FASTのエコー像(モリソン窩)
画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
[前回の内容]
今回は、「FASTのエコー像(モリソン窩)」についてのお話です。
加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)
FASTで調べる場所も、今回で3箇所目ですね。
今回はモリソン窩という場所に、エコーを当てます。
モリソン? ・・・窩?
いったい、どこにある場所ですか?
あまり聞き慣れない言葉ですし、馴染みがないかもしれませんね。
良い機会なので、詳しく解説しますので、ここで覚えてください。
〈目次〉
FASTのエコー像(モリソン窩)
FASTは、患者さんに外傷がある場合に出血の有無を確認するためのエコー検査です。命にかかわることもあるので、外傷患者さんには必須の検査です。ここでは、モリソン窩のエコー像を紹介します(図1)。
図1モリソン窩のエコー検査を行う際にプローブを当てる位置
モリソン窩に行うFAST
モリソン窩は、十二指腸と右腎臓の間の辺りの場所です。ここに、液体が貯留しているかどうかを確認します。
図2は、モリソン窩に液体が溜まっていない患者さんのエコー像です。
図2モリソン窩に液体がないエコー像
図3は、モリソン窩に液体が溜まっている患者さんのエコー像です。
図3モリソン窩に液体があるエコー像
モリソン窩に液体が見られると、非常に危険な状態になっている可能性があるため、緊急止血術が必要となります。腹腔内で出血すると、多くの場合、周囲に圧迫されるものがないため、自然には出血が止まりません。このため、緊急処置を行います。
一般的に、腹腔内に液体がある場合は、ヒトが仰向けに寝た場合、最も低い位置になるモリソン窩や、この後、解説する、脾臓周囲、ダグラス窩の3つの部位のいずれかに貯留していることが多いです。
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エコー検査の準備や、申し送り時のポイント、記録記入時のポイントは、『FASTのエコー像(心嚢腔)』と同様です。そちらの解説を参考にしてください。
Check Point
- FASTでは、モリソン窩に腹水があるかを探しています。FAST陽性の場合は緊急の処置が行われます。
- モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩は、ヒトが仰向けに寝た場合、最も低い位置になります。これら3つの部位には、周囲に圧迫されるものがないため、出血しても自然には止まりません。
- モリソン窩で出血が見られた場合は、緊急止血術が必要になります。
次回は、脾臓周囲に行うFASTのエコー像を紹介します。
どんな画像が見えているのか、確認してください。
[次回]
- FASTで外傷患者の緊急処置の必要性を判断
- FASTのエコー像(心嚢腔)
- FASTのエコー像(右胸腔、左胸腔)
- FASTのエコー像(ダグラス窩)
- ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る
[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科
Illustration:田中博志