血液型(1)|血液と生体防御
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、血液型についての解説の1回目です。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
はじめに
血液凝固が起こらないように処理した2人の血液を混合すると、赤血球が凝集(赤血球の凝集)する場合と、しない場合がある。凝集するのは、赤血球の膜上には凝集原 agglutinogen (抗原に相当)が、血漿中には凝集素 agglutinin (抗体に相当)があるからで、凝集は抗原抗体反応の結果である。
免疫の場合は、ある病原体など(抗原)に感染して初めて抗体産生が始まるが(したがって初回の感染では抗原抗体反応は起こらない)、血液の場合、すでに血漿中に抗体をもっているので、ただちに抗原抗体反応(凝集反応)が起こる。血液型はABO式、Rh式、MN式に分類されるが、ABO式が最も基本的である。
ABO式血液型
ABO式は、A、B、AB、Oの4つの型に区別される。赤血球の膜に凝集原AとB、血漿に凝集素抗A抗体(あるいはα)と抗B抗体(あるいはβ)がある。Aと抗A(α)、Bと抗B(β)の組み合わせになったとき凝集反応を起こす(表1)。
赤血球膜上に凝集原A、凝集素抗B(β)をもつ血液型をA型、凝集原B、凝集素抗A(α)をもつ血液型をB型、凝集原AとBをもつが、凝集素をもたない血液型をAB型、凝集原をもたないが、凝集素抗A(α)と抗B(β)をもつ血液型をまたO型という(表2)。
ABO式の遺伝はメンデルの法則に従うので、親子鑑定によく利用される。日本人の場合、O型が約30%、A型約40%、B型約20%、AB型約10%の割合で、欧米人ではO型人口が多いといわれている。
輸血と交叉適合試験
O型は万能供血者、AB型は万能受血者とよばれる。しかし、O型輸血や同型輸血でもABO式以外の因子で凝集反応を起こすことがある。
このため、まず輸血する際には、供血者の血液型が受血者のそれと同じであることを確認し、さらに同じ型であってもABO式以外の因子によって凝集することもあるので、必ず交叉適合試験(クロスマッチテスト)を行う。現在よほどのことがないかぎり、他の型へのO型輸血は行われない。
交叉適合試験
供血者、受血者の血液に血液凝固抑制剤を加え凝固しないようにしたうえで、遠心し赤血球と血漿に分ける。供血者の赤血球と受血者の血漿を等量ずつ混合する(オモテ試験)。一方、供給者の血漿と受血者の赤血球を等量ずつ混合して(ウラ試験)、いずれの場合も凝集しないことを確かめる。
成分輸血
疾患や症状によっては血液の全成分が必要になるとはかぎらない。そこで採血した血液を成分ごとに分け、ある患者には赤血球だけ、ある患者には血小板だけというように輸血することが多い。これを成分輸血という。
一般に、手術や外傷などの出血に対しては、赤血球の輸血だけで十分とされている。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版