虱症|動物寄生性疾患④
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は虱(シラミ)症について解説します。
和田康夫
赤穂市民病院皮膚科
Minimum Essentials
1虱症は、吸血性昆虫であるシラミがヒトに寄生する感染性皮膚疾患である。
2症状はかゆみである。アタマジラミ症では頭に、ケジラミ症では陰部にかゆみが生じる。
3治療は、駆虫薬スミスリン®である。パウダーとシャンプーがあり、いずれを用いても良い。
4治療をすれば2~3週間で治癒する。薬剤抵抗性の場合、専用の梳(す)き櫛での丹念な治療が必要となる。
虱症とは
定義・概念
シラミがヒトに寄生して生じる。頭髪に寄生するアタマジラミ、陰毛・腋毛に寄生するケジラミの2種類に大別される。
原因・病態
原因は、吸血性昆虫のシラミである。頭や陰部など長い毛のあるところを住処とし、吸血し、毛に卵を産む。人から人へと感染する。
なお、コロモジラミという衣類につくシラミもあるが、現在ではホームレスを除き日本ではまれである。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
臨床症状は、かゆみである。臨床所見として、アタマジラミでは頭髪に虫卵を認める(図1)。
ケジラミでは陰毛に虫卵、陰毛基部に虫体が張り付いているのを認める(図2)。
検査
アタマジラミ、ケジラミともに毛についた虫卵を探す。虫卵は、引っ張っても移動しない(移動する場合、フケの可能性が高い)。
ケジラミでは虫体を探しても良いが、アタマジラミの虫体はすばしっこく、見つけることは難しい。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
フェノトリン(スミスリン®パウダーあるいはスミスリン®シャンプー)を使用する。
虫卵には効きが悪いため、2~3日おきに使用する。
合併症とその治療法
合併症は、搔破痕に伴う二次感染である。もし伝染性膿痂疹を併発すれば、抗菌薬を併用する。
治療経過・期間の見通しと予後
おおよそ2週間で治癒し、予後は良好である。近年、フェノトリン耐性のアタマジラミ症が問題となっている。フェノトリン耐性の場合、投薬しても無効のため、梳き櫛を使用する。
看護の役割
治療における看護
アタマジラミは幼小児に好発する。不潔が原因で生じるわけではないことを患児に説明する。
フェノトリン耐性の場合、梳き櫛で丁寧に虫卵を梳いていく。誰でもなりうるため、いじめの対象にならないよう配慮する。
フォローアップ
治療後もなお虫体が見つかるようなら再診を勧める。
抜け殻は治療後も残るため、治っていないと判断を誤らないようにする。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂