うまく伝わる「報告」「連絡」

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はうまく伝わる急変のドクターコールについて解説します。

 

道又元裕
Critical Care Research Institute(CCRI)代表

 

 

急変対応は、1人ではできません。必ずスタッフや医師などと協働し、チームで対応することが求められます。

 

そのため、リーダー看護師などへの応援要請だけでなく、ドクターコールや医師への報告を避けてとおることはできません。

 

報告のカギは「アセスメント」

ドクターコールの方法として代表的なものに、I‐SBAR‐Cアイエスバーシー)[SBARエスバー]があります。これは、注意喚起・迅速な対応が必要な患者状況について、重要な情報を伝達するテクニックです(表1)。

 

表1 I‐SBAR‐Cに基づくドクターコールのポイント

I‐SBAR‐Cに基づくドクターコールのポイント

 

ここで注意してほしいのは「I‐SBAR‐Cはあくまでテクニックにすぎない」ということです。いくらテクニックに習熟しても、状況を正しくアセスメントして判断できていなければ、よりよい報告にはならないのです。

 

緊急度が判断できれば「ドクターコールのタイミング」は、ある程度、判断できます。急変と判断したなら即座に、そうでなければもう少し詳しくアセスメントしてから報告することになるでしょう。

 

最も悩むのは「何かおかしい、急変の前ぶれかもしれないが、違うかもしれない…」というケースだと思います。絶対に患者の様子はおかしいのだが、バイタルサインチェックやフィジカルアセスメントを行っても、急変の前ぶれと判断しきれない場面です。このような場合には、いったん、リーダー看護師や他のスタッフを呼びましょう。多くの目で評価したほうが、アセスメントの精度は上がります。

 

 

目次に戻る

普段の報告や申し送りは、貴重なトレーニングの機会

「必要なことだけを簡潔明瞭に伝える」と書くのは簡単ですが、実際に行うとなると、なかなかどうして、簡単ではありません。そのためには、普段からのトレーニングが有用です。

 

トレーニングといっても、特別なことをする必要はありません。申し送り引き継ぎリーダー看護師への報告など、日ごろ行っている情報伝達時に、意識的に取り入れていけばいいだけです。

 

最初は難しいかもしれませんが、何度も繰り返し行うことで、知らぬ間に身に着いていくことでしょう。

 

 

 

目次に戻る

それでもうまくいかない場合は…

「きちんとアセスメントして、状況を簡潔に説明し、診察してほしいことを伝えたにもかかわらず、医師が来てくれない…」こんな場面も、ありますね。

 

まず考えられるのは「診察してください」と言葉で伝えていないケースです。「危険な状況・患者背景を伝えたんだから、診察を求めていることが医師に伝わるはず」と考えてはいけません。誤解が生じないよう、しっかり言葉に出して伝えましょう。

 

次に考えられるのは「医師がうまく聞き取れなかった」など、コミュニケーションエラーの可能性です。そのため、思ったような返事がもらえない場合は「診察してください」ともう一度念押ししてみましょう(これを2チャレンジルールといいます)。

 

それでもなお、医師が診察に来てくれない場合には、上級医に連絡するしかありません。

 

ドクターコールは「患者を守るために行うものだ」という認識を、忘れてはいけません。

 

ワンポイント

●ドクターコールが「うまく伝わらない」要因の1つに、「報告の種類(緊急/報告/相談)が明確でないこと」が挙げられます。

 

●ドクターコールするときには、以下のように、まず、報告の種類をはっきりさせましょう。そうすると、意図が伝わりやすくなります。
・緊急です(来てください)
・報告です(指示をください)
・相談です(教えてください)

 

 

目次に戻る


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ