ゲムシタビン+シスプラチン療法(化学療法のポイント)/胆道がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、胆道がん(胆道癌)の患者さんに使用する抗がん剤「ゲムシタビン+シスプラチン療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『ゲムシタビン+シスプラチン療法(看護・ケアのポイント)/胆道がん』
堀口 繁
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
- ポイントA:大量輸液や尿量測定の必要はありませんが、経口での十分な飲水を促しましょう。
- ポイントB:投与量にかかわらず、シスプラチンを繰り返し投与すると腎障害、聴覚障害、末梢神経障害をきたします。投与中の患者さんは症状の確認が、投与前の患者さんには説明が必要です。
- ポイントC:投与時間は短いですが、投与スケジュールが複雑なため、患者さんにスケジュールを理解いただくことと、確認が必要です。
〈目次〉
- ゲムシタビン+シスプラチン療法は膵がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤
- ゲムシタビン+シスプラチン療法のレジメン
- ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤の投与方法
- ゲムシタビン+シスプラチン療法の代表的な副作用
- ゲムシタビン+シスプラチン療法の治療成績
ゲムシタビン+シスプラチン療法は胆道がんの患者さんに行う抗がん剤治療
ゲムシタビン+シスプラチン療法は、ゲムシタビン(ジェムザール)とシスプラチン(ランダ)を組み合わせた治療法です。以前のゲムシタビン(ジェムザール)だけの治療に比べて、寿命と病気が大きくなるまでの期間の両方が延長する結果であったので、現在はこの治療法が広く普及しています。
大量のシスプラチン(ランダ)を使う治療法の場合、大量の輸液を行って尿量を管理しないといけませんが、この治療ではシスプラチン(ランダ)の1回あたりの投与量が少ないため、大量の輸液や尿量の測定は必要ありません。
また、1回の投与量が少なくても、シスプラチン(ランダ)は繰り返し投与することで、腎障害、聴覚障害、末梢神経障害をきたします。投与歴のある患者さんには症状の確認を、これから投与する患者さんにはあらかじめ説明が必要です。
ゲムシタビン+シスプラチン療法のポイントA
- 大量輸液や尿量測定の必要はありませんが、経口での十分な飲水を促しましょう。
ゲムシタビン+シスプラチン療法のポイントB
- 投与量にかかわらず、シスプラチンを繰り返し投与すると腎障害、聴覚障害、末梢神経障害をきたします。投与中の患者さんは症状の確認が、投与前の患者さんには説明が必要です。
ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤
ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤
ゲムシタビン+シスプラチン療法のレジメン
1、8日目(Day 1、8)に、シスプラチン(ランダ)とゲムシタビン(ジェムザール)を投与します。2~7、9~21日目は休薬します(表2)。
表2ゲムシタビン+シスプラチン療法のレジメン
これを1コースとして、1コース投与後は3週間ごとに同様のものを投与し、これを繰り返します。つまり、2コース目は、22日目から始まります。
ゲムシタビン+シスプラチン療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3ゲムシタビン+シスプラチン療法の投与方法
ゲムシタビン(ジェムザール)は、30分を超えて投与すると有害事象が増えるので、30分での投与は厳密に行いましょう。
ゲムシタビン+シスプラチン療法は、1回の投与時間は約3時間と比較的短い時間ですが、1日目、8日目に投与を行い、15日目は休薬します。1クールが21日と覚えにくいスケジュールのため、患者さんの日程に対する理解の確認が必要です。
ゲムシタビン+シスプラチン療法のポイントC
- 投与時間は短いですが、投与スケジュールが複雑なため、患者さんにスケジュールを理解いただくことと、確認が必要です。
ゲムシタビン+シスプラチン療法の代表的な副作用
ゲムシタビン+シスプラチン療法の代表的な副作用は、アレルギー、嘔気や嘔吐、骨髄抑制(特に白血球、好中球減少)、聴覚障害、腎障害、末梢神経障害、間質性肺炎などがあります。
シスプラチン(ランダ)は、回数を重ねると体内に蓄積して腎障害、聴覚障害、神経障害をきたします。投与前後には水分の経口摂取を促すとともに、投与ごとに聴力や手のしびれについて患者さんに聞くようにしましょう。
急に起こる副作用は、アレルギー、嘔気、嘔吐があります。
遅れて起こる副作用は、聴覚障害、腎障害、末梢神経障害、間質性肺炎(まれ)などがあります。
ゲムシタビン+シスプラチン療法の治療成績
手術ができない胆道がん患者さんを対象にした海外の臨床試験では、病気が小さくなる、または現状維持できる患者さんの割合は81.4%でした。従来の標準治療であったゲムシタビン(ジェムザール)単剤と比べると、余命も延長されました(約12か月 vs 約8か月)1)。
同様の患者さんを対象にした国内の試験では、病気が小さくなる、または現状維持できる患者さんの割合は約70%でした。余命も従来よりも延長されました(約11か月 vs 約8か月)2)。
- 第2話:『ゲムシタビン+シスプラチン療法(看護・ケアのポイント)/胆道がん』
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[文 献]
- (1)Juan V, Harpreet W, Daniel H, et al. Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer. N Engl J Med 2010; 362: 1273-81. (2017/5/16アクセス)
- (2)Okusaka T, Nakachi K, Fukutomi A, et al. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with biliary tract cancer: a comparative multicenter study in Japan. British Journal of Cancer 2010; 103: 469-74. (2017/5/16アクセス)
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
堀口 繁
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。