エリクソンの漸成的発達理論とは・・・
エリクソンの漸成的発達理論(えりくそんのぜんせいてきはったつりろん、The Epigenetic Chart in Erikson's Theory、表1)とは、E・H・エリクソンが提唱した、人間の発達を包括的に捉える理論である。
乳児期(出生から1年未満)
乳児期は、乳児自身が信頼できる人(母親または母親的な人)に出会うことで、自分や他者を十分に信頼できるようになる期間である(基本的信頼感)。親の不在や不和、乳児への拒否、虐待、放任などは、乳児の精神機能が正常に発達せず、情緒や行動の問題が発生する(基本的不信感)。
幼児期初期(1歳から3歳)
幼児期初期は、言語の急速な発達に伴い、自ら行動するようになる期間である(自律性)。自分という主体性や自主性の基盤となる。上手くいかないと葛藤が起こる(恥、疑惑)。
幼児期後期(3歳から6歳)
幼児期後期は、自律性が育まれ、自分で考え、行動するようになる期間である(積極性)。また、親の助言や「ごっこ遊び」を通じてや社会性や規範を身につけていく。その間に親からの注意・叱責を受けて不安を引き起こす(罪悪感)。
学童期(6歳から13歳頃)
学童期は、生活の主な場所や時間が保護者(家庭)から学校や同年代へと舞台が移っていく時期である。他者との関わりの中で、自身の得意・不得意を自覚し、積極性を生かしながら目的を達成していく(勤勉性)。一方、失敗や叱責、勝負への敗北を経験する(劣等感)。
青年期(13歳から22歳頃)
青年期は、多くの異なる場面や状況において、自分とは何者か、自分は何になりたいのかについて考える時期である(アイデンティティ(自我同一性)の確立)。その過程で、自分が何者かが分からず悩む(役割の拡散・混乱)。
成人期(22歳から40歳頃)
成人期は、職場や家庭など現実的な役割を担い、責任を負うようになる期間である。さらに同性や異性との関係を重要視する(親密性)。親密性を獲得していくためには、アイデンティティを獲得されていなければならず、相手に受け入れられないと後ろ向きな感情が生まれる(孤独感)。
壮年期(40歳から65歳頃)
壮年期は、職業上の知識や技術、子育ての知識や技術を次の世代に伝達する期間である(世代性)。次世代への関心の薄さや関わりがない場合、他者と関わり合いがなくなるため、自己満足や自己陶酔に陥りやすい(停滞)。
老年期(65歳以上)
老年期は、死に対する意識が高まり、人生を回顧する時期である。大きな世の中や人類の秩序や意味の伝承と、自分自身の人生を回顧して受け入れることが課題となる(自我の統合)。「死」を受け入られないと、さまざまな衰えに対しての恐怖などを抱く(絶望)。
引用参考文献
1)武蔵浦和メンタルクリニック.“ライフサイクルについて”