最終更新日 2019/09/02

偽膜性大腸炎

偽膜性大腸炎とは・・・

偽膜性大腸炎(ぎまくせいだいちょうえん、pseudomembranous colitis)とは、大腸にクロストリディオイデス・ディフィシル(旧名:クロストリジウム・ディフィシル)が異常に増殖し、大腸粘膜に炎症を起こす疾患のことである。抗菌薬の服用によって引き起こされる抗菌薬起因性腸炎の一つである。

 

抗菌薬服用によって正常な腸内細菌叢が破壊され、菌交代現象が起こる。それに伴って大腸内で増殖したクロストリディオイデス・ディフィシルの産生する毒素に大腸の粘膜が障害されて発症する。この菌は胃酸に強く、口から容易に腸に到達してしまうため、偽膜性大腸炎は院内感染の中で最も頻度が高い疾患とも考えられている1)

 

好発部位は直腸からS 状結腸であるが、ときに小腸にも見られることがある(偽膜性全腸炎)。

 

主に高齢者や重い基礎疾患(白血病腎不全がんなど)を持つ患者に好発するとされている。

 

症状

主な症状は以下の通りである。
腹痛
・頻繁な下痢(水様性下痢)
・粘性のある便
血便
・発熱
吐き気
これらの症状は、抗菌薬の服用後、数日~数週間後に見られることが多い。

 

検査・診断

抗菌薬投与中に高熱、白血球の増加に加え、腹痛、下痢、血便など腸炎症状を伴えば、偽膜性大腸炎を疑い、検査と診断を進める。検査方法はCDトキシン検査、内視鏡検査血液検査などが一般的である2)3)

 

内視鏡検査では大腸の壁に小さな円形の膜(偽膜)を認める。直腸からS状結腸にかけての大腸粘膜に、黄白色の偽膜が多発しているか確認する。ときに小腸にも広がっていたり、深部大腸にのみ偽膜が確認されたりすることがある。内視鏡検査で90%の確立で偽膜性大腸炎を診断することができるとされている1)2)

 

また、便中にクロストリディオイデス・ディフィシルの毒素が検出されるかどうかを検査する。

 

血液検査では、白血球数やC反応性蛋白(CRP)の上昇を認める。

 

治療

できるかぎり原因となっている抗菌薬の中止が望ましいが、患者の全身状態を評価した上で判断する必要がある。抗菌薬の中止が難しい場合は、偽膜性大腸炎を生じにくい抗菌薬(クロストリディオイデス・ディフィシルに有効な抗菌薬)へ切り替えて投与する。

加えて、クロストリディオイデス・ディフィシルの除菌を目的として、抗菌薬であるバンコマイシンの経口投与を行う1)

また、輸液を行うなどで下痢による脱水を予防することも治療においては重要である。

【予防】

 

正の選択

患者に対して慎重な抗菌薬の選択が重要である4)。偽膜性大腸炎は治療しても再発することがあるため、再発の予防が重要である。

 

引用参考文献
1)“重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎”厚生労働省.
2)“医学用語 解説集 偽膜性大腸炎”日本救急医学会.
3)山本雅一監. 全部見える消化器疾患(スーパービジュアルシリーズ).成美堂出版,2013, 303p.(ISBN9784415315102)
4)伊藤正男ほか編.医学大辞典,第2版,医学書院,2010,3560p.(ISBN9784260005821)

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