「体位調整後は急変に注意」というけれど、何に、どう注意すればいいの?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は体位調整後の急変に関する注意点について解説します。
瀬谷陽子
東京警察病院 集中治療センター 看護主任/集中ケア認定看護師
「体位調整後は急変に注意」というけれど、何に、どう注意すればいいの?
特に「呼吸・循環の異常」の有無に注意が必要です。体位調整によって、血液分布の変動や、気道分泌物・胸水の移動が生じるため、呼吸・循環に異常が生じやすいためです。
体位調整の目的は、病態の改善、褥瘡や肺合併症の予防、早期回復の援助、ADL維持など多岐にわたります。一方で、体位調整後にライントラブル、ストレス、痛み増強などにより呼吸・循環動態の変動をきたし、状態によっては急変へとつながる可能性があります。
急変を防ぐためには、体位調整前・中・後の観察とアセスメントが不可欠です(表1)。
重力の影響を考慮する
気道分泌物・胸水は、重力によって、常に下側に貯留します。体位調整後、酸素化悪化や窒息が生じることがあるのは、これらの貯留物が下側に移動することが原因です。体位調整前には呼吸音を聴取し、痰が貯留していたら、除去した後に体位調整を行います。
ドレナージ体位をとった場合、20~30分の間にドレナージが行われるため、排痰のタイミングを逃さないように観察を続けます。
病的肺を下にした体位をとると、SpO2低下が生じうるため、事前に患者の病態を把握することが大切です。ベッドサイドを離れるときは、患者の状態が安定しているか確認します。
脱水のある患者の場合、体位調整後、急激な血圧低下が生じることがあります。体位調整によって循環血液分布が変動し、静脈還流が減少するためです。血圧が回復しない場合は、仰臥位に戻します。
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体位調整が呼吸・循環動態の変動につながると予測される患者の場合、負担の少ない体位(軽い側臥位など)からはじめ、身体への影響を評価しながら少しずつ実施します。また、褥瘡予防が目的であれば、体圧分散マットレスや圧抜き介助用手袋(ハーティグローブ®など)などをうまく活用するとよいでしょう。
引用・参考文献
1)道又元裕 編:写真でみるICU患者の体位管理マニュアル.メディカ出版,大阪,2009.
2)西村一美:Scene2 体位変換後.月刊ナーシング 2013;33(6):24‐25.
3)道又元裕 編:ICUケアメソッド.学研メディカル秀潤社,東京,2014.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社