災害支援ナースになるには?役割や活動内容、DMATとの違いなどを解説

災害支援ナース(看護師が取りたい資格図鑑)のページのMV

 

災害支援ナースは、災害発生時に被災した方に必要な看護を届ける役割を持つ看護師のことです。

 

2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震などでも派遣されています。

 

この記事では、災害支援ナースになるために必要な要件のほか、活動内容、DMAT(災害派遣医療チーム)との違いなどを解説します。

 

 

 

災害支援ナースとは?どんな役割?

災害支援ナースとは、大規模な自然災害の被災地新興感染症のまん延地域で、現地の医療機関や福祉施設、避難所などで活動する看護師のことです。

 

災害支援ナースは、被災者が安全かつ健康に生活できるように適切な医療・看護を提供するほか、被災した看護職の心身の負担軽減とサポートを行う役割を持っています。

 

1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに日本看護協会・都道府県看護協会が創設した制度で、約1万人の看護職が災害支援ナースに登録しています(2021年3月現在)。

 

災害の避難所で災害支援ナースの役割を果たすナースのイラスト

 

日頃行っている看護ケアだけでなく、災害・新興感染症に関する知識やスキルを役立てて看護業務にあたるため、「災害看護に興味がある」「看護師としてのスキルを被災地支援や防災に役立てたい」という看護師さんにおすすめです。

 

なお、災害支援ナース制度は2024年度から国の制度に位置付けられました

 

これにより、派遣にかかる費用が公的負担になったり、都道府県から正式に派遣要請がされるようになったりと、災害支援ナースの活動がよりしやすくなっています

 

 

災害支援ナースの活動内容

災害支援ナースは、自然災害発生時新興感染症の発生・まん延時と、それぞれに応じた看護活動を行います。

 

 

自然災害発生時

災害支援ナースは、自然災害発生時には、被災した医療機関や社会福祉施設、福祉避難所などに派遣され、看護業務にあたります。

 

具体的には、手指消毒剤の設置や支援物資の整理、健康相談、被災者の心のケア、救急搬送、避難生活による生活不活発病を予防するための環境整備などを行います。

 

実際に、2024年1月に発生した能登半島地震では、同年1月・2月に約3000名の災害支援ナースが派遣され、避難所となる小学校やスポーツセンターにて、看護業務を行っています。

 

 

被災地での活動時期は、原則として災害発生後の3日以降から1カ月程度が目安です。また、派遣期間は移動時間を含めた3泊4日となります。

 

 

新興感染症発生・まん延時

新興感染症の発生・まん延時には、支援が必要な医療機関や社会福祉施設、宿泊療養施設などで看護業務にあたります。

 

具体的には、感染拡大・重症化の予防のための取り組み、集中治療室内での管理、患者さんやそのご家族への精神的なケアなどを行います。

 

新興感染症のまん延地域での活動時期は、原則として移動期間を含めた2週間程度が目安です。なお、PCR検査などによって通常業務に復帰できるかを確認する期間も派遣期間に含まれます。

 

 

災害支援ナースとDMATの違い

災害発生時に災害支援活動を行う看護職として、「DMAT(災害派遣医療チーム)」があります。両者の違いは以下の通りです。

 

災害支援ナースとDMATの違い

項目 災害支援ナース DMAT
構成員 看護師、保健師、助産師、准看護師 医師、看護師、業務調整員
登録方法 災害支援ナース養成研修の修了 日本DMAT隊員養成研修の修了(筆記・実技試験含む)
派遣時期 災害後3日後から1ヵ月ほど 災害直後
活動内容 避難所等での被災者の看護ケア 災害現場での救助活動、トリアージ等

 

災害支援ナースとDMATとの大きな違いは、派遣時期と派遣先での活動内容にあります。

 

まず、災害支援ナースは、災害発生後3日を目安に派遣要請を受け、その後1カ月ほど活動します。派遣先は避難所や医療機関、福祉施設などで、被災者の健康管理、服薬介助、環境整備などの看護を担います。

 

一方、DMATは、派遣要請を受けてから48時間以内に活動が開始されます。DMATの看護師は、救助現場などに赴き、救助者の看護やトリアージなど、災害急性期に機動性を持った働きを担います。

 

 

災害支援ナースになるには

ここでは、災害支援ナースになるための資格要件や流れ、研修内容について詳しく見ていきます。

 

 

災害支援ナースに登録するための資格要件は?

災害支援ナースに必要な登録要件は看護師の資格があることです。実務経験や特別な資格は必要ありません

 

災害支援ナース養成研修は、原則として個人単位での申し込みはできず、所属する施設の看護管理者・責任者の了承を得る必要があります。

 

なお、訪問看護ステーションなど、医療機関に勤務していない看護師のみ、個人での申し込みが可能です。

 

 

災害支援ナースになるまでの流れ

災害支援ナース養成研修の申し込みから登録までの流れは、以下の通りです。

 

災害支援ナースになるまでを表した図版。

 

なお、災害支援ナースは5年ごとに登録更新が必要です。登録有効期間内に、都道府県看護協会が実施する研修に1回以上参加することで更新できます。

 

 

災害支援ナース養成研修の内容・時間は?

災害支援ナース養成研修の研修プログラムは、20時間の講義(オンデマンド研修)2日間の演習(集合研修)の2構成です。

 

災害支援ナース養成研修のカリキュラム

講義内容 研修時間
A.総論 120分
B.災害各論 540分
C.感染症各論 540分
D.災害・感染症(集合研修) 600分

出典:日本看護協会「災害看護

 

上記の表のうち、A~Cがオンデマンド研修、Dが集合研修となります。研修の受講料は無料です。

 

なお、オンデマンド研修では、一部免除規定があります。対象者と対象科目は以下の通りです。

 

「B.災害各論」の免除

  • 2019年以降、旧制度の災害支援ナースに登録した人
  • 災害看護に関する研修や訓練に毎年参加している人

 

「C.感染症各論」の免除

  • 新型コロナウイルス感染症対応看護職員養成事業の重症患者対応研修を修了している人

参考:日本看護協会「災害看護」

 

 

災害支援ナースになるメリット

看護師が災害支援ナースになるメリットは次の2つです。

 

看護師が終末期ケア専門士を取るメリットをまとめた図版。1スキルアップにつながる、2キャリアアップにつながる

 

1被災地域の復興に貢献できる

災害支援ナースは被災者への看護ケアを通して、被災地域の復興に貢献できます。

 

最近では、大きな災害があった際、被災直後の個人ボランティアは控えたほうが良いといわれています。さらなる混乱や二次災害防止のためです。

 

しかし、災害報道を見て「看護師として何かできることはないか」と、もどかしい思いをする人もいるのではないでしょうか。

 

災害支援ナースは都道府県の要請に基づいて公式に派遣されるため、混乱や二次災害を避けながら、現地の状況に合わせた被災者の支援を迅速に行えます

 

看護師としてのスキルを生かし、被災地域の復興に貢献できる」という点は、「被災地のために何か貢献したい」と考える看護師さんにとって、最大のメリットといえます。
 

 

2やりがいやキャリアアップにつながる

災害支援ナースは、被災地域の支援をすることで、自分の経験や知識・スキルを社会に役立てることができます。このことは、看護師として、「やりがい」を実感できます。

 

また、災害支援ナースは2024年4月よりボランティアではなく、公的な業務として位置づけられました。

 

災害支援ナースになり、実際に派遣の経験を積むことで、災害看護のスペシャリストして専門性も高まり、キャリアアップにもつながるでしょう。

 

 

まとめ

災害大国である日本において、災害支援ナースに対する注目度は高まっています。

 

新制度への移行によってすべての看護師が対象となり、安心して活動できる仕組みに変わったため、実務経験の浅い看護師さんでも挑戦しやすくなりました。

 

災害看護に興味のある看護師さんや災害・感染症に関する知識やスキルを身につけたい看護師さんは、検討してみるのもいいですね。

執筆:看護roo!編集部

 

 

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