心室頻拍(VT)が出現。すぐにドクターコール? しばらく様子をみる?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心室頻拍(VT)が出現した際、すぐにドクターコールすべきかについて解説します。
杉本尚子
元・東京都立広尾病院 救命救急センター・ICU/救急看護認定看護師
心室頻拍(VT)が出現。すぐにドクターコール?しばらく様子をみる?
循環動態の変化や自覚症状がある場合、基礎心疾患がある場合、30秒以上持続する場合、QRSの形が一定でない場合は、すぐにドクターコールします。
心室頻拍(VT)とは
まず、心室頻拍(VT)の特徴を振り返ってみましょう(図1)。VTは、心室の異所性興奮の旋回(リエントリー)や、心筋細胞の自動能亢進によって発生した異常な刺激によって引き起こされます。
この異常な刺激は非常に短い周期で発生するため、心拍数は120~250回/分です。VTは、QRSの形と持続時間によって、以下のように分類されます。
①QRSの形による分類:単形性(QRSの形が単一のもの)と、多形性(QRSの形が刻々と変化するもの)
②持続時間による分類:持続性(30秒以上持続するもの)と、非持続性(30秒以内に停止するもの)
VTによって心ポンプ機能が低下すると、循環不全に陥る可能性があります。頻拍の程度や持続時間によって症状はさまざま(動悸、胸痛、胸部不快感、血圧低下、冷汗、めまい、意識消失など)なので、まずは患者の状態を自分の目で観察することが重要です。
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医師へ伝えるタイミング(表1)
1 様子をみても大丈夫な場合
循環動態の変化や自覚症状がない、あるいは軽度で、基礎心疾患のない単形性非持続性VT(6連発程度で、頻拍中の心拍数が150回/分を超えない程度)であれば、ほとんどの場合、治療の必要はありません。
そのため、VTが出現したときの心電図波形を記録し、再出現がないか継続的にモニタリングしながら、医師来棟時に報告すればよいでしょう。
2 すぐドクターコールすべき場面
循環動態の変化や自覚症状がある場合、基礎心疾患がある場合、持続性VT、多形性VTの場合には、すぐにドクターコールが必要です。
持続性VTは突然死の主因です。心機能が低下している患者の場合、重篤化しやすいので注意が必要です。
多形性VTは、心室細動に移行する危険性があります。QT延長症候群・心筋虚血・電解質異常・薬剤などによるQT延長に伴って生じる場合と、心筋虚血や心不全など心機能低下によって起こる場合があります。
また、発見時、すでに無脈性VT(脈なしVT)の場合もあります。この場合は、すぐに心肺蘇生を開始するとともに、院内の緊急コールシステムに準じて対応してください。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社