呼吸筋の働き|呼吸
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、呼吸筋の働きについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
- 1. 呼吸筋(横隔膜および外肋間筋)の働きで胸郭が広がることにより、胸腔内圧が下がり空気が肺の中に入る(吸息)。
- 2. 呼吸筋が弛緩すると、肺は自然に収縮する(呼息)。
- 3. 深呼吸のように大きく呼出する場合には、内肋間筋で肺を縮めなければならない。
- 4. 安静時の吸息の約70%は横隔膜の収縮によって起こる(腹式呼吸)。
- 5. 安静時の吸息の約30%は外肋間筋の収縮によって起こる(胸式呼吸)。
〈目次〉
主な呼吸筋
肺はガス交換の場であるが(より具体的には、肺胞でガス交換が行われる)、肺自体が動いて呼吸運動をしているわけではない。肺が納まっている胸腔が運動することにより、吸気・呼気が行われる。この胸腔の運動に関係するのが呼吸筋(respiratory muscle)である。
主な呼吸筋は、横隔膜(diaphragm)と肋間筋(intercostalis muscle)である。
横隔膜は胸腔(thoracic cavity)の下端にあるドーム状の骨格筋(skeletal muscle)で、脊髄神経(spinal nerve)である頸神経叢(cervical nerves)から出る横隔神経(phrenic nerve)に支配される。横隔膜が収縮すると胸郭が広がり、胸腔内圧(intrapleural pressure)が下がるので吸気が行える。
肋間筋は肋間にある3層の薄い筋で、内肋間筋(internal-intercostalis muscle)、外肋間筋(external - intercostalis muscle)および最内肋間筋(intermost-intercostalis muscle)からなる。外肋間筋は吸気時、内肋間筋および最内肋間筋は呼気時に、それぞれ肋間神経(intercostalnerves)の働きで収縮する(図1)。
図1呼吸筋の働き
呼吸筋は随意筋
横隔膜も肋間筋も、骨格筋で運動神経(motor nerves)の支配を受け、随意的に収縮させられる随意筋 (voluntary muscle)である。そのため、呼吸を一時的に止めたり、大きくしたりすることができる。
呼吸筋、外肛門括約筋(external anal sphincter)および外尿道括約筋(outer urethral sphincter)は横紋筋 (striated muscle)である。
心筋も内臓筋としては例外的に横紋筋であるが、自律神経(autonomic nerves)支配なので、不随意筋(involuntary muscle)である。
肋間筋
外肋間筋が収縮し肋骨(rib)が引き上げられると、胸郭(thorax)が広がり胸腔内圧が下がるので、吸気が行える。内肋間筋が収縮すると、肋骨が引き下げられて胸郭が狭まるので、呼気が行える。ただし、安静呼吸では内肋間筋が収縮せずに、外肋間筋や横隔膜が弛緩するだけで呼気が行える。安静呼気位以上に呼出するときに内肋間筋が収縮する。
腹式呼吸と胸式呼吸
肺は、胸郭という入れ物に入った風船にたとえることができる。肺は風船のように常にしぼもうとする性質があり、膨らませるためには「仕事」が必要である。その仕事をするのが、横隔膜や外肋間筋という呼吸筋である。
吸息の約70%は横隔膜の収縮によって起こり、これを腹式呼吸(abdominal breathing)という。残りの30%は外肋間筋の収縮によるもので、胸式呼吸(costal breathing)という。
※編集部注※
当記事は、2016年8月21日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版