小児の鼻腔・咽頭培養の目的と手順
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室
鼻腔・咽頭より粘膜を採取して培養し、呼吸器感染症の病原菌の有無を検出する。
鼻 腔・咽頭培養の目的
●呼吸器感染症(上気道感染症・下気道感染症)の病原菌の有無を検出する。
*上気道感染症:咽頭炎・喉頭炎・扁桃炎など
*下気道感染症:気管支炎・肺炎など
*急性喉頭炎(クループ)が疑われる場合は、窒息を誘発する危険があるため禁忌
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鼻腔・咽頭培養の手順
1 必要物品の準備
看護師は手洗いを行い、必要物品を準備する。患児と家族に検査の目的・方法を説明する。その際、検査前に飲食をしていないことを確認し、患児に声をかけてから実施する。
鼻腔・咽頭培養に必要な物品は図1のとおり。
図1 鼻腔・咽頭培養に必要な物品
①検体容器
②滅菌綿棒
③シードスワブⓇ(鼻腔用/咽頭用)
④手袋
2 粘膜表皮採取
咽頭培養 滅菌綿棒の場合
介助者は患児を膝に乗せ、利き手で前頭部を固定する(図2)。反対側の手を患児の胸腹部に回し、両腕を固定する。
図2 介助者は患児を膝に乗せて固定する
実施者は患児の顔を固定し、利き手で滅菌綿棒を挿入(図3)。
咽頭粘膜をこすって、専用の容器に入れ、検査に提出する。
滅菌綿棒は清潔操作で取り扱い、先端が周囲に触れないようにする。
図3 患児の顔を固定し滅菌綿棒を挿入する
鼻腔培養 シードスワブⓇの場合
❶看護師は手袋を装着し、シードスワブⓇの包装を開封(図4)。
図4 シードスワブⓇの包装を開封する
❷培地チューブのキャップをはずして破棄する(図5)。
図5 培地チューブのキャップをはずす
❸キャップ付き綿棒を清潔操作で取り出す(図6)。
図6 キャップ付き綿棒を清潔操作で取り出す
❹キャップ付き綿棒を鼻腔に挿入する(図7)。粘膜をこすって、培地チューブに収納(図8)。
図7 キャップ付き綿棒を鼻腔に挿入する
図8 培地チューブに収納
❺キャップをしっかり閉め、検査室に提出する。
EVIDENCE
■綿棒が周囲に触れないよう注意。検査結果に影響が出る。
■抗生薬を服用していると、検査結果が陰性となるので注意。
鼻腔・咽頭培養の種類については表1のとおり。
表1 鼻腔・咽頭培養の検体と主な病原体
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検体採取 Q&A
採血に留置針、翼状針、キャピラリーチューブを用いる理由は?
留置針・翼状針・キャピラリーチューブは、それぞれ以下のような場合に選択する。
留置針:点滴での補液が必要なときに、小児が最小限の痛みですむよう、採血後に点滴ルートに接続するために用いる。
翼状針:体動が予想される乳幼児に用いる。
キャピラリーチューブ:乳児の足底、耳朶、指から穿刺し、少量の血液ですむため、貧血の予防になる。
検体の保存方法は?
検体採取後は、決められた方法で速やかに検査室に提出する。
夜間など提出が困難な場合は、4℃で保存する。
低温では生育が阻害される病原菌(カンピロバクター、腸炎ビブリオなど)は、室温で保存する。
病原菌ごとの検体の採取方法は?
インフルエンザウイルスやRSウイルスは、鼻汁もしくは鼻粘膜を吸引や綿棒で採取(図9、図10)。
溶連菌、アデノウイルスは、咽頭などから綿棒で採取する(図11)。
アデノウイルス、ロタウイルスは、便を採取する。
マイコプラズマは採血を行い、血液より検出する。
図9 鼻腔粘膜採取
図10 鼻腔吸引
図11 病原菌と検体採取
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ