搾乳と母乳の冷蔵・冷凍保存およびその使用
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は搾乳と母乳の冷蔵・冷凍保存およびその使用について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
搾乳
目的
児の体調がすぐれず授乳できないときや、乳頭のトラブルがあるとき、また外出により直接授乳のできない場合に、乳腺内に乳汁がたまりすぎたり、痛みが生じる場合には搾乳が必要となる。搾乳をする場合には、自分の手で行うことが望ましい。なお、授乳前の搾乳には、時間のたった乳汁を捨てる、乳輪部を柔軟にするという目的がある。
必要物品
乳頭を拭く清浄綿(もしくは温めた濡れたタオル)、哺乳びん、ガーゼ。
手順
1石けんで、よく手指を洗う。
2清浄綿か温めた濡れタオルで乳頭を拭き、乳カスや汚れを除去する(図1)。清浄綿で乳頭の先がかぶれて傷つきやすくなったり、児の口唇の周囲がかさかさするようであれば、すぐに切り替え、タオルで行うようにする。
3親指と示指の指腹で、乳輪部にある乳管洞(乳輪部と肌の色の境目)を軽く圧迫するように圧をかける。ほかの指は、乳房に軽く添えるだけで十分である。
指圧のかけ方のポイント
・乳輪を軽く外側に押し開くようにする。
・児が飲むリズムを意識する。
4最初に出る乳汁は、ティッシュペーパーかタオルの上で出すようにする。
5哺乳びんを乳頭が入る程度にあてる(図2)。
6左右交互に、いろいろな角度から搾乳する。
7搾乳量の目安は30mL程度であるが、張りが強いときは、100mL程度搾ることもある(個人差がある)。
やってはいけないこと
・乳頭はデリケートなので、むやみに引っ張ったり、つねったりしない。
・乳腺に直接力をかけるなど、乳体部をもんだり、圧迫しない。
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母乳の冷蔵・冷凍保存・使用方法
1母乳の冷蔵保存・温め方法
保存方法
1前述した哺乳びんに搾乳した母乳を専用の容器で蓋(ふた)をして密閉する。
2家庭用の冷蔵庫であれば、24時間保存できる。外出先で搾乳した場合は、保冷剤やクーラーボックスを代用してもよい。
3においの強い食材(キムチ、生ものなど)が保冷されている場合には、においが乳汁につくことがあるため、母乳保冷用の専用タッパーを利用して、ラップで一度蓋をしてから、専用容器で蓋をする。
温め方法
1深めの容器に50℃程度の湯を入れ、人肌程度(37℃)になるまでつけておく。
2一度温めた母乳は必ず捨て、再冷蔵しない。
2母乳の冷凍保存・解凍方法
保存方法
1前述した哺乳びんに搾乳した母乳を、容量に合った冷凍母乳バッグに移し変えて、しっかりと密閉する。
2保存日・時間を記入してシールを貼る(図3)。
3専用の容器を用意して、日付順に取り出せるように冷凍する。
4冷凍期間は3週間とする。
解凍方法
1室温でシャーベット状になるまで自然解凍する。
2母乳バッグから、哺乳びんに乳汁を移す。
3深めの容器に50℃程度の湯を入れ、人肌程度(37℃)になるまでつけておく。
4一度温めた母乳は必ず捨て、再冷凍しない。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版