最終更新日 2024/09/26

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは・・・

アルツハイマー型認知症(あるつはいまーがたにんちしょう、Alzheimer's dementia)とは認知症の一つで、の神経細胞が次第に減少することで脳全体が萎縮していき、記憶障害や判断力の低下を招く疾患である。

 

アルツハイマー病ともいい、認知症の中でも最も多い。アルツハイマー病は不可逆的な脳実質の変化を伴う進行性疾患である。

 

症状

アルツハイマー型認知症の主な症状は記憶障害である。
この記憶障害は記憶欠損を伴う。すなわち加齢などに伴う物忘れであれば朝食で何を食べたかを忘れるが、アルツハイマー型認知症では朝食を食べたことすら忘れてしまう。

 

また病態失認(病識の欠如)もあるため、自分では記憶障害の認識がなく、家族などに指摘された際に誤魔化したり嘘の説明で穴埋めしたりしようとする。

 

進行すると洞察力が低下し、日常生活を営むのが困難になる。徘徊したり、うつ状態になったりもする。さらに、嗅覚障害、睡眠障害、ミオクローヌス、痙攣なども見られることがある。

 

検査・診断

まず認知症があるかどうかを、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)や、ミニメンタル・ステート検査(MMSE)などの認知機能検査を行い評価する。

 

CTやMRIなどの画像検査では、脳梗塞や脳出血を除外し、脳の萎縮があるかどうかを確認する。
アルツハイマー型認知症では海馬とその周囲の強い萎縮が特徴的である。
一方、若年性アルツハイマー型認知症では海馬の萎縮は少なく、頭頂葉の萎縮が見られる。

 

アルツハイマー型認知症の多くは65歳以上に記憶障害で発症するが、中には65歳よりも早く発症する場合もある。そういった患者では症状も典型的ではなく、当初は仕事のパフォーマンスが悪いために精査を希望して医療機関を受診し、診断される場合もある。

 

治療法

現在のところ、アルツハイマー型認知症の根本的な治療法はない。しかし、進行をある程度遅らせることができる、以下の薬剤が健康保険適用となっている。

 

・脳内で減少しているアセチルコリンを増加させる薬剤
アリセプト®、レミニール®、貼付剤のリバスタッチパッチ®、イクセロンパッチ®

 

・神経細胞を衰えさせない薬
メマリー®

 

・アミロイドβ蛋白除去薬
レカネマブ(レケンビ®点滴静注)
アミロイドβの塊になる直前の状態に作用し、免疫反応でこれを脳から除去していく作用を持つ。上記のようなこれまで使用されていた上記のような薬剤は症状の進行を抑制する効果が見られるが、レカネマブは原因を除去することから、進行抑制薬として期待されている。

 

レカネマブは2023年12月に承認されたばかりの新薬だが、実際に使用されるのは厳密な基準を満たした病院かつ患者のみである。

 

原因

明確な原因は解明されていないが、脳内にアミロイドベータ(Aβ)蛋白やタウ蛋白が貯まることが原因の一つと考えられている。

 

病理学的に、アミロイド班とタウ蛋白による神経原繊維変化が見られ、脳の神経細胞(ニューロン)間の連結が消失していることが確認されている。
それにより、初期は海馬を中心に萎縮が認められるが、後期では広範囲の萎縮が認められるようになる。

執筆: 浅香葉子

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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