疥癬|動物寄生性疾患③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は疥癬について解説します。
和田康夫
赤穂市民病院皮膚科
Minimum Essentials
1疥癬は、ヒトヒゼンダニが皮膚に寄生して生じる感染性皮膚疾患である。
2症状は夜間の激しいかゆみである。体幹、四肢には、搔破痕が多数生じる。手には疥癬トンネル、男性陰部には結節を生じる。
3治療は駆虫薬の投与である。内服薬としてイベルメクチン錠、外用剤としてフェノトリンローションがある。
4内服・外用剤ともに1週間間隔で2回使用する。おおよそ1ヵ月ほどで治癒する。
疥癬とは
定義・概念
ヒトヒゼンダニが皮膚角質層の中に寄生することで発症する。症状としては夜間の激しいかゆみで、全身に搔破痕が多数生じる。
原因・病態
原因はヒトヒゼンダニで、人から人へと感染する。
軽症の通常疥癬と重症の角化型疥癬(ノルウェー疥癬)の2つに大別される。角化型疥癬は感染力が極めて強いため、集団発生に注意が必要である。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
特徴的なのは疥癬トンネルである(図1)。
トンネルに沿って手や足に長さ5mm前後の線状皮疹が生じ、疥癬トンネルの先端にヒゼンダニが住む。男性の場合、陰部に結節(しこり)が好発する。
角化型疥癬では、垢がこびりついたような外観を呈する(図2)。
検査
ダーモスコピーで疥癬トンネルを検査すると、疥癬トンネルの先端に、虫体が微細な黒点として認められる。
角化型疥癬の場合、角化部位の落屑を採取し顕微鏡検査を行うと虫体を多数認める。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
スミスリン®ローション(フェノトリン)を首から下の全身に塗布し、1週間後に同様に塗布する。塗り残しがあると再発の恐れがあるので、すみずみまで塗布する。
イベルメクチン錠を空腹時に内服し、1週間後にもう一度内服する。
合併症とその治療法
合併症として、疥癬後瘙痒症や小児肢端膿疱症がある。
これらにはステロイド外用剤が有効であるが、ヒゼンダニがいないかどうかの見極めが必要となる。
治療経過・期間の見通しと予後
通常疥癬の場合、おおよそ1ヵ月で軽快する。
角化型疥癬の場合は、それ以上にかかる可能性がある。免疫不全状態など基礎疾患がなければ、通常、予後は良好である。
看護の役割
治療における看護
角化型疥癬患者では、感染拡大に注意し、手袋、ガウンを着用しケアにあたる。落屑が足に落ちるとそこから感染するため、入室時には長靴に履き替える。
通常疥癬の場合には、ガウンテクニックまでは不要であるが、患者と直接触れるときは手袋を着用する。
治療としてスミスリン®を塗布する。首から下の全身に塗布する必要があり、背中など自分では塗りにくい場所は塗り残しのないように注意する。
フォローアップ
2回の治療をすると、2週間程度で虫体は死滅する。しかし、虫体がいなくなってもかゆみや湿疹病変が残ることがある。
また、まれに2回の治療後数ヵ月経って再発する場合もあるため、最低3ヵ月は経過をフォローする。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂