胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)|角化症⑤
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)について解説します。
高橋健造
琉球大学大学院医学研究科皮膚病態制御学講座
Minimum Essentials
1持続的な物理刺激により、反応性に過角化を呈した状態。胼胝(べんち)とはいわゆる“たこ”のことを、鶏眼(けいがん)とはいわゆる“うおのめ”のことを指す。
2胼胝は角質が平坦に一様に肥厚し、鶏眼は皮膚の内側に向かって芯のように角質が増殖した状態である。
3鶏眼は、爪切りやメスで円錐型の角質を定期的に削り取る必要がある。胼胝は患者の希望で削ることがある。
4物理的な刺激を回避できない限り持続し、加齢とともに悪化する。
胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)とは
定義・概念
胼胝とは一般にいう“たこ”のことであり、鶏眼とは“うおのめ”のことである。どちらも皮下脂肪が少ない部分の皮膚に加えられる機械的な外力により、反応性に角質の増殖をきたし皮膚がかたくなった状態である。下床に骨のあるところに生じやすい。加齢の一症状でもある。
原因・病態
胼胝は指、手掌、足首などに、ペン、ラケット、バット、ゴルフクラブなどによる慢性的な刺激や正座による負荷によって生じる(図1)。ペンだこ、クラブだこ、座りだこといわれる。
鶏眼は足の変形や障害、神経麻痺、自分の足にフィットしない窮屈な靴や加重の偏った歩き方が原因となる。
目次に戻る
診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
扁平に隆起した角質病変である。幼児や小児にはみられないが、体重や握力の強くなった学童期以降には、誰しも趣味やスポーツ、日常的な嗜好を反映した何らかの“たこ”がみられる。胼胝は痛みを伴わず、日常生活での支障はない。
鶏眼は足の裏、足の指の側面などにでき、内側に向かって陥入する円錐形の角質の塊により疼痛をきたす。しばしば直下に皮下出血や二次感染を併発する。鶏眼は年齢的に胼胝よりも遅れて生じ、窮屈で底のかたい靴を頻繁に履き出す頃より顕著になる(図2)。
足底に生じた尋常性疣贅(ゆうぜい)は皮下へと成長するため、鶏眼との鑑別が難しいことがある。鶏眼は必ず加重部位に生じるが、疣贅は足底のどこにでも生じる。
目次に戻る
治療ならびに看護の役割
治療
いずれも痛みを伴わない限り治療の必要はない。胼胝はめったに治療の対象とはならない。
歩行時に疼痛をきたす鶏眼が治療の対象であり、かたくなった角質を物理的に削り取ることが必須である。ニッパー型の爪切りやメス、摂子で円錐型の角質を削り取る。
通常再発するので、定期的に切除する必要がある。スピール膏TM Mを2~3日貼付し角質が浸軟したあとに行っても良いが、境界が不明瞭となりがちである。鶏眼治療用の電池式の簡易グラインダーは、患者自身が安全に使えて便利である。
看護の役割
治療における看護
鶏眼の原因となるような、ヒールが高く足先の窮屈なパンプスやサンダルは避けるように指導する。つま先のみに加重がかからないよう、足底全体で体重を受ける歩き方を指導する。減量も1つの有効な手段である。
糖尿病の患者に生じた鶏眼はしばしば容易に二次的な細菌感染を併発し、時に下肢の切断に至る重大な結果をもたらしうるので、十分に注意する必要がある。
目次に戻る
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂