最終更新日 2018/02/21

急性前骨髄球性白血病

急性前骨髄球性白血病とは・・・

急性前骨髄球性白血病(きゅうせいぜんこつずいきゅうせいはっけつびょう、acute promyelocytic leukemia〈APL〉)は急性骨髄性白血病(AML)の一種であり、AMLの約10%を占める。

 

急性白血病の病型分類(FAB分類)ではM3である。特徴的な染色体転座t(15;17)(q22;q12)を認め、PML-RARA融合遺伝子が形成される。PML-RARAが形成されることにより、血球分化が前骨髄球の段階で停止する。

 

臨床所見

急性白血病に共通する発熱・貧血出血傾向・正常白血球減少による易感染性のほかに、線維素溶解亢進による播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation〈DIC〉)を合併しやすい特徴がある。診断から治療早期に重篤な出血症状を合併しやすいので注意する。

 

検査所見

末梢血では汎血球減少を示す例が多い。
確定診断のためには骨髄穿刺を行い、白血病細胞の細胞形態検査や表面抗原分析、染色体分析やPML-RARA融合遺伝子の検査を行う。白血病細胞はペルオキシダーゼ染色陽性である。

 

ライト-ギムザ染色では、細胞質内に粗大な青染性顆粒(アズール顆粒)を認め、アズール顆粒が融合した針状のアウエル小体が認められることもある。APLの10%程度では細胞質の顆粒が少なく形態学的には他のAMLとの鑑別が難しい。細胞表面抗原ではCD13およびCD33陽性、CD34およびHLA-DRは陰性で、他のAMLに比べ細胞分化が進んでいることを反映している。

 

DICの合併が多く、FDP(フィブリンフィブリノゲン分解産物)、D-ダイマーの増加、フィブリノゲンの減少、プロトロンビン時間比の増加を認める。

 

治療

APLの治療では、全トランス型レチノイン酸(all trans retinoic acid;ATRA)による分化誘導療法が重要な役割を持つ。診断時末梢血白血球数およびAPL細胞数が少ない症例ではATRA単独、それ以外の症例ではATRAに抗腫瘍薬を加えた寛解導入療法を行う。寛解導入療法時にはDICの治療を併行して行う。

 

ATRAにより白血病細胞が分化することで、APL分化症候群(低酸素血症や血圧低下、体重増加、胸水・心嚢水貯留など)を認めることがある。寛解に導入されたらAMLと同様の多剤併用を2~3コース行った後、約2年間ATRAによる維持療法を行う。

 

70歳未満を対象とした日本の治療成績は、寛解導入率約90%、10年無病生存率約70%と良好なため、再発・難治例を除き造血幹細胞移植の適応はない。再発例に対しては亜ヒ酸による治療も行われる。

執筆: 梶原道子

東京医科歯科大学医学部附属病院  輸血・細胞治療センター 副センター長/講師

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