巨細胞性動脈炎とは・・・
巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん、giant cell arteritis、GCA)とは、頚動脈の頭蓋外分枝の中型血管に好発する血管炎である。浅側頭動脈や眼動脈などが障害される。特に眼動脈がおかされると失明する可能性がある。時には大動脈や鎖骨下動脈などの大中血管がおかされることもある。(側頭動脈炎(temporal arteritis、TA)とも呼ばれているが、現在は巨細胞性血管炎が正式な病名である。現在のところ、明らかな原因は分かっていない。指定難病の一つである。
好発年齢は50歳以上で、やや女性に多い。
症状
初発症状としては、片側のズキズキとした拍動性頭痛が最も多い。浅側頭動脈に硬結を触知したり圧痛を認めたりすることもある。
その他には発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛などの全身症状や、失明など視力障害がある。中でも、咀嚼時の顎の疲労である下顎跛行が本疾患に特徴的な症状である。
約30~60%にリウマチ性多発筋痛症を併発する。
検査・診断
巨細胞性動脈炎に特異的な検査所見はないが、MRAや3次元CT、FDG-PET(fluorodeoxyglucose-positron emission tomography)を使った画像診断や、視力の低下には眼科検査を行うことがある。
1990年のACR分類基準に則り、以下のうち3項目以上を認める場合に巨細胞性動脈炎と判定する。
・患者の年齢が50歳以上
・新たに出現した頭痛
・側頭動脈の圧痛、または拍動低下
・赤血球沈降速度の亢進(50mm/時間以上)
・側頭動脈生検で単球の浸潤を主体とする血管炎、または多核巨細胞を伴う肉芽腫性血管炎の所見
この分類基準の感度は93.5%、特異度は91.2%と高い。
治療
急性期ではステロイド(プレドニゾロン;PSL)療法を行う。眼症状がある場合には失明などの重篤な合併症を起こす可能性が高いためステロイドパルス療法や、体重1Kg当たり1㎎/日の大量投与を行うが、眼症状や中枢神経症状・脳神経症状のない場合にはPSL30㎎~40㎎/日の投与を行う。治療が奏功すれば1~2年で治癒する人もいれば、慢性経過をたどる人もいると言われている。
しかし、巨細胞性動脈炎は約半数が再燃すると言われているため、注意が必要である。
引用参考文献
1)William P Docken.“Treatment of giant cell arteritis”.Up To Date.