座位ポジショニング時のアンカーとバック
『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は車椅子のアンカーとバック介入について解説します。
田中マキ子
山口県立大学看護栄養学部教授
座位ポジショニング時のアンカーとバック
座位では、車椅子でのポジショニングが主となりますが、「人の体格に車椅子のサイズが合っていないのでは?」と思う場面に遭遇することが多いのではないでしょうか。
車椅子は、1964年に開催された東京オリンピックの際に、海外からのお客様対応として日本に多量に輸入されたと言われます。このとき輸入された車椅子の規格は、外国人対応のために身長165~175cmが標準とされました。
この車椅子が、後になって臨床現場に普及することになりますが、日本人の体格とは異なるため、現在のように、小柄な高齢者が車椅子に座らされているような場面がよく見かけられます。
車椅子はもともとパンテーラという人が1945年レース中の事故で脊髄損傷になり、軽い力で動きまわれて長い時間座っていられることをテーマに作られました1)。
その後、時代の変化とともに、車椅子作りは大きく飛躍していきます。現在では、車椅子のあらゆる個所に調整を施すことが可能となり、オーダーメードな車椅子を使用することで、利用者のQOLを維持・向上させることが可能となりました。
下に示すのは、車椅子調整の際に測定されるべき個所(図1)と測定方法(図2)です。この他、駆動を意識しなくてはならない場合には、タイヤの位置においても調整を行います。
患者の座位姿勢で、座面クッション(アンカー)に対する認識は十分にもたれるようになったのですが、背当て(バック)サポートへの認識は十分に普及していないように思われます。
患者のさまざまなデータから、バックへのサポートが重要なことに気づかれることも多いのではないでしょうか。
昨今では調整可能な車椅子もかなり安価に入手できるようになりました。治療等で一時的に使用する場合には、個人仕様に調整してしまうと弊害が多く出ます。
そこで、アンカーとバックへの調整を行うことで、骨盤後傾姿勢の予防・改善等に貢献できます(図3)。
患者に適合する車椅子が準備できることが優先されるかもしれませんが、それができない場合には、アンカーとバックへの介入から、より適正な車椅子の仕様を目指していきましょう。
引用・参考文献
1)光野有次,吉川和徳:シーティング入門-座位姿勢評価から車椅子適合調整まで-.中央法規出版,東京,2007:73.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』 編著/田中マキ子/2014年8月刊行/ 照林社