FASTのエコー像(右胸腔、左胸腔)

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。

 

[前回の内容]

FASTのエコー像(心嚢腔)

 

今回は、「FASTのエコー像(右胸腔、左胸腔)」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)

 

FAST陽性の画像がどんな感じか、だいたいわかりましたか?

 

少しですが、ここに液体があるかなっていうのが、想像できるようになりました。
やっぱり色々な画像を見て、慣れていくのが一番ですね。

 

慌てる必要はないので、一歩ずつ進んでいきましょう。
今回は、右胸腔、左胸腔のエコー像です。

 

〈目次〉

 

FASTのエコー像(右胸腔、左胸腔)

患者さんに外傷がある場合、出血の有無を確認するために必須の検査であるFAST。ここでは、右胸腔と左胸腔のエコー像を紹介します(図1)。

 

図1胸腔のエコー検査を行う際にプローブを当てる位置

 

胸腔のエコー検査を行う際にプローブを当てる位置

 

左右の肺の位置にプローブを当てます。

 

右胸腔に行うFAST

右胸腔は、右肺の辺りの場所です。ここに、液体が溜まっている(貯留)かどうかを確認します。

 

図2は、右胸腔に液体が溜まっていない患者さんのエコー像です。肺が空気で満たされているため、エコーが空気に反射して、肺の境界がぼやけて見えます。

 

図2右胸腔に液体がないエコー像

 

右胸腔に液体がないエコー像

 

液体の貯留は見られません。
肺が空気で満たされているため、肺の境界がぼやけています。

 

次に、図3は、右胸腔に液体が溜まっている患者さんのエコー像です。図2と違って、肺と肝臓との境界がはっきりと見えます。

 

図3右胸腔に液体があるエコー像

 

右胸腔に液体があるエコー像

 

胸腔が液体(胸水)で満たされているため、肝臓との境界がはっきり見えます。
また、横隔膜はエコーにはっきりと映ります。

 

図2図3のエコー像では、肺は描出されず黒く見えます。

 

胸腔に液体が見られると、肺の動きが制限されることがあり、注意が必要です。また、その液体が血液であった場合(血胸)は、止血処置が必要になります。

 

左胸腔に行うFAST

左胸腔は、左肺の辺りの場所です。ここに、液体が溜まっている(貯留)かどうかを確認します。

 

図4は、左胸腔に液体が溜まっていない患者さんのエコー像です。肺が空気で満たされているため、エコーが空気に反射して、肺の境界がぼやけて見えます。

 

図4左胸腔に液体がないエコー像

 

左胸腔に液体がないエコー像

 

液体の貯留は見られません。肺の境界がぼやけています。
また、横隔膜がはっきりと映っています。

 

次に、図5は、左胸腔に液体が溜まっている患者さんのエコー像です。肺が虚脱しており、肺の周りに液体が溜まっています。

 

図5左胸腔に液体があるエコー像

 

左胸腔に液体があるエコー像

 

胸腔が液体(胸水)で満たされています。

 

図4図5のエコー像では、肺は描出されず黒く見えます。

 

胸腔に液体が見られると、肺の動きが制限されることがあるので注意しましょう。

 

* * *

 

エコー検査の準備や、申し送り時のポイント、記録記入時のポイントは、『FASTのエコー像(心嚢腔)』と同様です。そちらの解説を参考にしてください。

 

 

Check Point

  • FASTでは、右胸腔に胸水があるか、左胸腔に胸水があるかを探しています。FAST陽性の場合は緊急の処置が行われます。
  • 胸腔内の液体が血液の場合(血胸)、止血処置が必要になります。

 

次回は、モリソン窩に行うFASTのエコー写真を紹介します。
どんな画像が見えているのか、確認してください。

 

[次回]

FASTのエコー像(モリソン窩)

 

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科

 


Illustration:田中博志

 


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