身体拘束を行っている患者の褥瘡予防のためのポジショニング

【看護roo! 褥瘡セミナーのご案内】看護師のリアルなお悩みにQ&Aで答えるよ

ドレッシング材と外用薬の使い分けや、DESIGN-R®2020をわかりやすく解説!

 

『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は身体拘束を行っている患者の褥瘡予防のためのポジショニングを解説します。

 

江村真弓
綜合病院山口赤十字病院/皮膚・排泄ケア認定看護師

 

 

身体拘束を行っている患者の褥瘡予防のためのポジショニング

 

ポジショニングのポイント

  • 身体拘束中の患者は、体動が激しくピローの挿入が難しい場合が多いため、必ず体圧分散用具を使用する。
  • 圧迫・ずれを防ぐためのシーツを使用し、定期的に“圧抜き”を行う。
  • 抑制具を使用している部位に部分圧迫や圧迫・ずれが加わり、創傷形成しやすい状況であるため、医療関連機器圧迫創傷の予防につとめる。

 

身体拘束の基本

身体拘束は原則として違法行為であり、行ってはならないことではあるが、治療を優先するために、あるいは安全確保のために、やむを得ず行う場合もある。

 

 

目次に戻る

身体拘束の必然性と褥瘡発生リスク

身体拘束に伴い、患者は自力での体位変換ができなくなるため、部分圧迫の増大、同一体位の持続による静止摩擦力の増大に伴うずれが大きくなり褥瘡を発生しやすくなる(図1)。

 

図1 自力体位変換が不可能になることによる部分圧迫の増大

自力体位変換が不可能になることによる部分圧迫の増大

 

特に、体幹を抑制することは上半身を固定することになり、患者は仙骨部を起点に起き上がり動作を繰り返すようになる。そのため、背部~仙骨部にかけて圧迫とずれが加わり、容易に褥瘡を発生してしまう(図2)。

 

図2 体幹抑制に伴うずれ

体幹抑制に伴うずれ

 

 

目次に戻る

体圧分散用具・マットレスの選択

褥瘡対策のためには十分な圧分散対策が必要となるが、身体拘束が必要な患者の中には、もともと活動性が高く睡眠・覚醒リズムを規則的にするために車椅子に移乗するなどの場合もある。

 

起き上がり動作を繰り返すことや活動性が低下した状態に適した高機能タイプの体圧分散用具を準備することで、部分圧迫・ずれの増大を予防できる。

 

褥瘡予防のためにはこうした圧分散効果が高く柔らかい体圧分散用具を使用したいが、マットレスの厚みによって転倒転落の危険性も出てくる。

 

転倒転落防止と、車椅子に移乗するためのベッドサイド座位の安定性を確保するために、ハイブリッドタイプの体圧分散用具を導入することも多くある。そして、患者の活動性を考慮したマットレスの選択が重要となる(図3)。

 

図3 起き上がり動作を繰り返すことや活動性が低下した状態に適した体圧分散用具

体圧分散用具

 

 

目次に戻る

ポジショニングの進め方

身体抑制中の患者は、体動が激しくピローの挿入が難しい場合が多い。ピローを挿入しても、患者の体動により効果的な体位保持ができない。そのため、ピローを使用するのではなく、必ず体圧分散用具を使用する。

 

摩擦やずれを防ぐためのシーツを使用する(図4)。

 

図4 摩擦・ずれの防止

摩擦・ずれの防止

 

部分圧迫やずれを解除するために定期的に圧抜きを行う(図5)。

 

図5 部分圧迫・ずれの解除:圧抜き

部分圧迫・ずれの解除:圧抜き

 

骨突出部(特に仙骨部・踵部・円背があれば脊柱)に予防的スキンケア(フィルム材の貼付や保湿ケア)を実施することも必要である。

 

 

目次に戻る

抑制具による創傷形成の予防

四肢抑制中の患者は、起き上がり動作等の体動により抑制具を使用している部位に部分圧迫や摩擦・ずれが加わり、創傷形成しやすい状況である。(図6)。

 

図6 創傷が生じやすくなる状況

創傷が生じやすくなる状況

 

抑制具使用部位の皮膚の観察と予防的スキンケアを実施することが必要である(図7)。

 

図7 創傷形成の予防

創傷形成の予防

 

 

目次に戻る

文献

1)田中マキ子,栁井幸恵 編:症状・状況別ポジショニングガイド.中山書店,東京,2012:71.

2)祖父江正代,近藤まゆみ 編:がん患者の褥瘡ケア.日本看護協会出版会,東京,2009.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』 編著/田中マキ子/2014年8月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ