リンパ液の働き|循環
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、リンパ液の働きについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
リンパ管
動脈系、静脈系、リンパ系を脈管系という。
リンパ管は、静脈とよく似た構造をもち、ところどころに弁(図1)がある。
リンパ管は、毛細血管と同じく、1層の内皮細胞からできており、周囲の結合組織と線維で固定されている。リンパ系は、全身の組織の間隙にあって、間質液の一部をたえず血液循環系内に運ぶ役割をもつ。
微小循環では、毛細血管の動脈端から組織間隙に出た水分の大部分は静脈端で血漿に戻るが、一部は毛細リンパ管に入る。毛細リンパ管の細孔は大きく、タンパク質を自由に通すので、間隙に濾出した少量のアルブミンなどの血漿タンパクは、毛細リンパ管経由で血漿に戻る。
リンパ液・リンパ球
リンパ液の組成は、細胞外液の組成に等しい。リンパ液は淡黄色をしており、多数のリンパ球を含んでいる。少量の線維素原(フィブリノゲン)があるので、体外に出ると凝固する。
リンパ球は、血管内とリンパ管内を自由に移動し、免疫担当細胞として、細胞性免疫と液性免疫を行っている白血球の一種である(リンパ球参照)。
リンパの流れは、毛細リンパ管に始まり、集合リンパ管→主リンパ管を経て、左右の内頚鎖骨下静脈の接合部で静脈に流入する(図2)。
リンパ節の役割
集合・主リンパ管のところどころに網状内皮細胞からなるリンパ節 lymph node (リンパ腺ともよばれる)が存在する(図3)。
その主な機能は、①リンパ液に入った細菌や異物を濾過、貪食、除去するなどフィルターの役目を果たす、②リンパ組織があり、免疫に関与するγ-グロブリンをつくり全身に送るの2つである。
怪我をしたり、病気にかかるとリンパ腺が腫れ発赤する(リンパ節炎)。これはそのリンパ節で細菌や異物との戦いが繰り広げられた証拠で、この残骸がたまった結果である。
リンパ流量は、筋肉運動のとき急激に増加するが、安静時の流量は全身で1時間に約120mL程度であり、心拍出量の1/3000程度である。しかし、リンパ管が閉塞すると間質液のタンパク質が排出されなくなり、間質液のコロイド浸透圧が高くなり浮腫が生ずる。
浮腫
血漿中の水分が血管から出て、間質液が過剰になっている状態を浮腫 edema という。浮腫の原因としては、①血漿タンパク質含有量の低下、②毛細血管内圧の上昇、③間質液タンパク質の増加、④リンパ管の閉塞、などがある。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版