伝染性軟属腫[みずいぼ]|ウイルス感染症⑥

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は伝染性軟属腫[みずいぼ]について解説します。

瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授

 

 

Minimum Essentials

1伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症である。いわゆる「みずいぼ」。

2幼小児の体幹、臀部、外陰部に多発する中心がへこんだ丘疹で、大きさは 5 mm までである。圧迫すると白色の粥状物の排出をみる。

3摘除が簡単で確実な治療法である。

4時にいぼがかゆくなり、自然消退することもある。

5アトピー性皮膚炎患児に好発し、併せて湿疹の治療もする。

 

伝染性軟属腫[みずいぼ]とは

定義・概念

伝染性軟属腫ウイルス感染による、角化細胞の腫瘍性増殖である.毛包の細胞に感染すると考えられており、毛のない手掌・足底にはできない。

 

原因・病態

感染経路はヒトからヒトへの直接的な接触がもっとも多く、保育園、幼稚園で集団発症することがある。また、プールでのタオルやビート板などを介した間接的な接触でも感染する。

 

アトピー性皮膚炎患児で好発するが、湿疹部や搔き傷からウイルスが侵入するためと考えられる。性感染症として発症する場合は、陰部に出現する。後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome:AIDS)などの免疫不全患者では顔面に多発する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

表面がつるつるした、白色あるいは真珠様の色調の小さな丘疹(直径5mmまで)で、中央が少しへこんでいる(図1)。

 

図1 伝染性軟属腫[みずいぼ]

 

いぼ自体にはかゆみも痛みもない。体幹、臀部、外陰部に好発する。丘疹を周囲から圧迫すると中心部分のへこみから白色の粥状物(軟属腫小体)が排出される。

 

好発年齢は幼小児であり成人発症はまれであるが、時にアトピー性皮膚炎患者、AIDS患者にみられる。

 

検査

とくにない。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

自然消退が期待できるが、消退までの期間は 6ヵ月~2年と長い。その間に全身に広がり、他人への感染源となる可能性もある。したがって、保育園、幼稚園や学校で団体生活を送っている児童に関しては治療が必要である。

 

摘除

トラコーマ鑷子などで丘疹の基部を挟み、圧迫しつつ上方に持ち上げると、白色粥状物(軟属腫小体)が排出される。あるいは、丘疹の頂上をつまみ、引っ張って傷つけるだけでも良い。

治癒過程で、軟属腫小体が排出される。摘除した日は、抗菌薬軟膏を外用し、入浴は原則禁止する。

摘除にあたっては、痛み緩和のため、1時間前にリドカインテープ(ペンレス®)をいぼの部分に貼付しておく。

 

その他の対策

患児が摘除を怖がる場合は、自然消退を期待し経過観察する。消退する場合は、いぼ全部が赤くかゆくなることが多く、その後消失してゆく。全経過はおおよそ 2〜3ヵ月である。

 

治療の経過・期間の見通しと予後

観察をこまめに行い、個疹の数が少ない時期に治療する。アトピー性皮膚炎の児は、湿疹を搔破することにより自家感染すると考えられるので、スキンケア、湿疹の治療を適切に行う。

 

看護の役割

・個疹の数が少ない時期から摘除する。個数が多い場合は、治療回数を分ける。痛み緩和のためにリドカインテープを貼る。
・周囲の小児に感染することを考慮して、いぼの部分をガーゼなどで覆うように指導する。園や学校を休む必要はない。
・水からは感染しないので、プールに入っても良い。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介して感染することがあるので、これらを共用することは避ける。プールのあとはシャワーで肌をきれいに洗う。
・アトピー性皮膚炎の児は罹患しやすいので、スキンケア、湿疹の治療など、かゆみを止めることの重要性を認識させる。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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