授乳介助
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は授乳介助について解説します。
堀田久美
菜桜助産所助産師
授乳
1意義
母乳哺育は、免疫学的、栄養学的利点ばかりではなく、母子相互作用による愛着形成にも重要である。母親が母乳栄養を選択し、適切な授乳方法や手技を身に付けられるように援助していく。
2授乳の条件
①母乳をあげたいという思いが母親にある。
②母児ともに健康状態が良好である。
③児に哺乳意欲がある。
3授乳回数と時間
回数
新生児期は、母乳分泌量が少ないため、時間の制限をせず、頻回に授乳を行う。乳頭を吸啜(きゅうてつ)させて乳汁を促進するようにしていく。乳頭への刺激が母親のオキシトシンやプロラクチンの分泌の亢進につながり、乳汁分泌を促進できる。
時間
授乳を開始した当初は、左右の乳頭を3~5分間で行うようにする。自律授乳が行えるようになれば、児の哺乳意欲に任せる。
4授乳姿勢
授乳時の姿勢は乳頭の亀裂にも関係しているため、正しく楽な姿勢で授乳できるように援助する(図1)。
いすに座って授乳する場合は、背もたれや肘がけなどがあり、身体を支えられるものがよい。また、いすが高く、かかとが床につかない場合は足底に台を置くなどして調整する。
姿勢のポイント
・ 母親が前かがみにならない。
・ 母親の胸と児の胸が向かい合わせにならないように引き寄せる。
①縦抱き(図2)
母親の膝に児がまたがって座るようにする。児の顎が引いて浅い吸啜にならないよう、利き手で児の頸を支え、乳頭を含ませる。児を支える手首に負担がかかりやすい。
②横抱き(図3)
飲ませる乳房側の腕で、児の頸を受けるようにして支える。バスタオルなどで土台をつくり、児の口が母親の乳首の高さになるように工夫する。
③脇抱き(フットボール抱き)(図4)
大きめの乳房や帝王切開後の授乳姿勢に向いている。母親の膝のすぐ脇に膝と同じ高さにした枕などを置く。枕に児を寝かせて、頸を支える。この方法では比較的深く吸啜させることができ、児の体重を枕などのクッションが支えるため、母親にとっては楽な方法である。
④添え乳(図5)
添え乳は、母親も児も横に寝た状態で授乳ができるため、夜間の授乳や母親の腱鞘炎がひどいとき、疲労が強いときにすることが多い。
片側の乳房を出して、出した乳房側の腕は上げ乳房と児の頭の高さを同じにし、母親と児のお腹を向かい合わせにするような姿勢をとる。
しかし、母親が夜間眠い状態で添え乳をしながら気づかぬうちに寝てしまったり、力が抜けて児の上に覆いかぶさってしまった場合に、児が窒息になるリスクがあるため、十分に気をつけて行う必要がある。
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授乳介助
手順
1乳房の型にあった姿勢をとる。
2片方の手で児の頸を支え、もう一方の手で乳房を円錐状に支える。
3児の口唇に乳首を付けて、ルーティング反射を起こさせて、口を開いたときに乳輪の部分が児の口唇に触れるように、舌の下まで乳頭を深く入れる(図6)。
4児の吸啜状態をよく観察して、乳汁を嚥下(えんげ)しているかどうかをみる。口唇が乳輪部まで深くくわえており、外側に反転していることを確認する。
5乳頭から児の口をはずすときには、乳頭に負荷がかからないように、児の口角と乳房の間に指を入れてえくぼをつくり、陰圧を除去してから反対方向に引いてはずす(図7)。
6児の胃が縦になるように、後頭部を支えて縦抱きにする。
7肩のところに児の上腹部がくるように、背中を下から上に向かって軽くさする(図8)。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版