血液型(2)|Rh式血液型
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、血液型についての解説の2回目です。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師
Summary
- 1. 血液型不適合が起こる他の血液型としてRh式がある。
- 2. Rh(-)型の人が Rh(+)型の輸血を受けると、Rh(-)型の人に抗体の産生が始まる。この人はRh(+)型に対する抗体をもっているので、再びRh(+)型の輸血を受けると、凝集反応を起こす。
- 3. Rh(-)型の女性とRh(+)型の男性との間にできた胎児はRh(+)型となる。Rh(+)型の胎児とRh(-)型の母体の間でも輸血の際と同じことが起こる。
〈目次〉
Rh式血液型
Rh式血液型は、ABO式とならんで臨床的に重要である。Rh式は、初めアカゲザル(rhesus monkey)の血液で研究されていたので、Rh因子(Rh抗原)とよばれるようになった。
Rh式は基本的には C、DとEなど6種類の抗原をもつが、このなかでD抗原が最も強い抗原性をもつ。そこで赤血球膜がD抗原をもつ場合をRh陽性(+)、もたない場合をRh陰性(-)とよぶ。Rh(-)の割合は日本人では少なく約0.5%だが、白色人種では約15%といわれている。
Rh(-)の人は、抗D抗体をもっていない。Rh(-)の女性と Rh(+)の男性の間にできた胎児は Rh(+)になる。Rh(-)の妊婦が初回妊娠で Rh(+)の胎児を分娩すると、胎児のD抗原が母体内に流入する。初回感作時には作られるIgM(5量体)は分子量が大きく胎盤を通過しないため、胎児の体内で抗原抗体反応は起こらない。
しかし、初回分娩時に抗体産生細胞が抗原を記憶するため、第2子の妊娠時に胎児のD抗原に対して抗D抗体(IgG)がすみやかに産生される。IgG(単量体)は胎盤を通過するため、胎児貧血や新生児溶血性疾患を引き起こす(図1)。
図1Rh式血液型不適合における抗体の産生
このような状態で生まれた児に対し、従来は交換輸血が行われていたが、今では免疫グロブリン療法によって Rh不適合による流産は少なくなっている。
免疫グロブリン療法とは、Rh(-)型の母親が、Rh(+)の児を分娩した後、72時間以内に抗Dヒト免疫グロブリン投与を受けることにより、抗体が産生されなくなるようにするものである。現在では、母体への抗Dヒト免疫グロブリンの予防投与により、Rh式血液型不適合妊娠を原因とする新生児溶血性疾患は減少している。
一方、ABO式血液型不適合妊娠(母親がO型で、胎児がA型もしくはB型の場合)ではもともと体内に存在する凝集素が原因となるため、初回妊娠・分娩から発生することが多い。
しかし、Rh式血液型不適合妊娠よりも胎児の貧血の程度は軽く、ほとんどは無症状である。出生後も溶血性疾患の程度は軽いことが多く、ほとんどが光線療法で治療できる。
白血球の型
ヒトの白血球の抗原を HLA(human leukocyte antigen)という。100種類以上が知られているが、HLAは白血球ばかりでなく、ほとんどの細胞に存在し、臓器移植の際の拒絶反応において重要な役割を演じている。
白血病は、白血球ががん化した疾患で、さまざまな種類がある。末梢血中の白血球数は増えることが多いが、減少する場合もあり、必ずしも増加するとはかぎらない。
※編集部注※
当記事は、2016年7月15日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版