意義は大きくなっています

 

糖尿病の患者さんへのよりよいケアの仕方を模索している人や、スキルアップに関心がある人は、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆:看護roo!編集部

 

 

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