「下顎挙上法」って、どんなときに使えばいいの?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は下顎挙上法をどんなときに使えばいいかについて解説します。
橋本多門
杏林大学医学部付属病院 高度救命救急センター/救急看護認定看護師
「下顎挙上法」って、どんなときに使えばいいの?
外傷による頸椎・頸髄損傷の存在を否定できないものの、気道確保が必要な場合に使います。
下顎挙上法は、徒手的気道確保の1方法です(図1)
一般的に行われる頭部後屈あご先挙上法と異なり、頸椎の正中中間位を保ったまま気道を確保でき、頸椎の過伸展を回避できるため、頸椎・頸髄損傷を予防できるのがメリットです。
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脊髄損傷を疑う場面
脊髄損傷の原因で、最も多いものは転落や交通事故です。しかし、高齢者は骨強度の低下・骨粗鬆症を合併していることが多いため、転倒でも容易に脊髄損傷をきたします。
転倒や転落などの目撃情報がない場合には、周囲の状況や患者の外観から推察します。
・周囲の状況からの推察:床頭台などが散乱している、階段の下で倒れている、重い物が付近に落ちている など
・外観からの推察:頭部や顔面に出血や打撲痕がある、患者の眼鏡が破損している など
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最優先は気道確保
下顎挙上法は、頭部後屈あご先挙上法と比べ、手技が難しいとされています。下顎挙上法での気道確保が困難な場合には、すみやかに頭部後屈あご先挙上法へ切り替えましょう。
緊急時には「気道を確保する」ことが最優先であることを、忘れてはいけません。
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引用・参考文献
1)益子邦洋,松本尚 監修:写真でわかる外傷基本手技.インターメディカ,東京,2009:8-12.
2)日本蘇生協議会 監修:JRC蘇生ガイドライン2015.医学書院,東京,2016:24-25.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社