治療方針が決まっていない患者が急変。どう対応すればいい?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は治療方針が決まっていない患者の急変対応について解説します。
普天間 誠
那覇市立病院 集中治療室 主任看護師/集中ケア認定看護師
治療方針が決まっていない患者が急変。どう対応すればいい?
突然の呼吸停止や心停止などでは、救命のために最善を尽くします。 しかし、がん末期患者などの急変では、その患者にとって最善と考えられる治療を選択します。
急変時には、患者の背景にかかわりなく、救命のために最善の治療を行う必要があります。
しかし、適切な治療を尽くしても救命の見込みがないと思われるケースがあります。例えば、がん末期の患者や、不治の進行性疾患患者の急変です。さらに、このようなケースで、患者が希望する治療が事前に確認されず、治療方針が決まっていない場合もあります。
終末期の患者では、事前に意思確認ができていれば、その意思に沿った治療を選択します。また、患者の意思が不明な場合は、患者にとって最善と考えられる治療を選択し、優先することが必要です(表1)。
そのなかで、心肺蘇生を行わないことを事前に指示するDNAR(蘇生適応除外)があります(詳しくは「DNARの正しい知識」) 。
DNARは、患者の意思を尊重する権利に基づいて行われます。そのため、患者本人による決定を基本とします。このとき注意したいことは、DNARの決定には「心肺蘇生を実施しても、患者にとって無益であるという医学的な判断も必要となる」ということです。
つまり、DNARとは、心肺蘇生を実施しないということで、それ以外の処置もすべて実施しないということではないのです。医師をはじめとする医療者が、適切な情報提供と説明を行い、それに基づいて患者がどのような治療を希望するのか十分に話し合うことが必要です。
また、患者にとって最善の治療方針をとるためには、患者の意思決定能力が低下あるいは喪失する前に、患者の意思を早期に確認することが重要となります。決して「急変時に人工呼吸器につながれ、患者や家族の意思とは違う結果になってしまった」とならないようにしなければなりません。
そのため、医師や看護師などからなる医療チームで、日常的に終末期を含めた急変時の対応について議論・検討を深めることが必要です。
引用・参考文献
1)日本救急医学会:救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン).[2018.7.2アクセス].
2)厚生労働省:終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン.[2018.7.2アクセス].
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社