小児の安全に関する特徴

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は小児の安全に関する特徴について解説します。

 

 

山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長

 

 

小児の安全に関する特徴

  • 月齢・年齢が小さいほど、頭部の割合が大きく、身体のバランスを崩しやすい。
  • 成長・発達の過程や成育環境により、危険や事故の要因が異なる。
  • 日常と異なる環境(入院など)では、予測のつかない特異な行動を起こす場合がある。
  • 日々、成長・発達するため、昨日までできなかったことができるようになり、危険行動の回避が予測困難である。
  • 社会性が未熟であるため、事故や事件に巻き込まれやすい。

 

 

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安全にかかわる要素

小児の安全にかかわる要素は図1のように分類される。

 

図1 安全にかかわる要素

安全にかかわる要素

 

 

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小児に起こりやすい事故

成長・発達の過程で起こりやすい事故を知り、予防する

小児の1歳から14歳までの死亡原因(表1)では「不慮の事故」が多く、ほんのちょっとした不注意や観察不足が思わぬ結果を招くことがある。

 

小児の安全を守るためには、成長・発達・性別・環境ごとに起きやすい事故を知り、安全確保のための環境整備が重要である。

 

表1 小児に多い不慮の死亡事故

小児に多い不慮の死亡事故

厚生労働省:令和2年度人口動態調査より

 

生後4か月まで(首がすわるまで)

行動:1日の大半を眠って過ごす。乳を飲んだり、自分の指をなめたり、おしゃぶりをしたりと口と手の動きが中心である。
対策:適切な育児環境を整える。養育者の経験不足や不注意により、事故が発生しやすいので注意する。

 

事故の種類

●添い寝や吐乳による窒息
●ふかふかの布団にうつ伏寝で窒息
●入浴時の転落
●養育者が抱いたまま転倒
●熱いミルクによる熱傷
●乗車中の事故

 

生後5~11か月

行動:寝返り、ハイハイ、つかまり立ち、歩行が始まり、行動範囲が日々変化する。視覚、手、全身を使って行動し、反応する。
対策:小児の身辺全体に注意を払い、危険なものを周囲に置かない。

 

事故の種類

●ベッドやソファーからの転落
●誤飲:タバコ・ボタン形電池など
誤嚥:ピーナッツ、豆類など
●浴槽への転落
●ベビーカーや椅子からの転落
●歩行時の転倒

 

1~3歳

行動:1人歩きができるようになり、新しい手段や繰り返しの行動様式により、物事を認知。いたずらや挑戦を好み、活発に活動する。
対策:日頃から模範となるような行動様式をみせ、小児から注意をそらさず見守る。

 

事故の種類

●飛び出しや歩行中の交通事故
●プールや川、海での事故
●滑り台、ブランコからの転落
●ライターや湯沸しポットによる熱傷
●室内での転倒、机や椅子の角による切り傷、打撲

 

4~5歳

行動:友達とごっこ遊びやおしゃべりをし、言葉の使用が本格化する。全身の運動調整力が急激に伸びる。興味のおもむくままに行動する。
対策:キャラクターなどを活用し、疑似体験を通して、安全に対する適応能力を育てる。

 

事故の種類

●自転車の事故
●用水路やため池への転落
●ライターなど、火遊びによる熱傷
●乗り物など、ドアにはさまれる

 

6~12歳

行動:危険を回避する知識・能力は備わっているが、仲間の影響を受けやすく、危険な遊びにエスカレートしやすい。好奇心が旺盛になり、危険な行動を好む。
対策:生命の大切さ、自分や友人を尊重することなど、人間としての基本的な道徳心を養う。

 

事故の種類

●登下校時の事故・交通事故
●友達とのけんか、いじめ
●けが、転倒・転落

 

13~14歳

行動:二次性徴に伴い、急激な身体的変化と心のアンバランスが生じ、心理的に不安定となりやすく、衝動的な事故や自傷行為に走る場合がある。
対策:人的・物理的環境を整え、心の安定を保つよう、養育者以外の専門家など信頼できる支援者の協力を求める。

 

事故の種類

●打撲・骨折
●自傷行為・自殺
●交通事故
●傷害事件など

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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