肺炎球菌ワクチンとは・・・
肺炎球菌ワクチン(はいえんきゅうきんわくちん)は、肺炎球菌による感染症の予防や重症化防止を目的として投与されるワクチンである
肺炎球菌は、肺炎や髄膜炎、中耳炎などの感染症を引き起こすグラム陽性双球菌である。少なくとも90種類以上の血清型が存在することがわかっている。
2017年10月現在、日本で使用されている肺炎球菌ワクチンには、「23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)」である「ニューモバックス®NP」と「13価肺炎球菌結合ワクチン(PCV13)」である「プレベナー13®」がある。一般的に、PPSV23は対象となる血清型が多いが、PCV13の方がT細胞にも認識されるため効果が高いとされる。
日本での接種状況
日本では、2014年に65歳以上に対してPPSV23が定期接種化された。また、2014年よりPCV13が65歳以上に対する予防として任意接種が可能となった。
小児に対しては2011年より「7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)」に対して公費助成が開始され、2013年より多い血清型に対応したPCV13が使用可能となり、切り替えられた。
2017年10月現在、PPSV23の定期接種の対象となる成人は、(1) 65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の高齢者、(2) 60歳から65歳未満で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある者、(3) 60歳から65歳未満で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある者、となっている。PCV13の定期接種の対象となるのは5歳までの小児で、年齢により接種回数が異なる。
なお、ニューモバックス®NPの添付文書上の対象としては、2 歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い個人および患者となっている。プレベナー13®の添付文書上の対象としては、高齢者と小児となっている。
接種効果
成人に対する効果に関して、2013年にコクラン共同計画から発表された成人を対象としたメタ解析では、PPSV23は侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果と低所得国における肺炎発生予防を認めたものの、高所得国における肺炎発生予防や慢性疾患を有する成人の肺炎予防、死亡率減少は認めなかった。
問題点・課題
肺炎球菌ワクチンは、下記のような問題点や課題が指摘されている。
・成人の肺炎や死亡率に対する予防効果が不明確
・ワクチンがカバーしていない血清型の感染の増加
・ワクチン再投与の公費助成がない
・成人におけるPCV13の位置づけが日本においては不明瞭