気管挿管時の喉頭展開。なぜ、肩枕を入れないの?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は気管挿管時の肩枕を入れない理由について解説します。

 

生田正美
神奈川県立足柄上病院 看護局/救急看護認定看護師

 

気管挿管時の喉頭展開。
なぜ、肩枕を入れないの?

 

肩枕を入れた体位では、気管挿管を行う医師が、目印となる声門を直視しにくくなるためです。

 

 

肩に枕を入れて、頭部を後屈すると、気道が確保されます(頭部後屈あご先挙上法)。その習慣から、かつては肩枕を入れて喉頭展開を試み、気管挿管を行っていました。

 

しかし、気道確保に適する体位と、気管挿管時の喉頭展開に適する体位は違います。

 

肩枕を入れた体位では、口腔軸・咽頭軸・喉頭軸の3つのラインの角度が大きくなるため、医師が患者の口腔から声門を直視しにくいのです。そのため現在では、声門を直視しやすいスニッフィングポジションで喉頭展開を行うようになりました(図1)。

 

図1 肩枕とスニッフィングポジションの違い

肩枕とスニッフィングポジションの違い

 

スニッフィングポジションとは

スニッフィングとは「においを嗅ぐ」という意味です。を少し上に向け、においを嗅ぐような姿に見えるため、このように呼ばれています。

 

具体的には、患者の後頭部に厚さ7~9cmのやわらかめの枕を置いて、頭部を挙上し、さらに下位頸椎を前屈させます。すると、口腔軸・咽頭軸・喉頭軸の3つのラインの角度が小さくなり、医師が患者の口腔側から声門を直視しやすくなるのです。

 

スニッフィングポジションをとるためのポイントは、以下の2点です。

 

①やわらかめの枕を使う:枕が硬いと、頸部とともに頭部も前屈姿勢となりやすく、ポジショニングが難しい。

②高さを調整できるものを使う:患者の体格や状態に合わせて、高さをすみやかに調整できるようにする(当院では、バスタオルを数枚重ねたものを使用している)。

 

***

 

患者の体位を整えることは、安全で迅速な看護に直結します。正しい体位がとれるよう、援助が必要です。

 

 

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引用・参考文献

1)伊藤壮平:気道を確実に保つ!.エマージェンシーケア 2014;27(7):40‐50.

2)倉敷達之:気管挿管時.オペナーシング 2014;29(6):23‐31.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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