呼吸器系の構造|呼吸
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、呼吸器系の構造について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
- 気管支は23回分岐を繰り返して約840万本という膨大な数の肺胞嚢になる。
- 肺胞嚢には数十個の肺胞が付き、肺全体の肺胞の数は約3億個にもなる。
- 肺胞を直径約300μmの球とみなすと、肺胞全体の表面積は約85m2になる。
〈目次〉
呼吸と呼吸器系
ヒトが活動するにはエネルギーが必要である。このエネルギーは摂取した食物を体内で酸化することによって産生されるが、このために外界から酸素(O2)を取り込み、不要となった二酸化炭素(CO2)を排出する(ガス交換)。このガス交換を呼吸といい、呼吸を行う器官系を呼吸器系という。
外界から空気を取り込み、ガス交換の場である肺までの経路を気道 airway という。
気道の構造
気道は、口腔 oral cavity、鼻腔 nasal cavity、副鼻腔 paranasal sinuses、咽頭 pharynx、気管 trachea および気管支 bronchus (主気管支 main bronchus から終末細気管支 terminal bronchiole まで)で構成されている。
気管支のうちで、呼吸細気管支 respiratory bronchioles 以下は肺実質に含まれる。
気管および気管支は、多数の馬蹄(U字)形の軟骨からなり、輪状靱帯という結合組織によってつながっている。後壁には軟骨がなく、平滑筋 smooth muscle を含む膜性壁になっている。
肺実質と肺間質
呼吸細気管支 respiratory bronchioles、肺胞道、肺胞嚢および肺胞 alveolus の各内腔を気腔といい、これに肺胞上皮細胞 alveolar epithelial cell を加えたものを肺実質という。肺実質の疾患としては、肺胞性肺炎、肺気腫 pulmonary emphysema などがある。
肺実質に対して、肺胞および気管支細動静脈周囲の結合組織を間質という。間質の疾患としては、間質性肺炎 interstitial pneumonia などがある。
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心臓がやや左寄りに位置しているため、左肺より右肺のほうが大きい。構造上も、右肺には上葉、中葉、下葉の3葉 lobe があるのに対し、左肺は上葉および下葉の2葉である。また、気管支の分岐に対応して、右肺は10区域、左肺は9区域に区分される。気管が1回分岐した主気管支も、右側のほうが左側よりも太い。
中心線に対する主気管支の分岐角度は右が約23度、左が約46度である。右のほうがより垂直に近い角度で肺に入っているため、誤嚥による気道異物は右肺に入りやすい。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版